第40話 最後の挨拶
ぷーぷーぷー。
機械音。日の登りかけるとある山中の盆地でワンルーと十数人の勇者、それからニナナたち数人の協力者は焚き火を囲っていた。
ワンルーの手にする機械の板は電話というもので、試験運用中の通信技術。逃走の際、技術開発部からくすねてきた。板からはカジノ襲撃の結果が報告されている。
傍受の恐れがあるとして本格的には導入されていなかったが、今の自分たちにその危険はない。こちらから連絡はできないものの、カジノからの連絡では敵を引きつけることも可能。
そう考えていたのだが。
「2勝2敗、ですか・・。」
幹部たちは襲撃を予期したかのように待ち構えていた。
エーミール・ハーグスタフことハーグスタフ監査部長は確保、拷問の後殺害。
ラスマキ・ホルファーグレイことマッドグレイ財務部長との戦いも相打ちに持ち込むことに成功した。
しかし、他の2支部では幹部の逃走を許してしまった。チビとノッポは無事に復活したが入り口が塞がれていて再戦は叶わない、と。
ワンルーはため息をついた。春の空気に冷やされた息は炎の上で白く踊る。
襲撃の最大の目的、幹部を本社から引き剥がすことには成功した。しかし彼らの抹殺には失敗し、引きつけられた勢力は結局のところたったの4人。
「オール・インを要求される訳ですか。」
最終決戦に乗り込む予定を早める?待機させる予定だった数人の勇者も連れて行く?
否。それでは足りない。
イノウエとニナナがワンルーの方を見て頷いた。ワンルーが盗んできたのは剣や電話だけではない。
懐から取り出したそれは黒い棒状の機械。
ワンルーは《BLACK》のボタンを押した。
黒い光が彼を包む。顔面に浮き上がる炎の模様。赤いシャツを覆って純白のコートが現れる。
そして彼は、目を開けた。
「革命軍総統、ヨセフ・ガーディン・ヴォルフワークス。」
雲間から日の光が落ちる。
「悪魔の仮面を使おうとも・・・。」
その時だった。日の光に照らされた花畑。そこに轟く音。
「ふふ、迎えてくれると思っていましたよ。魔王城は勇者の挑戦を拒まない。」
地面が隆起する。花畑の下に隠れた鋼鉄の直方体が姿を現していく。勇者たちが目を丸くする中、直方体はようやく動きを止めた。その最下部についた扉が音も立てずに開く。
「このビルが、いえ。この城こそが。」
ワンルーの声が響く。
「大魔王城。敵の本拠地です。」
最終決戦《ダンジョンズ・インク》。挑戦開始。
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