第31話 再開、再会。
人混みがまばらになった瞬間、筋骨隆々の勇者ノッポが右手でチビを鷲掴みにした。
リットウの攻撃で撃沈したパセパトゥーを小さく視界に捉えてため息を吐く。あの馬鹿野郎。腹立ちを込めた右手でノッポはチビを放り投げた。
瓦屋根に着地すると同時に屋根を飛び伝って駆け抜けるチビ。
「魔法!フルーエン!!」
彼方、緑のドレスの女に向けられた両手から魔弾が連射される。リットウは見向きもしない。が、その髪は唸り、変形し、彼女の周りに高速な斬撃による防壁を作った。
「フルーエン!フルーエン!フルーエン!!」
魔弾は彼女の髪に相殺されていく。
「おいおい、こっちが留守だぜ?」
アルバートが両手の爪をチビへ向ける。
「クローバレット!!」
炎を纏った長い爪が発射。チビに当たる寸前で。
「魔法!フローズンウォール!!」
通りから右手を伸ばして魔法を飛ばすカンダンサ。彼の氷壁が弾丸のような爪を捉えた。
「チッ。」
アルバートの舌打ち。既に通りには殆ど人がいない。イノウエとノッポが通りを走ってくる。
その時、リットウが指を鳴らした。刹那、彼女の眷属たちの体が突如変形し始めた。
勇者たちは戸惑いを隠せない。7体の内5体、筋肉が膨張し血管が浮き出たブラックデビルたち。その身長は3メートルにまで成長した。
「お行きなさい。」
ブラックデビルは一斉に雄叫びをあげ飛び上がる。勇者たちの前に立ち塞がった。
「いいぜ!最高だ!クローバレット!!」
連射される炎の矢が通りから円形のリングを切り取るや否やリットウの髪がチビを真横に吹き飛ばし、リングに放り込んだ。
「我々はあなた方の相手をしている暇を持ちません。」
「そゆこと。よろしくやってろ。」
そうして、リットウと眷属は立ち去り、アルバートは炎を撒き散らしながら街中を滑空して行ってしまった。
5対5。しかし既にカンダンサの悩みは忘れ去られていた。勇者を舐められては困る。
「魔法!バフアップ!」
カンダンサの攻撃力上昇魔法を引き金に、勇者達は一斉に攻撃を開始した。
「ふう。一旦休憩な。勇者は来れねえし民間人は大抵逃げ払ったから誰にも見られねえ。」
アルバート、即ちトリプルエース人事部長が呟く。先程の通りから死角に当たる路地にニナナを含む4人は身を隠した。
「ふぇえ。い、意外と上手くいったと思いますぅ。」
眷属役は2人とも口を挟まない。
「いいか。この後だが、魔王の脅威を喧伝するのに必要なレベルで街を破壊しなきゃなんねえ。俺の炎で焼くからお前らは援護してくれ。」
その時だった。
「物騒な話ですね。」
その声は上からだった。民家の屋根に立つ人影が突如、落下すると同時にリットウがドサリと音を立てて地面に倒れた。
その手には剣。リットウに叩きつけたのであろう、血がついている。
路地の外からの光が彼の背中を照らし顔を隠していたが、彼らには、特にニナナにはその相手が誰か疑いようもなく分かるのだった。
「ヴォ、ヴォルフワークス部長!?」
人影は微笑みもせずに剣を構えた。
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