第60話 小真希は狩人に。マリウスは家具職人になる。
回復
レダは村長のリハビリがてら、簡単な昼食を教えてもらうと言った。かなり嫌そうで、落ち込んでいるのが丸わかりだ。
(昼食って、食べられるモノだよね? )
そこはかとなく不安だが、村長を信じよう。
小真希は朝から張り切ってベッドの準備を。と、思っていたら、マリウスがケイロンを助手に板を切り出していた。
「簡単なベッドくらい、造ってやる。剣士になる前は、家具職人だったからな」
「うん。見習いな」
見栄を張ったマリウスを、ケイロンが混ぜっ返す。
「板がこれだけしかない。ベッドの枠しか造れないから、コマキィは
小山になっている板材を顎で示して、マリウスが注文を出してくる。これは、レーンから買い取ったらしい。
なんでも持っているレーン。さすが行商人。
「いいよ。行ってくる」
お気軽に返事して、小真希は走り出した。
まずは樹海にいる魔獣を探索して、難しい顔になる。
「いっぱい居過ぎて、どれが
『ふぅっ……【探索】に【鑑定】を組み込みました。はっぁぁぁ』
投げやりな応答に、冗談が過ぎたと反省。心から謝った。
大小様々な赤点が消えてゆき、河の対岸に点々と赤の集団が残る。
全体で見れば大きな群れだ。河下に向かって移動している。
個別に固まった群れの数は多くない。数頭のコロニーで形成され、それぞれが独立した形で、大きな集団になっている。
「もしかして一頭を狙ったら、全体が反応する? 」
走りながら【鑑定・探索】で
「襲われてる? 」
対象が目まぐるしく動き始め、小真希も混乱してくる。
「なんか、チラチラするっ。えぇっと、
『了解しました』
今度はすんなりと色が変わる。オレンジの群れの三方向から、黒の単体が五頭ほど動き回って撹乱している。
鑑定では、
「チャンスかも。どっちも、いっただきまーす」
小真希に、猪突猛進のスイッチが入った。。
双剣を抜き放ち、フルで
襲われる
『ククク。やり過ぎて、
精霊も絶好調で、眼下の狩りを見下ろしていた。
******
「で? これは、なに? こんなに必要だったの? 」
「えっとぉ はい。 ぃや、ちが ごめん なさい」
背中を丸めてモジモジする小真希に、眉間の縦皺プラス斜めに首を傾げたソアラが、腕を組んだ。
「程々を、覚えようね。来年の分も、残そうよ」
抑制の効かない子供に、母親が言い含める感じだ。もはや、怒るのに疲れたか? 深淵からの怒りは感じるけれども。。
「ごめん わかった 」
いつものガンガン怒りより、心に堪える小真希だ。
悪魔の笑いを響かせて、空中を舞う精霊が憎たらしい。
(ちょっとくらい、止めてよね。もぅぅ、まった怒られたじゃん)
ソアラの怒りは、あまり伝わっていない。 かもしれなかった。
「終わったかぁ? 昼飯食ったら、手伝ってくれー」
マリウスの呼びかけに助けられて、元男子部屋洞窟へ行く。
背後で肩を落とすソアラは、そっとしておこう。
村長監修の昼食は、焼いた魚をベースにしたスープ。それに、ビスケットのようなサクサクパン。
頑張ったレダは、腰掛けて放心していた。
料理って、体育会系だったのだろうか。お疲れ様です。
「コマキィ。カゥルゥの皮な。湿らせて、薄ぅく延ばせるか? そこまでできるんなら、今日中に、みんなのベッドが完成すんだよ」
マリウスが言うには、カゥルゥの皮を
幌にするなら表面を撥水加工し、四角く整えるのだが、これはベッド。撥水加工はしない。
小真希なら収納の中で加工すれば、鞣す工程も省ける。
「わかった。やってみる」
型枠は、人数分出来上がっていた。残った造りかけは客室のだ。
レーンが来ても、野生的な部屋ではなくなる。
『加工完了。一枚づつ取り出し可能です』
(さすがです。ありがと)
夕方まで手伝って出来上がったベッドを、程よく乾燥させる。
「ぁ。ベッド三台は、屋根裏へ持っていくね。私たちの部屋にするから」
ソアラもレダも、屋根裏を気に入ってくれた。
今は無理だが、布で間仕切れば個室風になるのが味噌だ。
元の女子部屋へは、村長とマリウス、ケイロンが移る。
納戸部屋も、四人なら広くなるだろう。
「今度レーンさんが来た時に、壁の板材を買って、みんな個室にする予定だ。任せとけ」
なんだかんだ言って、マリウスは木工が大好きだなと思った。
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