第4話 何周でも

3度目の撃退。勇者イノウエはスノーレイブンのクチバシに倒れた。

ダンジョンが白に包まれる。イムサンことNo.163、ニナナの後任の責任者は手を叩く。

「さ。準備して!次が来るからさっさとリセット!」

3回目ともなると部下たちの反応は悪い。

「せんぱぁい。本部から連絡は来ないんですか?」

先程、勇者イノウエの来訪を報告した。

「それが・・迎え撃てって。」

部下たちはざわめく。当然だ。

「この前の失態もあったし、簡単に報酬を取られたり、何度も取られたりしようものならこの部は廃止。恐らく半分はクビ。」

「クビ!?死にたくなんてない!」

「なんでイノウエなんて来たんだよお!」

ニナナも危機を感じていた。半分と言ったら、自分とイムサンは確実に入ってくる。クビ即ち死だ。

「彼を倒しましょう。粘るの!何周でも!」

返事はなかった。


イノウエの周りに集まってくる魔物がどんどん強くなっている。初めはゴブリンがほとんどだったのに、レイブン、オロチときて今はスノーオークが目の前にいる。突進と衝撃波を繰り返す攻撃力の高い敵が3体がかり。明らかにこのレベルのダンジョンに出現していい戦闘ではない。

このダンジョンは何かおかしい。イノウエは3匹のオークの突進に囲まれたが高く飛び上がり攻撃を回避。

「魔法!エグスプロージョン!!」

互いに追突したオークの群れに爆発魔法をお見舞いした。

「スノーオークたちを倒したぞ!」

彼の躍進は止まらない。


10回目でダンジョンの入り口に辿り着かれた。一層気を引き締めろ。とイムサンは言った。

35回目で地下一階層を突破された。ここからは各階がどんどん広くなる、のだが。

40回目で地下二階層を突破された。30階層の迷宮を10階層になんて減らさなければ。

43回目で地下三階層を突破された。明らかに疲労が見えるようになった。

44回目で地下六階層を突破された。もう踏みとどまれない。

45回目でボス戦に到達。ニムサンは健闘した。が。

48回目、ついにダンジョンは攻略された。


この数字は悪くない。挑戦料は4〜5回で元が取れるようになっているからかなりの好成績だ。しかし歴戦の勇者は魔物たちの疲弊を見逃さない。

ダンジョン内の魔物異常発生の謎を究明すべく、そこから彼はさらに1182回ダンジョンに挑戦し、そして1154回攻略を果たした。数分おきに彼は襲来し、数十分でダンジョンを攻略し、そして報酬を食い散らかした。

その挑戦期間実に4週間。社員たちが戦い続けられるはずもなく、ニムサンを含めた全員がボロボロ。本部からの応援が2度に渡って送られたが、彼らも長くは持たなかった。

こうして、北ヨーカルド大陸ダンジョン開発部の廃止が決定づけられた。

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