Case=Final 《ダンジョンズ・インク》編
第34話 JOKER
「ほな、ゲームを続けよか。」
本社地下98階会議室。シンラ、フォルマー、マッドグレイはトランプの束を片手に小さな円卓を囲っていた。
「こないだの襲撃は大失敗やな。10人中7人死亡、1人重症、もう1人軽症。1桁メンバーが全滅してもうてエースちゃんとトーヴェンちゃんは行くとこまで行っちゃった感じやな。」
フォルマーの説明にカムイが出てくる。
「唯一残ったニナナ君は勇者の反撃にあった、の一点張りだってさ。」
「間違いなくヴォルフワークス君が暗躍してるね。彼を狙ってあの街を選んだんだから。ニナナ君もそちらに付いた。まあ、あれだけ馬鹿にされて裏切らないほど人間やめてない、ってことかな。」
自分の体の発言に付け加えてから、シンラはフォルマーの手札から一枚引いた。JOKERを最後に持っていた人物が負けの単純なゲームだ。ジャックが揃って1組すてる。フォルマーは2枚、シンラは2枚、マッドグレイは3枚だ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
マッドグレイがシンラから引く。これも揃ったようだ。
「総務部も人事部もてんやわんや。死人が出たん何年ぶりや、ゆうて。でも、シンラちゃんはそれも織り込み済みだった訳やろ?」
フォルマーは2のペアを捨てて残り一枚になった。
「・・美しい芸術には美しい終わりが必要なのさ。そうして初めて《ダンジョンズ・インク》は完成する。そのためには、ヴォルフワークス君も利用するよ。」
シンラが一枚引いたのをきっかけにフォルマーの勝ちが確定する。JOKERだ。しかしシンラは手に入れたカードをシャッフルしなかった。
「およ?それ、どっちがJOKERかバレちゃうんと違う?」
「この方がツマラナクないよ。」
シンラは両方のカードを表向きにして卓に示した。
「どちらでも、好きな方を選んでいいよ。」
クイーンとJOKER。クイーンを取ればマッドグレイの勝ちだ。
「ダンジョンズに美しい幕引きを用意するべく、多くの職員をヴォルフワークス君の駒として用意してあげた。会社に恨みのある人物に秘密を持たせてあげたり、勇者たちにダンジョンズの存在を仄かしたり。そして、我々は抗戦するがそれも虚しく、逃走するべく仕向けられたヴォルフワークス君の手引きが、我々に終わりをもたらすんだ。」
フォルマーは若干引いている。
「・・・なぜ?」
「ゴールのない迷路なんてずるいじゃないか。私がダンジョンズにゴールを用意する。勇者たちの手による大魔王軍の壊滅、というゴールをね。」
マッドグレイはシンラを見つめていった。
「・・・そうしたら、あなたは人間に戻れるか?」
「ああ。約束するよ。」
それを聞いて、マッドグレイはJOKERを手に取った。クイーンをテーブルに置く。
「ありがとう。」
シンラの2着が決まったとき、会議室の両開き扉が重い音をたてて開いた。アガノとハーグスタフだ。1桁も大分少なくなった。
「席について。最後の会議を始めよう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます