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 アメリは姉のようだった。剣で一戦交え、身長の低さを補った動きをしたら、泣いていた。

 その涙を見て、女の子なんだと思い知らされた。姉だと、どこか強さを感じられて、対等にいても良いんだと思っていたから。静かに流れていた涙は、守らなきゃ、傷つけてはいけない。後悔と決意で、咄嗟にした行動は手を握ることだった。


 怪我をさせた覚えはないし、当時のことは、悔しさからくる涙じゃないかと、今は思ってる。


 街に広がる、重みのある音。鐘が鳴った。


『シオン、お話があるんです』


 一歩々、間を詰めながら、胸元の紐を緩める。


「話って? いつも通り一戦するんだろ?」

『私のことをどう思っているのか、知りたいんです』


 紅潮した頬、吐息。


「どうっ……て」

『幼馴染みで終わりなんですか? それ以上は、駄目なんですか?』


 ちょ……ちょっと待て! 何でそんなに寄ってくる!? 俺から行けば冷めた目をするのに、何でだ!!

 アメリは俺の手首を握る。『シオンに対する私の思い、気づいて下さい』


 は、離せっ!! それ以上引っ張るな! 胸に当たるだろうがあぁぁ!!



「目、覚めた? 春祭から二日ほど眠ったままだったわ。痛いところは? 大丈夫?」


 部屋の構図からして、男子寮。そこに何故、医務室の先生が?


「顔を赤くして倒れたって聞いたわ。その場に居たのは、女の子が三人。何をしてたか覚えてる?」


 どういう状況ですかそれは。


「友人とふざけ過ぎたのは覚えてますけど、女子が三人っていうのは?」

「そう、分かったわ。眠ったままだったし、ほんとうに痛いところはない?」


 先生がベッドに腰掛けた。ギシッ、鈍い音が二人しか居ない空間に広がる。足を組み、身体の重心が俺の方へ向く。目線は谷間へと自然に落ちていった。


「鼻血、出てるわよ」


 言われて鼻を押さえた。が、指につくものは、何も無かった。


「うん、どこも悪くないわね。今日は学園は休み。元気があるなら遊んできなさい」


 何事も無かったようにスッと立ち上がり、寮から出る医務室の先生。寝起きの生徒になんてことをするんだ。全く。……先生、同い年なら、チャンスありますか?



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