能力連携初戦闘
会議が終わって皆が解散したので自身も部屋に戻ろうとした時にリーダーである成田さんに静止される。
「廉君はちょっと待って一緒に次の作戦に連れてくから」
「え?」
驚いていると素早く水無月さんが凄い剣幕で成田さんに勢いよく詰め寄る。
「聞いてないですよそんなこと」
「いや言ってないもん、今決めたから」
駄々っ子のような態度を見せる成田さんに対して水無月さんは呆れ返って片手で頭を抱える。
「何でそういつも勝手なんですか。もっと事前に話しておくのが重要だと言っているじゃないですか」
「そんな事言って、廉君取られるのが嫌なだけなんでしょ?」
「……助けた人に勝手に死なれるのは目覚めが悪いですから」
「大丈夫だってぇ、そんなホモでもあるまいし廉君の事は取らない取らないぃい!!」
無言で成田さんを糸で縛って脅している。
「糸はズルいて、もう揶揄わないから。ごめん!」
「じゃあ許す代わりに私も入れて下さい」
「あー、まあ基地待機だったけど同行してもいいっちゃいいか。いいよぉ、ほらやっぱりやべっ今のはその!」
防御動作をして成田さんは体を固めるが一向に水無月さんからの攻撃が飛んで来ない。
「あれ?痛くされない……」
「今日はこのくらいにしといてあげます」
どうやら揶揄いを上回る良い事があったらしい。
少し落ち着いた後、話し合いをし始めたわけだが既に作戦は決まっていたようで成田さんは二人に内容を伝える。
「じゃ作戦だけど、今回戦うのは基本的に俺だけだけど廉君にはちょいちょいサポートしてもらう形で行こうと思う」
「サポートとは?」
「能力者の支援をしてる集団を見つけたのでコレを殲滅及び施設等の破壊をするようにと命令されてます。基本的にこういうのは俺が単独でやったりするんだけどまあ折角だからウチの隊の方針というか戦い方をレクチャーしようと思ってますね」
内容を一通り話してくれた後に個人的な考えも伝えてくれたので理解した訳だが問題の時期が話されて居なかったので聞いてみる。
「いつ行くんですか?」
「きょだよ」
「え?」
★
東京から少し離れた元郊外、現在では建物だけが残る無人住居と化した場所に今回の対象がいるという。
国から隔離されて実質的な貧民街になっている不法住居地は実の所全国にも数多く存在し、国の汚点とも言える要因になってしまっている。
「そこを寝城にするのは妥当かもしれないけど、納得は出来ないな」
自然と口から不満が溢れていた。それはそうだ、以前から国を守る為に活動をしてしていたつもりなのに実際にしている事は同胞を減らしている事に他ならないので苦悶する。
その様子をみてなのかは分からないが成田さんから所感を伝えられる。
「反乱軍含めて廉君は今までこういうところで戦ってきたでしょ?だから今回も慣れてると思ってさ」
「そう、ですね。閑静な住宅街とかで戦う方が多かったですからこっちの方が慣れてますね。規模が大きいから中々鎮圧にまでには行かずに逃げられる事が多かったです」
いつもならばその飽きそうな戦闘を繰り返した後に徐々に前線を広げていくものだったとはずだ。
「戦闘云々は置いて単純に亡くなった人が多かったからね。国も前みたいに毎日呑気に
同じ問題だけ話し合うってだけにはいかなくなったし」
前みたいに。その言葉で先日の事を思い出して、自然と拳に力が入ってしまう。そこを偶々水無月さんに見られてしまって突かれてしまう。
「大丈夫?顔が強張ってるよ」
「はい、大丈夫です。ちょっと不安になっただけで戦闘には影響させないようにするんで気にしないで下さい」
「そう?」
水無月さんに心配そうな顔をされるがタイミング悪く現場に辿り着く。
「うし、到着ぅ〜。じゃ入るから廉君は一緒にで、みなちゃんは後方からついて来てねぃ」
「はい」「了解です」
内部に入り込み、何部屋か暗い建物の中を捜索するが人らしき人物が見当たらない。
「居ない。情報に間違えがあったかこちらの行動が読まれてたか漏れてたか?いや最後のはないだろ。もう少し奥まで見てみるかねぇ」
少し悩んだ成田さんではあったものの、そこから捜索に少し手間取ったものの奥に明かりが見える部屋を見つけ出す。
「お、いたいた。じゃあ早速入り込んじゃってー」
扉を開けて内部に入ろうとした直後に成田さんが何故か声を出してコミュニケーションを取ろうとする。
「おはようございます!能力協力者の皆さん、あなた方を拘束に来ました!」
既に敵から銃弾を連射されている成田さんは自らの能力で敵から攻撃を全て目の前で塞いでいる。尤も、彼はそのまま喋りに夢中でそのままなのだが。
「私に大人しく協力して……ってダメみたいだねぇ。入った時に既にバレてたか」
流石に話し終えた時には敵が敵対の意志を示しているのに気付いて後頭部を掻いて作戦を立て直す。
「じゃあ敵がもう暴れてるから一人ずつ倒して行ってこの中で重要だと思った奴を拘束していくって事で。出来るかな浜碧さん?」
敢えて俺の事を名前で呼ぶ成田さんだが意味はそんなにはない。しかし彼の意趣返しという意味であればこちらも答えなくてはならない
