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静かに、且つ、唐突に。イベントはやってくる。
誰も見ていないのを確認して、校舎と調合塔の間。何かあったときの逃げ道、非常階段には、見知らぬ男女が居た。
「あのっ、ずっと前から、好きでした! ワタシと、付き合ってくださいっ! え、僕と? ……なーんて言ってるのかね」
「先生のところへ提出物を出して戻ってきたら、シオン、君は何をしているの? 寂しい人だな」
「最後の言葉は謝れ」
哀愁漂う表情をして、マルテは俺の肩をトントン叩いた。慰めてない。余計に虚しい。
「例のドリンクは? 誰か試したか?」
「男子寮にあるよ。シオンが飲まないといけないんでしょ? 勇者が飲むらしいって、噂されてたけど」
「ちょっと待て、俺が勇者? どういう意味
だ」
「覗きをしたからじゃない?」
だったらお前もだろ。そんな称号いらねーよ。
石で整備された道なのに、足は重かった。得たいの知れないドリンクを飲まされる恐怖。不安が具現化されたような、ねっとり重い足の運び。
寮へと繋がる扉を開く。祭りの空気にのまれ我を失った群衆が、コップを片手に待ち構えていた。
事前に計画してあったのか、難いの良い男が俺の腕を掴み、後ろへまわす。必死に閉じていた口がコップを使いこじ開けられ、緑のドロッとした液体が喉へと差し掛かる。反射的にゴクッといってしまった。変な味がしても困るが、無味なのも、それはそれで──…
「おーい、大丈夫か?」
誰の声だ? 急に静かになるし。身体に何か異変でも起きたんじゃ──、だめだ、かんがえるの、めんどくさい。
「んー、特に副反応は無さそ……う? ちょ、おい! さっき言ってた量と違うんじゃ!?」
「あ、ほんとだ、多い。でもまぁ少しだけだし……?」
「君、大丈夫? 頼むから何か言って」
肩を掴まれた。グラグラ揺らすな。あつい。そとの空気、かぜに当たりたい。
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