第2話 強く儚い者たち

(1)灰

「ねえ、風間くん」

 彼女の、白い髪が燃えていた。

 僕にはそう見えた。

 夕焼けは、全てを平等に照らしている。川の煌めきも。鉄橋も。情けなく口を歪める、僕の姿も。けれど何故だろう。夕陽を背負う彼女だけは違って見えた。赤く塗り潰された彼女の姿は、胸を裂かれるような苦しみを招いた。

 どうしてそう感じるのか、僕自身にも分からない。

 堤防の桜が、真紅の花弁を風に舞わせた。

「これは、貴方が望んだことではないの?」

 揺れる瞳が僕を捕える。捕えられた僕は、目を逸らすことしかできなくなる。

 彼女の、白い髪が静かに燃えていた。

 鮮血と炎の色に塗れて、静かに燃えていたのだ。

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