コロナで帰省できず部屋にいたら夜に巨乳美女が来た話

闇コロ助

第1話

元旦は意外とテレビおもろくない。チャンネルを変えても変えてもクソみたいなのばかりだ。やはりこの国の放送作家は軒並みゴミばかりだな。


いつもなら年末は福岡にある実家に帰るのだが、今年はコロナで帰れなかった。ファッキンコロナ。無能な政治家もろとも滅びろ(ただし在宅ワークは延命を希望する。うんこ上司と顔を合わせる回数が減るので)。


こたつの上には金麦の空き缶が3つ。なんだか眠くなってきた。


あー、あと2日で正月休みも終わりか。


「ピンポーン」玄関のチャイムが鳴った。


こんな時間になんだ?前に来てたWiFiルーターの営業の野郎か?もしそうなら、正月早々に熱心なことだな。


「ピンポーン」もう一度鳴った。


うるせえな。殺すか。


よっこいしょと立ち上がり、インターホンに出た。


「あ、すいませーん。エミでーす」


デリヘルだった。まさかの展開に笑いが込み上げる。「え、デリヘル?」思わずおれは尋ねた。


「え、違います違います。こちらミヤグンニさんのお宅ですよね?」


なぜおれの名前を知ってる?酔ってるあいだに誤ってデリヘルを呼んでしまったのか?


「よ、要件は何でしょう?」会社にかかってきたテレアポを断るときの感じで、いたって冷徹かつ事務的な感じで、おれは尋ねた。


「えー、なんか冷たい。こないだ合コンでいっしょだったエミですよ。さっきまで友達と呑んでたんですけど、おうちこの辺だってきいたから、遊びに来たんですー」


合コン?あれか?この前トシヤたちと行ったあれか?ってか、おれ住所教えたのか?


ダメだ。何も思い出せない。


おれは考えた。普通ならこんな時間に知らない人が尋ねてきたら、シカトがベスト。


しかしだ。もし本当に知り合いだったら、せっかく遊びにきた友人を無下にしたと非難され、後日おれは憂き目に合うかもしれない。


ましてや相手は女の子。おれは今めちゃくちゃ彼女が欲しい。ここで汚点を残せば、彼女をつくるチャンスのほとんどを潰してしまうかもしれない。


「あ、エミちゃん。ごめんごめん。すぐに開けるわー」


オートロックをインターホンのボタンで開ける。本当に知らない人なら、玄関を開けなければいいだけ。


「ピンポーン」再びチャイムが鳴った。


インターホンには出ず、おれはドアの覗き穴から外を見た。


巨乳の美女がいた。


おれは玄関を開けた。


「いやほんとにごめんねー」酒のにおいがする。ついさっきまで呑んでたのは本当らしい。


「いいよいいよ。おれも暇してたし。ってかよく住所覚えててくれたね?」


「覚えてるよ!だってあの日のメンツで、ミヤグンニくんがいちばん推しだったもん」


「お世辞上手いなあ」


「ほんとだってば!」


「ほんならありがとう。あ、ってかごめん。コートかけるから貸して」


「ありがと」


エミは赤いウールのコートを脱いだ。その下にはクリーム色のハイネックセーターを着ている。この身体でよりによってハイネックか。


「寒かったら言ってね」


「ありがとう。でもお酒のんだから暑くて」


そう言ってエミはセーターも脱いだ。下には黒のロンTを着ていた。それも脱いだ。エミの上半身は下着のみとなった。


「ねえ、セックスしよ?」


おれはエミとセックスした。上気したエミの身体からは、甘い匂いが立ち上る。行為の最中もエミはたまらなく可愛かった。


が、なんとおれは途中で萎えてしまった。


喘ぎ声がセイウチのようだったからだ。


「あおん。あおん」


いや、エミの声はセイウチそのものだった。


幼いとき、海洋学博士の父から動画を見せられた。動画には、北極の大地でゆっくりと動く大きなセイウチが映っていた。


ときおり鳴いたその声が、いま目の前の美女から発せられている。


エミに乗っかられながら、おれは仰向けに天井を見つめた。


親父とおふくろ元気かな。


明日、電話してあげよう。【完】

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