第11話 先輩からの情報
「クドラ山の件と関係があるかは分からないけど、思い出したことがあるんだ」
職場から離れた小洒落たレストランだった。
てっきりいつもの食堂だと思っていたので、レストランの前に着いた時は面喰らった。
「思い出したこと?」ルーロンが訊き返すと「ああ」と先輩が頷いて周囲を気にする素振りを見せた。
「1ヶ月前、編集室に王国軍兵士の妻と名乗る女性が来たんだ。旦那が不審な死に方をした。それなのに王国軍からちゃんとした説明がされない。調べてほしいと」
「そんなことがありましたっけ?覚えてないんですけど・・・」
「ああ、ちょうどお前は外に出ていた時だったと思う」
「その旦那さんて、ベッチャ大尉と一緒にクドラ山にいった兵士なんですか?」
ルーロンが少し前のめりになって訊くと先輩は首を振った。
「いや、違う」
「へぇ?」思わず間の抜けた返事をしてしまった。
「だからクドラ山の件に関係あるか分からないと始めに言っただろ。その旦那さんはクドラ山事件の三日前に亡くなったそうだ」
「三日前・・・ですか」確かに、あまり関係はなさそうだ。
「亡くなった原因はなんだったんですか?」
「軍務中の事故、と説明されたそうなんだけど、それが納得いかないらしい」
「何が納得いかなかったんですかね?」
ああ、とアサシガは頷いてから話を続ける。
「旦那さんは、その日は夫婦の何かの記念日だったので休みを取っていた。しかし当日の夕方、
「そしてそのまま・・・」
ルーロンが続きを言うと、アサシガは「うん・・・」と頷いた。ここで注文した料理がテーブルに並べられた。
「おっと」
両肘をテーブルについていたアサシガは身体を起こして椅子の背もたれに寄りかかった。
「よし、一旦休憩。食べよう」
「・・はいっ」早く続きを聞きたい。ルーロンは目の前の料理を口に詰め込んだ。クドラ山で食べた雑炊とは比べものにならないほど美味しい。
「ちょっと、もう少し上品に食べた方がいいよ」
アサシガにやんわりと注意された。
それから5分と経たずに食事を済ませたルーロンはアサシガの食事を終わるのを待った。自覚していなかったけど先輩の食事を凝視していたようで、途中でアサシガが苦笑を浮かべた。
「そんなに見られたら食べづらいよ」
「あ、すいません」
「先に言っておくけど、今の話はこれで終わりなんだ」
「ええ!どうしてですか?」
「ここまで話を聞いた編集長がその奥さんを追い返してしまったんだ。軍のやばそうな話に関わりたくなかったんだろ」
「そんな・・・」編集長の顔が勝手に頭の中に出てきたので、怒りの炎で焼き払った。
「その方の連絡先って訊きましたか?」
ああ、とアサシガが頷いた。
「教えてください。会って話を訊けるか連絡してみます!」
この際だからどんな話でも聞いてみようと思った。
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