第38話 怪柔の男たち
勇者ノッポは巨漢フォルマーに殴りかかるがその一撃はフォルマーの肉体に当たってべちっと音を立てただけだった。
「おお!怖い怖い!」
フォルマーの歪な左手がノッポを薙ぎ払う。
壁に激突。人型の穴が貫かれる。カジノの廊下に突き抜ける。ノッポは壁に垂直に足を踏ん張る。亀裂が走る。
「魔法!グラビティカ!!」
ノッポの両腕両脚を光が走る。衝撃。壁は砕け、ノッポはフォルマーに発射する。
「ええやん!」
フォルマーの構えた両手にノッポの拳が炸裂。
「うがああぁあ!!」
轟音。フォルマーが反対の壁に埋まる。筋肉が収縮し脱出するや否やサイズは元通りに。
「そんなん、欲しくなってまうやん。」
巨体の怪物は頭の血を拭った。
フォルマーの拳が10倍にも巨大化しノッポに襲いかかる。
「グラビティカ!!」
フォルマーの拳が押し返される。
「二度は食わんわ!」
重力魔法を押し切ってフォルマーの一撃が炸裂した。が、ノッポは飛び上がって回避。フォルマーの巨大化した腕を走りフォルマーの頭部に飛び蹴りを喰らわせた。ゴンッ!鈍い音と共にフォルマーの首がおかしな方向に曲がる。
「流石は勇者様やな。ここで負けとくのも手や。確かにな。」
それからフォルマーの首がゴキッと音を立てて元に戻る。ノッポと目が合う。
「せやかて。こんなん食らってもうたら、負けてられへんやろ。」
そこでフォルマーはノッポを掴み、すかさず腹に一撃を叩き込んだ。天井を突き抜けてしまう。フォルマーも跳躍。天井を突き抜けて王城上空へ。
「魔法!グラビティカ!!」
ノッポは空中で姿勢を制御し、衝撃波を発射。しかし、
「もうそれは見切ってんだよ。」
フォルマーが小さく腕を振るや攻撃は掻き消された。
「魔法の種類が少ないのは難点や、な!」
追撃。ノッポの体力は残りわずかだ。フォルマーはノッポの腰を背負い、固定する。
全身が逆さまに。2人の頭を下にして落下し始めた!
空気を切り裂く。燃える夕日が見つめている。
「初めは、楽しいダンジョンを。ってそれだけやってんけどなあ。」
フォルマーの言葉は風の音にかき消されて誰にも届かない。
ごふ。
そして2人は王城に落下した。
フォルマーは土煙をかき分ける。
「とりあえず、ノッポちゃんは倒せたんとちゃうかな。」
丁度カジノの場所に降りてきた。巨漢を黒い光が包み、普段の姿のフォルマーが現れる。
「せっかく勝ったんやけど、カジノはボロボロやな。」
彼らがやって来た目的は王城、特にその国の主が居るエリアに襲撃の手が届かないようにすること。襲撃自体が陽動であることには勘づいていながらそれに乗らざるを得ない、損な立ち回りだ。
それにカジノは《WHITE》に対応していない為に命懸けの勝負をせざるを得ない。
皆が無事だと良いが。
「さてと。」
ハーグスタフはガンバルバーニュへ、アガノはAGN-00としてオソレイヤへと向かった。
残るは・・・
グンエ支部。
黒スーツの男は、魔法を発動する構えを取る勇者パセパトゥーと相対していた。客は非難済み。しかし敵はむしろ好都合とでも言うように笑っている。これで好きに殺りあえる。そう、勇者の全身が叫んでいるのだ。
黒スーツの男は拳銃を構える。
「大魔王軍幹部。ラスマキ・ホルファーグレイ。」
バァン!マッドグレイの発砲音を合図に戦闘が開始した。
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