第6話 嵐の真ん中で

「No.277!あなたを人事部に配属します!」

「ど、どういうこと!?」

「ナンノツモリデス!?」

「人事部員は部外者ではありません。これで文句はないでしょう。」

「ソンナノ認メラレル訳ガ!ソレニ部外者ニ機密ヲ漏ラシタ事実ハ変ワラナイ!!」


「それを決めるのはあなた様方ではございません。」

会議室の両開き扉が勢いよく開け放たれた。

「監査部長!」

「ソレニ、副社長マデ!?」

両部長が驚きの声を上げる。受刑者たちは置いてけぼりだ。

入ってきたのは白スーツの男、No.9のハーグスタフ監査部長。

そして東国風の装束に身を包んだNo.2、フォルマー副社長だった。

「面白いものが見れると伺って参りましたのに。」

「いやあ。あっしもハーグちゃんに呼ばれて来たんやで?せやのに。」

フォルマー副社長の目線が2人の部長を貫く。

「なんやこの失態は?」

「モ、申シ訳・・」

「謝罪が欲しい訳とちゃうねんぞ?ともかくここは監査部に任しとき。」

「下らない揚げ足取りをおさせになる為に私をここまでお呼ばれになったのですか?アガノ部長殿。それにヴォルフワークス部長殿もこの程度のお遊びに引っかからないで頂きたいところでございますね。」

「あの、人事部というのは・・」

ニナナが恐る恐る手を挙げた。

「部員の選考は部長殿のお仕事でございます。我々が口出しさせていただく範疇ではございませんね。」

ニナナは何と言えば良いか分からない。

「さて、ヴォルフワークス部長殿、この方の人生を狂わせてまでご意志を貫くおつもりでございますか?」

「経理部が異論を取り下げない限りです。」

「て、ことやねんけど。アガノちゃん。どないする?アンタやって彼っちゅう人材が欲しかった訳やないやろ?ちいっと魔がさしてヴォルフィーちゃんに意地悪したくなっただけや。」

「ただし、取り下げた場合、あなた様の軽率な言動にはご注意をさせていただくことになりますが。」

「ソ、ソノ。彼ガ機密ヲ知ッテシマッタノナラ解雇モ承知ノウエ・・」

「あ?はっきりせいや。」

「ニ、二言ハアリマセン。」

「よろしゅう。ほな、警備員さーん。入ってきて。彼らを連れてってや。」

5人の警備員が16人の受刑者を連れて行った。ニナナは何をするべきか分からなかったが、去り際の16人の鋭い目つきを見逃しはしなかった。

「ほな解散ね。」

ハーグスタフとフォルマーの退室をきっかけに1人また1人と部屋を抜けて行ったがニナナだけはその場に立ち尽くしていた。

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