Epilogue
最終話 ニナナ
「よかったのか?」
「何がかな?」
ニナナは、銀狼は背に乗るカムイに問う。
「幹部たち、カジノで本気出してなかっただろ。ハーグスタフなんて遅れて来た。もしかすると、負けたかったんじゃないか。とかって。」
「はは。君ってなんだかんだ鋭いよね。それに理由は聞かないんだ?」
カムイの心理を理解できるだなんてサラサラ思っていない。
「ま、僕はツマラナクない方に乗るだけだよ。」
「つまらなく、ない・・・。」
そうか、あの時。《ダンジョンズ・インク》に侵入して魔物の大群に襲われた時。あの時の得体の知れない感情の正体は・・・
「カムイ。お前のダンジョン、楽しかったよ。」
それから数週間。大魔王城は忽然と姿を消し、莫大な数の死体と崩壊した文明だけがそこに残った。全世界の勇者達が魔王軍の残党を一掃していき、実際のところ多くの社員達がダンジョンズの支配を逃れたのだった。
それでも。それでも、大魔王シンラこと、カムイの死は確認されていなかったどころか、彼は、彼女は生きていた。大魔王軍は、即ちダンジョンズは滅んでいなかった。
どこかの大陸のどこかの国、どこかの地下深くに、白の光を操る装置に守られて、株式会社ダンジョンズの新しい本社ビルは今も眠っている。
地下98階。
「グレイ君には申し訳ないことをしたね。彼との約束を守れなかった。」
フォルマー副社長、アガノ経理部長、リットウ企画部長が目を閉じて部屋の正面に座る女性の話を聞いていたとき、両開きの扉が音を立てて開いた。
ぎいいいいいいい。
それはきっと、敗れた者たちの叫び。
現れた男はそれを背にして、後ろ手に扉を閉めた。
「ようやく来たね。新たな人事部長。」
正面に座っていた女性、シンラが立ち上がった。男は入り口に最も近い席に向かって歩き出した。
「本当なら私が新しい名前を考えてやる筈だけど、我々は君に敬意を表さなければならない。ウィル・ファルソンとしてではなく、ニナナとして戦った君に。」
男は死んだ目をシンラに向けてから席に座った。
「改めて、今日から君は"ニナナ"だ。」
着席した男、ニナナは果たして口を開いた。
「さて、ゲームを続けましょう。」
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