第5話 裁判がはじまる
ニムサン、ニナナを含む北ヨーカルド大陸ダンジョン開発部の17人は人事部と経理部による査問会議に掛けられていた。
「ようこそ。なぜ自分たちが会議に掛けられているか分かりますね。」
ヴォルフワークス人事部長。会社のNo.5だ。
「分からない方はクビです。先に百〇一号室に行っていて下さい。」
百〇一号室とは本社の最下層地下100階にある拷問部屋だ。とどのつまり、死ね。ということか。
「先日ノ《凍れる地下迷宮》デノ出来事ニツイテオ聞キシマス。」
No.4のアガノ経理部長。彼女はアンドロイドだと言われている。眼光が怖い。レーザーでも出てきそうだ。
「先日、勇者イノウエが該当ダンジョンに1230回挑戦し、結果として1155回攻略に成功しました。」
ヴォルフワークス部長が報告書を読み上げる。彼の左右に控える人事部はうんうんと頷いている。
「コレハ非常ニ大キナ責任ヲ問ワレル問題デス。」
アガノ部長が意見を述べる。左右に控える人間の経理部はうんうんと頷いている。3人のアンドロイド職員は無言で座っている。
「これより、あなた達の処遇を決めなければなりません。最悪の場合、クビがかかっていることをお忘れなく。」
17人は無言で俯いて、人生最後の数時間を肌で感じていた。
裁判は粛々と行われて、当初の予想どおり、17人の死刑はすぐそこまで迫っている様だった。
「それでは、人事部と経理部の合意に基づき、北ヨーカルド大陸ダンジョン開発部の廃止を決定します。異論はないですね。」
「アリマセン。」
終わった。
「今から警備員を呼びます。全員を百〇一号室に連行してください。」
嫌だと言うものはいない。覚悟はあの時から決まっていた。
「百〇一号室で行われる拷問は即ち水責めです。」
17人は驚きを見せるものの声を上げるほどではない。
「水に入れられて5分もすれば楽になれます。まあ、5分を長いととるかは皆さん次第ですがね。」
「な、なんでそんな苦しめるんだ!一思いに殺してくれr」
「待チナサイ。」
受刑者の1人の言葉をアガノ部長が遮った。
「百〇一号室ノ内容ハ機密事項デス。困リマスネ。コノコトヲ部外者ニ話サレテハ。」
彼女は1人の男を見つめて言った。
「ヴォルフワークス人事部長!」
「何を言っているんです?壊れましたか?この場に部外者は居ません。人事部と経理部、そして受刑者です。」
「イイエ。No.277ノ処遇ニ我々ハ同意シテイマセン。」
「な!?」
「ぼ、ぼく!?」
「部ノ廃止ヤ解雇ノ宣告ハ人事部、経理部両者ノ合意ニヨッテノミ行ワレマス。コノ機密漏洩、監査部ハドウ見ルデショウ?」
「ぐ、ぐぐぐぐ」
ヴォルフワークスは頭を垂れた。全員がなんと言っていいか分からない中でニナナだけはキョロキョロと首を振っていた。
「それで全員ですか?」
「ナンデスッテ?」
「合意しないのはそれで全てかと聞いているんです。」
ヴォルフワークスは頭を上げてアガノを睨んだ。
「エエ。アナタヲ追イ詰メルニハ1人デ十分デス。ソレニ、ソノ1人ハ誰デモイイ。」
「それなら致し方ありません。」
ヴォルフワークスは一息置いて言い放った。
「No.277!あなたを人事部に配属します!」
「は?」
と、人事部の職員。
「エ?」
と、4体のアンドロイド。
「ど、」
と、No.277。
「どういうこと!?」
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