第7話 1桁会議

株式会社ダンジョンズ本部の地下98階の会議室に7人の男女が集まっていた。


「おい!アガノ、ヴォルフィー。てめえらこの前喧嘩したんだそうじゃねえか!?」

No.6、トリプルエース営業部長。


「ええ。彼女に喧嘩を売られたんですがね。私の圧勝でしたよ。」

No.5、ヴォルフワークス人事部長。


「アンタら、仲良くせんかい。な、笑顔大事にしてこ。スマイル!」

No.2、フォルマー副社長。


「そ、そうですぅ。私たちは会社のトップですぅ。喧嘩なんかいけないと思ぃ・・・」

No.8、リットウ企画部長。


「名前ダケノ企画部ハ黙ッテイテクダサイ。余計ニ腹ガタチマス。」

No.4、アガノ経理部長。


「ギャハハ!アンドロイドなのに腹が立つってか!?冗談キツいZE?」

No.7、トーヴェン広報部長。


「・・・・・・・・・・・・・・」

No.3、マッドグレイ財務部長。


「社長はまだいらっしゃりませんね。もう少し程お待ち致しましょうか。」

No.9、ハーグスタフ監査部長。


ここは1桁会議。バケモノたちの巣窟。


「なあ。アンタら、人間のいっちばん根源的な活動って何やと思う?」

話題を提供するのはいつも大抵フォルマーだ。

「・・・・・・・・・・・・・・」

フォルマーの隣に座るのはマッドグレイ財務部長。黒づくめのスーツの男で、いつも無口というか無言だ。

「それは食事DA!エネルギー補給に必要だろ?食って寝たらリセットだZE!」

一番に答えたのはトーヴェン広報部長。派手な色のアフロと変な形のサングラスは彼にしか似合わない。

「それよりも呼吸だろ?食欲ねえ時はあっても呼吸しねえ時はねえからな。」

トリプルエース営業部長はボロボロのレザージャケットを纏った男性で、一際声が大きい。トーヴェンといい勝負だ。

「思考だと思いますぅ。思考する動物は人間だけ・・・だと思いますぅ。」

リットウ企画部長はダンジョンズの制服である深緑の軍服を着た女性で、いつも通りモジモジしている。長い茶髪を指で弄りながらフォルマーの問いに答えた。


その時だった。

「・・・落下。」

全員がマッドグレイを見た。実に4ヶ月ぶりの発言だったからだが、ヴォルフワークス人事部長は特に驚いているようだった。

「落下・・デスカ。ピントキマセンネ。」

「皆の意見はおもろいなあ。グレイちゃんの言いたいのはこないなこととちゃうかな。人間はふとしたキッカケで落ち込みやすい。グレイちゃんらしい考えやな。」

これを聞いてヴォルフワークスは突然立ち上がり、マッドグレイに詰め寄った。

「なぜ貴様がそれを知っている!」

一同の驚愕は深まった。マッドグレイは無表情な目のまま口角を上げた。

「お、」

そして右掌を上に向けて人差し指でヴォルフワークスを示してから天井を指さした。

「おのれぇ!!!」

ヴォルフワークスがマッドグレイの襟元を掴んだとき、

「はい。そこまで!暴力はダメや。それとも、どうしても下に行きたいんか?」

ヴォルフワークスは手を離し、落ち着いた口調で言った。

「失礼しました。覚えておくことです。マッドグレイ財務部長。」

彼は自席に戻った。

「ここは地下98階。百〇一号室に一番遠くて一番近い部屋。皮肉なもんやな。」

フォルマーはボソッと呟いたがそれに気づいた者はいなかった。

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