Case=2 《龍の天空城》編
第11話 カジノ・ダンジョンズ
人事部長のGoサインで企画書の作成。財務部の絶賛で部の新設が決定した。ニナナことNo.277は、忙しい日々を楽しんでいる自分がいることを見て見ぬ振りした。
「え?カジノ・・・ですか?」
企画部室の20倍の広さを誇る人事部室の中央でニナナは首を傾げる。副部長、ジューゴことNo.15は応える。
「ええ。そういえば君は新人でした。ブレイブというギャンブルは知っていますね。」
ブレイブとは、勇者がダンジョンの攻略に成功するかどうかを賭けの対象とした賭博である。確かリットウ企画部長が、数年前この企画で賞をとって1桁入りを果たしたそうだ。それ以来、株式会社ダンジョンズの最も大きな財源の一つになっている。
「ええ。ダンジョンズがカジノを運営してるのも。でも、なぜそこに人事部の僕が?」
「勉強です。新人の通過儀礼なんですよ。見てくるだけで結構ですから。」
ニナナは、ブレイブを行っているダンジョンズのカジノに、一応視察という体で出向くことになった。
「それで、いつ行くんですか?」
「今日。」
「え?」
「今から。」
「え?」
透明化したヘリコプターで旅すること十数時間。ニナナは、真夜中のガンバルバーニュ大帝国の王城に降り立った。ヘリコプターを降りてからは、面倒臭い手続きを経て迷路のような入り組んだ廊下を通らされ、そして。
「ここが・・・」
そこは派手な照明と煌びやかな装飾に彩られた部屋。金の壁に赤色のカーペットそして黄色い歓声が折り混ざる。
「カジノだ!」
「また人事部の視察だって。新人さんだろうけどさ、一応気を引き締めてこ。」
No.363、通称ザムザはカジノの控え室で同僚からこの話を聞いた。彼はカジノ運営部の所属で今年はガンバルバーニュの担当だった。
ザムザは目元までかかる長い髪を後ろに撫で上げながら言った。
「我々の仕事は変わらないさ。違うか?」
臙脂色のスーツが輝いている。ザムザは席を立った。
「あ、おい。待てよ。」
ザムザは同僚の投げかけを聞き流して舞台袖に向かった。
これからブレイブが始まる。自分はその瞬間からギャンブルの一部になるのだ。ザムザは深呼吸をしてから舞台に踏み出した。
この後舞台が混沌の渦に巻き込まれることなど露と知らずに。
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