「勿論だ、遊賀隊長」
突撃と共に真っ先に最奥のマシンガンを撃ち続けている者を銃弾で撃ち倒す。銃弾の射線を減らすと共にそこに隙が出来るため、一気に内部に入り込む。
「うおっ!?」「何だコイツは!?」
自分が能力で銃弾を受けつつ流している時に前線で戦う彼、浜碧廉の事を考える。
一人で接敵、処理。鎮圧と出来るものなどそうそういない。しかし彼はそれを当たり前の様に出来る。
「アレが大源さんも推薦した新世代の力。フォーチュンライザーか」
元は運だけが強い奴だと思っていたが、彼が周りに与える恩恵は素晴らしい物がある。能力ではないものの、全体の指揮や作戦の成功率が上昇されるというのは以前から言われていた。
彼の所属する7番隊の隊長である大源がその説を密かに周りに話していたのが尾鰭が付いてラックマンという侮蔑の意味になってしまったのが事の真実。
単に確かめたかったのだ。彼の影響力がどこまで自身に影響するのかが純粋に興味があった。
結果は予想を上回り、全体の半分以上を彼が制圧しており自分の方が仕事をしていないという結果にまでなった。
「これは……ウチに引き入れて正解だったな。シンプルに実力だ、天賦の才があるよ」
「リーダー、彼は」
水無月が何者かと目で訴えるが同時にうちの隊に入れておいて欲しいという態度も取っている。
「ああ。他の隊に渡らなくて本当に良かったよ。合格も合格、怒った時に止められるか心配になったよ」
戦闘が終わると水無月さんが近付いて来て手当てを行おうとする。
「廉さん。怪我はありませんか?」
「大丈夫です。傷は負ってないです」
「凄いですね、本当に能力者と戦っただけはありますね」
センスがあると言わんばかりにこちらを褒めようとするが別段そんなことはない。それに自分を半殺しにした例の能力者の事を思い返す。
「いや、奴には手足も出ませんでした。だからもっと強くならないとダメなんです」
拳に力を入れると手を数回叩いて成田さんが指示を出す。
「よし、じゃあこの調子であと三、四箇所潰したら終わりだからさっさと行っちまおうか!」
「分かりました」
命令を受けて先程と同じように襲撃からの銃撃戦で鎮圧するやり方をして次々と抑えていく。
基本的に成田さんが正面で受けて、俺が横から強襲するスタイル。何回かそれを繰り返した後に生き残った者を捕虜として情報を仕入れていく。
やがて戦闘が終わり、水無月さんの居る場所まで戻ると後ろから成田さんも追って到着する。
「ま、終わったかな。いやー凄いね廉君、普通に狂刻よりも強いよ。流石は俺の見込んだ通りの人間だね!」
「そこは相手を褒めないとリーダー」
冗談に突っ込む水無月さんであったがすぐにこれから成田さんが何をするかに気付く。
「え、もうするんですか?」
「うん。じゃあ後は俺に任せてね」
急いで俺を引っ張って距離を取るが状況が理解出来てないので水無月さんに質問する。
「あの、これから成田さんは何をしようとしてるんですか?」
「ヤバい能力。だけどここに居ると巻き込まれるから離れて」
いそいそと二人で現場から離れるのを確認すると成田さんはひとみを静かに開いて何かを唱える。
「指定範囲認識、空間把握認定……禁忌技執行。"グラビティ・ゼロ"」
手順を踏んで行われたその行為で突如として先程まで存在していた空間が消え去った。
「空間が削り取られた……!?」
あまりの絶技に目を見開いて中心に近付いて覗こうとするのを成田さん本人に止められる。
「近付くと亡くなっちゃうからダメだよ。廉君も命は惜しいでしょ?」
「あの、今のは」
気になっている事には変わらないので間髪入れずに直接に聞くと所々隠しつつも今の技を解説してくれる。
「これは俺の専用技の一つ、グラビティ・ゼロ。空間を削り取ってるのではなく押し潰してるって言った方がいいかな?最終的に消しているのには間違いないんだけどさ」
「食らったら一溜りも無いでしょうね。どう対処するでしょうか」
そんな発言をすると表情が止まってしばらく経ってから彼が笑い始めた。
「対応しようと考えた人は廉君が初めてだよ。凄いね、普通そんな事考えないでしょ」
「え?おかしいですかね。危険があったら俺は考えちゃいますよ」
事実、能力者に巻き込まれる被害にあったので最近は良く考えていた。するとそれを面白がる成田さん。
「うんうん、やっぱり廉君を入れて良かったよ。任務も終わったし、今日はもう帰ろっか」
「うす」
成田さんから帰るように言われたので付与を発動させて飛行能力を付けるとそのまま飛んで本部まで飛んで戻って行く。
今回の戦闘はあまり参考にはあまりならなかった。どちらかと言えば自分の戦闘力を見極められていた感じだったが成田さんの実力も見れたので良かったかもしれない。
自身の考えを整理しながら仲間の能力者と敵の能力者でこれからの自身の課題と身の振り方を本部に着くまでの間に考えていた。
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