第41話 スニークイン

地下100階はたちまち地上1階に。

ニナナたちは1階の壁に現れた扉から《ダンジョンズ・インク》に侵入した。

「見なくていいですよ。ウィル君。」

ヴォルフワークスことワンルーにそう言われて、ニナナは視線を落としたままエレベーターへと向かった。


その頃、人事部室はてんてこまいだった。

「部長!どうなってるんですか!」

ジューゴことNo.15、新たな人事部長は何十人もの人事部員と経理部員に挟まれてアタフタしていた。

「あの件、全然進んでないじゃないですか!」

「人事が滞ってるせいでナンバーが決められないんですけど。」

「前の部長さんは越権行為でやかましかったけどまだマシでしたよ!?」

山積みの問題。あの男はどうやってこんな量の仕事を!?

「どれもこれも急に居なくなったアイツのせいじゃ・・」

その時だった。


鳴り響くサイレン。揺れるビル。

「挑戦者ガ現レマシタ。挑戦者ガ現レマシタ。戦闘員ハ地下16階以上ニテ待機シテクダサイ。間モナク下階ハ閉鎖サレマス。」

全員が驚きの声を上げると同時に白い煌めきが彼らを包む。《WHITE》だ。魔物たちの姿がオフィスを埋め尽くす。

そして。全員の全員に対する怒りが一軍の挑戦者たちに向けられた。

「ウグゥルゥワアアッ!!」

初めの1人がドアを蹴破って飛び出したのを皮切りに数十匹の魔物が廊下へと流れ込んだ。


「え?《WHITE》が?」

エレベーターは上昇している。

「言ったでしょう。このビル自体が巨大なダンジョンになっている、と。」

確かに、ニナナが地下90階でヴォルフワークスニ捕まった時、彼はそんなことを言っていた。

「このエレベーターは地下16階の倉庫に繋がっています。」

そうだったのか、と一瞬思う。

「地下16階に着いたら多くの敵が待ち構えているでしょう。」

エレベーターが減速を始める。

「彼らは魔物。《WHITE》で守られているでしょうから死の危険はありません。手加減せずに踏み越えて行きましょう。」

そしてエレベーターが止まった。

「え、でも。魔物って社員・・じゃなくて魔王軍の兵隊全員ですよね?数的に・・。」

「ええ。ですから今のは、手加減できるものならの話です。」

ドアが開くや否や、倉庫一面に跋扈する数十体の魔物が一斉にこちらを睨んだ。

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