第7話 そうだよね

「お おはよう雄二」

「おはよう・・・何だか萌と一緒に学校行くの久々だな」

「う うん そうだね」


痛いところを・・・

春姫のアドバイスもあり雄二とは私の方から距離をとるようにしてたんだよね。

まぁクラスも違うから学校を別々で行くくらいだけど。

でも、何だか久々に雄二と2人きりなせいか、昨日の佐和とのやり取りのせいか、変に緊張するというか調子が狂う・・・一緒に学校に行くだけなのに。


「・・・・」

「・・・・」


数週間前位前までは、お互い昨日見たテレビの話や部活の話とか雑談しながらの楽しい時間だったのに何だか空気が重い。

こんなのついこの間までは、何でもない日常だったのにどうしてこうなっちゃったんだろう。

そんな事を考えながら歩いていると


「危ない!!」

「え?」


急に雄二に手を引かれた私は雄二に抱き付くような形で後ろに倒れこんだ。

な 何?何で私雄二に抱き着いてるの?


「何やってるんだよ萌!赤信号だろ!」


赤信号?あ・・・・そっか私。

車が往来する道路をを見て状況を理解した。

赤信号なのに横断歩道を渡ろうとしてたんだ私。


「ご ごめん。考え事してて・・・」


そう言いながら私は雄二から離れようとした。

でも、雄二は手を離さずに少し困ったような顔をして私に話しかけてきた。


「萌・・・その・・・考え事ってさ、もしかして僕と下北さんの事?」

「・・・・」

「その・・・自惚れじゃなかったらだけど・・・萌って僕の事が・・・」


・・・なんだ、そっか。雄二も気が付いてたんだ私の気持ち。

てっきり私の気持ちには気が付いてないと思ってたよ。

その上で佐和と・・・告白する前にフラれちゃったな。

はぁ・・・駄目だったよ春姫。

雄二のは甘えとかじゃなかったみたいだよ。


「・・・うん。好きだったんだ・・・雄二の事」


何だろ。さっきまでどうやって告白しようかとか散々悩んでたのにこんなに簡単に"好き"って言えちゃった。

もっと早くに告白していれば・・・


「そっか・・・。ゴメン。萌とは小さい頃からいつも一緒だったから異性として意識したことがなくって」


だよね。そうだと思ってた。

でも・・・あらためて本人から言われると辛いな。

私じゃ友達以上にはなれないってことだよね。

佐和と昨日話して、告白したらもしかして・・・とかも考えちゃったけど、そんなに上手くはいかないよね。


「そ そうだよね。はは あ、気にしなくていいよ。私が勝手に好きになってただけだからさ。雄二だって困っちゃうよね私に告白されてもさ、だけどこれでも私って結構モテるらしいんだよ?その気になれば彼氏の1人や2人位!あ、2人はいらないか。だから心配しなくても大丈夫だよ。あ、それから佐和とのデート上手くいったみたいで良かったね。佐和も喜んでたよ。あの子って本当凄くいい子だから、大切にしてあげなさいよ・・・・」

「萌・・・あのさ僕」

「じゃ じゃ先行くね!」


私は捲し立てる様に雄二に話しかけると雄二から離れて逃げる様に学校へと向かった。

雄二が何か言っているようだったけど今は聞きたくなかった。

それに今、雄二の顔を見たら泣いちゃいそうだ。

私ってこんなに泣き虫だったか?

元気と明るさが取り柄だったはずなのに・・・




-------------------------

その日、私にしては珍しく部活を休んだ。

中学の頃から病気以外で休んだことなかったんだけどな。


でも授業も何だか上の空だったし佐和と会うのも辛いというか・・・

"はぁ・・・"

溜息をつきながら何となく俯いていた顔を上げて辺りを見ると


「ここ何処?」


学校から家に向かって歩いていたはずだけど、いつの間にか違う方向へ歩いてしまっていたらしい。

住所を見ると川野辺天神の近くだとは思うけど結構遠くまで来てしまったみたいだ。それに・・・


「家とは真逆じゃん・・・今日の私ダメダメだなぁ~」


とりあえずスマホアプリで地図情報を確認しつつ来た方向を戻ろうと歩き出したところ


「あれ?石橋さんじゃん。何してんのこんなとこで?」

「あ、山里君。 さ 散歩だよ散歩♪最近運動不足で!」


同じクラスの山里君だった。

彼も同じ川北中出身で1年と3年の時に同じクラスにもなったことがある。

確かテニス部だったかな?

それ程親しいというわけでもないけど顔を合わせれば話位はする間柄だ。


「ふ~ん。って学校帰りに一人でか?それに運動不足ってバレー部だろ?」

「い いいでしょ別に。それより山里君こそ何してるの。家こっちっじゃないでしょ?」

「俺は親戚がこの近所に住んでんだよ。ちょっと用事頼まれてな」

「そうなんだ」


「・・・何かあったのか?」

「え?」

「だってさ目赤いぞ。泣いてたんじゃないのか?」

「そ そんなわけないじゃん。ちょっと目が痒くて。花粉症かなぁ~♪

 あ、遅くなっちゃうからそろそろ行くね。また明日♪」

「あ あぁ・・・ならいいんだけど。そうだな。また明日」


山里君と別れた私は歩いてきた住宅街の脇道から大通りにでて、バスに乗って帰宅した。追いかけてくることはないだろうけど一人になりたかった。


山里君って変なところが鋭い。

それに"目が赤い"とか私の事をちゃんと見てくれた。

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