第13話 謎のギャンブラー

マイクを握って客を扇動する中、ザムザは焦りを感じていた。ミスだ。煽りすぎたんだ。あそこまで派手に勇者のダウンを取り上げなければこうはならなかった。敗北に積み上がった紙幣の山。勇者を負けさせる訳には、いかない。


「さあ、間もなく勇者DTimeが山頂のダンジョンに到着いたします!ベッティングの締め切りが迫っております。皆様、是非お早めに!!」

勇者は2度目の山登りを終えようとしていた。ちらほらカウンターに向かう客もいるが、ベットは15億8000万vs182億3000万で落ち着いていた。至急連絡して魔物たちに手を抜かせるか?いや、手紙を飛ばすには間に合わない。

その時だった。ザムザがカウンターを見やると2人組の男がいた。営業部長!?ザムザは驚きを隠すのに必死だった。いつものボロボロの革ジャンではなく、スーツを着たトリプルエース営業部長。もう1人はラフな格好だが?営業部長直々の接待。相手は確実に大物。話し声は聞こえないが・・・

直後。ザムザは更なる驚きを目撃することになる。


一方カウンターでは。

「カムイ様。今敗北がドーンと優勢なんすわ。どっち賭けます?」

トリプルエースが質問するとカムイと呼ばれた男が笑顔で応えた。

「そりゃあ、こっちだよね。勝利に賭けるよ。」

「お!流石っすねえ!!度胸が違います!でもゲームの結果までは俺でも変えられねえっすよ?」

「もちろんさ。イカサマで勝ったってなんの意味もないよね。」

カムイはレートと賭けられている金額を一瞥した。

「でもさ、この大差に1億か2億賭けたところでツマラナイ。」

カムイは小切手を取り出してそこに数字を書いた。


「111億9000万ゴールド。勝利にだ。」


丁度その時、勇者がダンジョンに到達し、挑戦料を支払った。

「そこまで!この瞬間、ベッティングを締め切らせていただきます!」

ザムザの声は衝撃で震えていた。

「勇者DTimeの敗北に182億3000万ゴールドが!そして勝利に127億7000万ゴールドが賭けられております!!」

直前の超高額ベット。客のどよめきは言うまでもない。ついにゲームが、始まろうとしていた。

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