第3話 それでいいの?

「萌」

「あ、佐和」


放課後。

私はバレーボール部の部室へと向かう途中で佐和に声を掛けられた。


「南から萌が私の事探してたって聞いたんだけどどうかしたの?」

「え・・・うん。用事と言えば用事なんだけど・・・」


正直何を話しするか全く考えてなかったんだよね・・・


「相談事?珍しいね萌が私にとか。

 じゃあさ、部活終わった後で時間取るけどそれで大丈夫?」

「う うん。じゃ部活の後でお願い出来るかな・・」

「オッケ~♪とりあえずは部活行こ!部活!今日も頑張るよ~!!」

「ちょ ちょっと佐和~」


そう言いながら私の手を引いて部室に駆け足で向かう佐和。

"本当・・・いい子なんだよね。雄二が好きになるのもわかるよ"




------------------------

「「ありがとうございました!!」」

「はい。じゃ1年は後片付けよろしくね!!」

「「は~い」」


部活が終わりシャワーで汗を流し着替えをしていると着替え途中の佐和が声を掛けてきた。


「お疲れさん♪例の件この後駅前のラウムでいいかな?

 何だかお腹すいちゃって♪」

「え?うん。いいよ。私もお腹空いたし」

「ありがと。じゃまた後でね」


そう言いながら自分のロッカーへ戻っていく佐和。

下着姿の佐和。つい目で追っちゃうけど本当スタイル良いよなぁ~

やっぱり男の子は胸とか大きい方が良いんだろうなぁ・・・

"はぁ・・・"


部室を出ると先に着替えを終えて外に出ていた佐和と優子(富田さん)がおしゃべりしながら私を待っていてくれた。


「あ、萌!遅いぞ!」

「ゴメン佐和。優子は恩田君待ち?」

「うん。バスケ部もそろそろ終わりだからね」


優子はバスケ部の恩田君と付き合っている。

いつも部活終わりに優子の事を迎えに来て一緒に帰ってるんだよね。

2人も幼馴染で付き合ってるんだけど本当仲が良い。

私も・・・雄二とそんな関係になりたかったな・・・

駄目だ・・・何だか泣きそうになってきた。


「萌?どうしたの?」

「あ、な 何でもないよ。あ、お腹空いたし早く行こ!」

「う うん。じゃね優子」


泣いちゃだめだ。

これから佐和と話するんだから・・・


佐和も私に気を使ってくれたのか部活の話とか他愛もない会話をしながら駅前の喫茶店ラウムへと向かった。

ここのお店って喫茶店と言いながらも軽食が充実しているし値段もお手軽でボリュームあるんだよね。

バレーボール部もだけど川野辺高校の生徒でバイトしている子も多いし、私も佐和や優子と良く利用してる。


「いらっしゃいませ~」

「あ、春姫♪今日バイトなんだ」

「うん。佐和と萌は部活終わり?」

「そ。お腹すいちゃって♪あ、私いつものナポリタン大盛でお願いね」

「あ、じゃ私も同じので」

「了解♪」


そう言いながら私と佐和はお店の奥のボックス席に座った。

奥まった席で周りに他のお客さんも居ない。

相談事ということで佐和も気を使ってくれたのかもしれない。


「で、相談事って何?」

「うん・・・」


どうやって話そう・・・

私がどうやって話をしようか悩んでいると


「・・・日吉君に関係する話?」

「え!なんで?」


佐和から雄二の件って聞いてきてくれた。

何で知ってるの?


「やっぱりそうなんだ。南が私に伝言伝えてくれた時に言ってたのよ。

 萌と日吉君の様子がおかしいって」


そっか南が・・・

南ってこういういこと勘が良いんだよね。


「で、何か日吉君に言われたの?」

「・・・うん。佐和の事が気になってるって・・・」

「・・・はぁ?日吉君って萌と付き合ってるんじゃないの?」


そうなるよね・・・

やっぱり周りから見たら私と雄二って恋人同士に見えてたんだよね。


「雄二は・・・ただの幼馴染だよ」

「・・・」

「付き合ってるわけじゃ・・・それで佐和との仲を取り持ってあげようかと思って・・・」

「それって・・・。萌はそれでいいの?」

「うん・・・」


いいんだ。これで。

雄二が幸せになってくれるんなら。


「・・・じゃあ何で泣いてるの?」

「え?」


私はいつの間にか泣いていたらしい。

駄目だ・・・さっきまでは我慢できていたのに。


「好きなんでしょ萌は日吉君の事」

「・・・」






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<日吉 雄二Side>

「「お疲れ様でした!!」」


今日の部活も終了。

何だか今日は今一つバスケに集中できなかった。

"はぁ・・・"

溜息をつきながら歩いていると


「日吉!」

「恩田か。なんだ?」

「つれないなぁ~。それより何かあったのか?今日調子出てなかったじゃん」

「悪い。ちょっとな・・・」

「ふ~ん。まぁいいけど悩み事なら相談のるからな」

「あぁありがとな」

「気にすんなよ。日吉にはバスケ部に誘って貰ったし、これでも感謝してるんだぜ。あっ優子が待ってると思うから先行くな♪」

「おぅ」


相変わらず仲いいよな恩田と富田さん。

確かあの2人も幼馴染で高校に入ってから付き合い始めたんだよな。


・・・僕と萌はどうなんだろ。

あいつとは何でも言い合える友達だと思ってたけど昨日下北さんの事を相談してから何となく気まずいんだよな。

それに今日は話しかけてもずっと作り笑いというか無理してるような感じがした・・・吉岡さんも何だか変に勘ぐってたし。


あいつと普通に話しできないのは辛いし何だか調子狂うな・・・・

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