第32話 剣を打つ(改)
妖精やら精霊が消え、白昼夢を見たような心持ちになる。
若干一名はネタを知っているので、居心地が悪い。
「おまぇ……そっかぁ」
「コマキィって……そうだったの……」
何やら勝手に納得している面々に、曖昧な苦笑を返す。
「えーっと。戦略的 ナイショ? で、お願いします です。ぁはは……はぁ」
戦略的ナイショってなんだよ。と、自分で言って遠い目になる。
「どの地所も荒地なのに、道だけはきっちり整備されてるとか、どんだけ凄い
しみじみと言うリムに、そこはかとなく罪悪感が湧く。
「大地の大精霊の加護持ちでなけりゃ、ここまでは無理だ」
『おぉぉ、我とあやつを間違えて勘違いも甚だしいが、この
おちょくるのが大好きな精霊は、ツボにでもハマったのか大変ご満悦だ。
皆が深く深く勘違い……理解してくれて、どうすれば良いのやら。。
(とにかく忘れて突っ走ろう。そうしよう)
慎重な先送りも、時には良いかもしれない。
「良いんだろうか……良いんだよね」
とっても不安な小真希だ。
誤解か理解か判らない決着で終わり、夕方がやってきた。
食事は野外の焚き火で、串に刺した肉やら魚やらを炙って終わらせ、早いうちに分かれて
精神的にとことん疲れたまま、開拓地の一日が終わった。
長旅に疲れたソアラは、
『面白かったのう! 明日はどうしてやろうかっ』
ご機嫌で浮遊する精霊を鼻で笑って放ったらかし、籠から出したアレに
ソアラの隣りに転がるなり、ストンと意識が落ちる。
時々、もっとくれとアレに
(寝かしてぇぇぇ! )
******
俺様男と美少女と精霊のじいさまは山へ薬草取りに、年長者と美少年二人は川へ魚取りに、子育てで睡眠不足は、炉の前であくびをかましていた。
だんだんと語録が荒んで、やけっぱちになっていくような。。
「ねむい……」
大自然に触れた
自由だねと、あくびを落として両頬を叩いた。
『
アシストの
鍛治小屋の壁は耐熱煉瓦製で、炉は更に頑丈な二重構造だ。
今は鍛治
炉の裏。小屋の外には、熱を利用した風呂の設備もあった。
鍛治で汗まみれになった後、炉の熱で焼けた外側の壁を利用して、浴槽の水を沸かす仕組みだ。
(最高よねぇ)
貴重な砂糖と塩を混ぜて冷やした水を、乾いた喉に流し込む。
炉の輻射熱で、汗が噴き出してきた。
自作のポ○リス○ッ○もどきは、あまり美味しくない。
熱中症対策にガブ飲みしながら、剣を鋳潰して鋳塊に戻す作業を始めた。
まずはホアンの長剣からだ。
朝に預かった二振の剣は全体に
長剣は細かな装飾と、装飾に紛れた付与魔法陣の所々が欠け落ちて、本来の機能を失っている。
ミズリィの大剣も大きく欠けた個所が多く、せっかくの強化陣が発動できなくなっていた。
(どんな使い方をしていたのやら……)
ウェドの長杖も傷や欠けが目立つし、
杖本体は
中が空洞の
繊細な作りだが、普通の剣と打ち合っても、相手を破壊するくらいは頑丈だろう。
内側に浮遊の魔法陣が組んであり、カットが美しい球形の魔石が浮いていたはずだ。それが大小三個に割れ、本来なら中空に浮いている物が、今は無惨に落ちている。
魔石は先に加工するので、取り出しておく。
内部の浮遊魔法陣を刻み直したあと、代替えの魔石と入れ替えるしかない。
「確か、風属性の魔法使いだったっけ。
この辺りに
「魔獣を探してる
もう一本のリムの短杖は、規定よりもやや長い。
大きさで言えば小剣と同じで、ウェドの長杖に匹敵する希少な金属杖だ。
周りを囲った魔法陣から魔力を吸収して、魔石に溜め込むタイプだ。
何か硬いものを打撃したのか、先端から魔石まで抉れる勢いで亀裂ができていた。
これも欠けを補修するのに、魔石を取り外す。
『どちらも強化と属性補助の魔法陣です。剣も杖も、データはすべてコピー済みです』
毎度アシストの補助に、いっさい抜かりはない。
今は補修しない長杖と短杖を
耐熱耐衝撃のグローブを嵌め、
自然に冷ますと時間が掛かるため、時戻しならぬ時進め? で、冷まして行く。
時を戻せるなら進めるのもできるだろうと、やってみたのだが、どうやら小真希はチートらしい。今更感は否めないが。。
魔石も時戻しでと試したが、ウェドとリムの魔石は、なぜか反応しなかった。
次は
こちらは少々時間が掛かるので、待つ間に
「ぁはは……結構あったのね」
小山になったそれをみて、苦笑と罪悪感。。
魔石に、奪った
刹那のあいだ瞑目し、無駄にしないと感謝を捧げた。
三つに割れた風の魔石のうち、一番大きい欠片を
「ウェドの魔石を加えて加圧融解。
小真希の広げた両手の間に、拳大の七色の球体が浮かんでいる。鑑定すれば、聖を除いた七属性魔石と読み取れる。
「よぉし。もうひとつ小さいのを創って、リムの短杖もコレにしよう」
取り出した
元々の水の魔石と並べて連動するように魔法陣を組めば、今までよりも取り回しが便利になるはずだ。
端が欠けた水の魔石は研磨し、七属性魔石を嵌め込んで接着面を
濃い藍色の水の魔石と七色の七属性魔石で、ダルマ型になった魔石を手のひらで転がし、ニマリとした。
「ついでに魔石を取り巻く魔法陣も、可愛らしくしよう。そうしよう」
失言をちょくちょくするリムに、ちょっとだけ意趣返しする。
似た者同士、大人気ない小真希だった。
魔石を収納し、炉の加減を見る。
「よしよし」
さっきと同じ工程で、鋳型へ溶けた金属を流し込む。これは傍に除け、ホアンの鋳塊を
「さてさて、始めますか」
炉に据えた鋳塊が扱いやすい状態になるまで、じっと見続ける。
真珠色の淡光の中、黒々と見えていた鋳塊は色を変え、尖った角が微かに湾曲した。
素早く掴み出した鋳塊の表面を、白熱した炎が舐める。
剣と同等の硬度を持つ槌で、
何をどう打てば良いのか、支援
「おぉ」
硝子を打ち合わせたような、涼やかな音に感動する。
これが
五回ほど打てば、金属の表面が暗くなる。
もう一度炉に還して、最良の状態を待った。
「硬いね」
やはり希少な金属は気難しいみたいだ。ワクワク感に、口角が上がる。
根気よく粘り強く、小真希と剣の駆け引きが始まった。
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