第6話 ア・スタディ・イン・ブルー

「父さんも宝石を!?」

「お前が持ってる"銀の結晶"と違って、この"金の結晶"は中古品だ。実際に見たわけじゃないから推測だが、お前のはあと70回は残ってるんじゃないか?」

「70回・・・かなり減ったけど、2回に比べればマシか。」

金で縁取られた青色の宝石。思えば緑の方の結晶には銀の縁があった。

「いいか?オルタ。よく聞きなさい。」


「お前の宝石"銀の結晶"や、この"金の結晶"は精神と記憶を蓄積するメディアだ。」

「蓄積?生き返らせる訳ではなくて?」

「生き返らせるというより、巻き戻すんだ。持ち主が何らかの要因で命を落とした時、結晶に蓄積された記憶を持たせたまま、その日の朝まで時間を戻す。だから結晶を持っていなければループはできないし、結晶に蓄積されていない記憶は呼び戻せない。」

「たしかにここ十数日のことは思い出せない。」

「それはお前が結晶を持っていなかったからだ。しかしそれ以前のループのことは覚えているだろう?それにしてもなぜ結晶を手放した?」

「そ、それは・・・」


「ほう?ハカセと名乗る男、アーガマン・ロイリー。やはりな。奪われていたのか。」

「やはりって?」

「最近のループでお前の行動パターンが変わらず、結晶を持っていなかったから失くしたのではとは疑っていたんだが。同時に毎回違う行動をとる男が現れた。お前の友人の知り合いだったな。」

「そいつだ!Dr.アーガマン!」

「そいつから結晶を取り返さなければ2人ともお終いだ。そいつのところに案内してくれ。」


僕の前に突然、行方不明だった父が現れた。彼は結晶の秘密を知っていた。

今までどこにいたのか?なぜ秘密を知っているのか?どうやって僕の記憶を取り戻させたのか?

疑問は尽きなかったが僕の予感は当たっていた。

「生きていてくれてありがとう。」

「なんだ急に。早くDr.アーガマンをとっちめに行こう。」


「ふふふふふ。彼、シノノ家の当主様はフィアンセとの礼拝に毎日通っている。記憶を持っていないのは明らかですねえ。」

自分の研究室でハカセ、いやDr.アーガマンは高笑いをしていた。

「龍の方も興味深いですねえ。全身の鱗は硬く、どんな攻撃も意に関せずといったところですが、目と口を攻撃しようとした時のみ強力な攻撃、つまり閃光・火炎放射・爆破・突風攻撃を仕掛けてきます。そこが弱点だと言っているようなものです。」

Dr.アーガマンは緑の宝石を撫でて言った。

「大人数で取り押さえて大砲を打ち込めば勝てるかもしれません。しかし彼の用意した20人では全く足りません。例えばこの帝都の全市民、5万人。それを動員できれば我々の勝ちは確実でしょう。まあ、」


「その内6割は命を落とすでしょうがね。

フハハ、フハハハハハハッッッツツツ!!」


僕と父はアーガマン邸の前にいた。十数日前にこの家を訪れた時ノブは簡単に回った。扉に鍵はかかっていない。

「敵はお前がループしたのを知らないはずだ。今日、一気に仕掛けるぞ!」

僕は頷く。

「Dr.アーガマン邸潜入作戦。11:30!」


「夜を超えて未来のその先へ!」

この時僕は知らなかった。敵の狡猾さを。異常さを。11:30、僕たちが潜入作戦を開始する直前、高級住宅街に爆音が轟いた。


世界が滅ぶまであと75日。

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