第37話 破械の男と女

「魔法!ネオフルーエン!!」

チビの魔法が次々に機械の体と鋼鉄の腕に弾かれる。相性は最悪か。

「エネルギー砲、チャージ中デス。」

AGN-00は変形を繰り返しながら、胸元の機械から青白い光を放っていた。瞬発的にチビは身を翻す。

「発射シマス。」

次の瞬間、胸元の光は唸り、捩れ、収束したかと思えばチビの方へ一直線に放たれた。

チビが避けたのも束の間、AGN-00は機械の腕で地面を叩きつけ、反動で飛び上がった。鉄の体の着地地点はチビだ。後方に回避して剣を構えるが、直ちにAGN-00の体が展開し、ミサイルロケットがチビを襲う。


爆発。

「エネルギー砲、チャージ中デス。」

間髪入れずに次が襲う。避難は完了したと言っていた。仲間を客に紛れ込ませて攻撃する策ももはや不可能。分が悪い。

「魔法!プロテース!!」

咄嗟に反射魔法を仕掛ける。

「発射シマス。」

光線が複雑に反射し、部屋は真紅の光に焼かれた。


光線とミサイルでカジノは穴だらけ。粉塵は空気中を舞い、視界が悪い。

「魔法!ギャラクティックフレア!!」

ようやく立ち上がった瀕死のチビが繰り出したのは無属性最強魔法。発動までにかかる30秒間、ダウンしてはいけない。となれば当然。

「サセマセン。エネルギー砲チャージ中デス。」

AGN-00のミサイルがチビを襲う。魔法の発動を中断させに来ている。チビはなんとかかわし斜め後ろに跳ぶが、高速で乱射されるミサイルの1つを爆発させてしまった。

しかしその程度で倒れる勇者ではない。

「発射シマス。」

レーザー、ミサイル、火炎放射が同時に炸裂。もうダメかと思った瞬間、天井が割れ、青白く拍動する球体が轟音を立てて現れた。

ギャラクティックフレアだ!!

「オミゴト。」

AGN-00の攻撃で吹き飛んだチビは、球体が彼女に直撃したのを目撃した!が、次の瞬間、球体は靄と消えて無傷の鋼鉄人間が姿を現した。


ギャラクティックフレアでも無傷。自分に太刀打ちできる相手ではなかった。単に強い訳ではない。自分が来ると分かっていて合わせたかのような相性の悪さ。例えばもしノッポの怪力があれば。そこまで考えたところで、チビの視界は暗転した。


チビは迷路の様な廊下を走っていた。カジノの入り口目指して。こちらは勇者だからダウンしても何度でも挑戦できる。急げばまだ足止め出来るかもしれない。

チビがカジノの扉の前で急停止した時目にしたのは、入り口を塞ぐ鋼鉄の壁だった。

ダメ・・・か。チビは壁を蹴り飛ばした。


その頃。

「君ぃ、見どころあんな。」

ノッポもまた、スデイシアンのカジノで幹部と交戦していた。黄色い装束の男。

ノッポの連撃は相手の手のひらで受け流され続ける。

「大魔王軍に入らへん?良い席用意できるで。」

力を込めたノッポの一撃が敵の腹に直撃する一瞬前、その右手に収まった。

「真面目な性格も吉、と。」

その右手は先程までの3倍の大きさになっていて血管が浮き出ている。

「ほな勧誘スマイルやのうてガチで行かんとなぁ。」

みるみる敵の体が巨大化していった。服がはち切れ、髪の毛は逆立った。

「大魔王軍幹部、エル・フォルマー。ほな、いこか。」

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