第39話 爆鉄の男たち
「魔法!メルトブラスト!!」
マッドグレイの弾丸はパセパトゥーの爆発魔法に融けた。マッドグレイがイノウエを射殺した武器。敵であるパセパトゥーも気付いているだろう。
「魔法!爆炎十文字!!」
マッドグレイを中心に魔法が発動する。右後ろに跳びながら2発を打ち込む。パセパトゥーはかがんで攻撃を避けると地面を蹴りマッドグレイに飛びかかった!
パセパトゥーの微笑みが神経を逆撫でる。自爆か!
「魔法!ライトニングバースト!!」
刹那。カジノを熱と光が覆い尽くした。
マッドグレイは吹き飛ばされ、地面を転がった。
「・・・ガハッ!」
壁に激突。あちこちの電線は途切れ溶け落ち、火花が散っている。パセパトゥーはマッドグレイに歩み寄り、その頭の前で魔法発動の構えを取った。マッドグレイは血だらけで膝を立て、パセパトゥーを見つめる。
マッドグレイは懐から2丁目の拳銃を抜き取りパセパトゥーに向けた。パセパトゥーは目を丸くする。
「・・・血を流してでも、戦う、のが、そんなに不思議か?」
マッドグレイがなんとか紡いだ言葉にパセパトゥーも真顔になる。勇者たちは命を賭けて戦ったことがないから。
「・・・惚れた男の願いを、叶えたいのはそんなに不思議か!!」
「魔法!エグスプロージョン!!」
パセパトゥーの手に光が集まる。マッドグレイは最後の力で左足を突き出し、右に跳躍した。パセパトゥーもそれを追いかけて姿勢を斜めにする。互いに向き合ったその最期の一瞬、時の流れが止まったように感じた。きっと、きっとこうなると思っていた。
永遠にも思える時の中で真横に落下しながら、2人は銃と魔法を互いに突きつける。そして次の瞬間。
バアァンッ!!
グンエ支部のカジノには2人の男が倒れていた。攻撃は同時に炸裂し、体力は同時に尽きた。しばらくしないうちに、パセパトゥーのダウンにより彼の姿はなくなった。王城の入り口に転送されたのだろう。
「・・・引き分け、か。」
彼の使命は、カジノを守った上で勇者を足止めし、そして命を落とすこと。目的は達した。これで満足だ。
マッドグレイの目に水が溜まり視界が歪む。火花が落ち、涙が目尻を伝う。
「・・・どうか。どうか・・・・。」
彼女に美しい終わりのあらんことを。
彼に素晴らしい始まりのあらんことを。
そして、マッドグレイは目を閉じた。
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