第7話 領主ローレンス伯爵との会談

次の日の朝、シズクがカズマの部屋に来て

「カズマさん。起きて下さい。朝ですよ。」


「もう少しだけ....。」


「ダメですよ。カズマさん。朝ですよ。」


「雫...。もう少しだけ.....は! すまん。シズクさん。」

カズマは我に返って目を覚ました。


「おはようございます。朝御飯出来ていますよ。」


「ありがとうございます。着替えて着ますね。」

カズマは一階の大広間に行き朝御飯を食べていると


「さっき、シズクって呼び捨てで言っていましたけど?」


「ああ。それは昔死んだ妻の名前がシズクさんと同じ名前だったんだ。」


「そうだったのですね。私にも彼氏は居たのだけど死んでしまったのです。」


「その彼氏の名前は?」


「クリス=ロズワールと言います。」


「そうなんだ。お互い親しい人がいない同士って事か。」


「そうなりますね...。」

2人の会話が少し暗くなりそうだったので、カズマは話題を変えた。


「今日はギルドに行ってシズクさんの冒険者の再登録をしますよ。その後は依頼をしようと思います。」


「はい。それで構いませんわ。」

2人は朝食を食べてから冒険者ギルドに行った。

ギルドに着いてすぐに選任担当のヘレンさんが


「カズマさん。先日の「漆黒の爪」討伐の件で領主様がお会いしたいと言っています。断りは出来ません。あしからず。後領主様との繋がりがあると面倒事の対処が出来ますよ。」


「まあ。そういう事なら領主様の所に行くとするか。それと先にシズクさんの冒険者登録をお願いするよ。」


「わかりました。シズクさんは本当ならGランクから再登録ですが、支店長から特別にCランク登録になりましたので。」


「私がCランクになれるのですか?」


「はい。支店長がカズマさんならシズクさんを選ぶと思っていたみたいで、何を考えているのかわからない人であります。」

とヘレンさんは呆れ返った言い方をした。


あの支店長め! そうなる事を予想していたのだな?


「それと領主様に会う前に支店長が呼んでいますので直ぐに来てくれますか?」


「分かった。」

2人は支店長室に向って行った。

支店長室には支店長のローズマリーとカズマとシズクが座っている。

先にローズマリーが話を切り出した。


「今から領主宅に行くのだろう?」


「そうだが? 何があるのか?」


「帝都のギルド総代からの報告の内容と私の独断での調査で気になっている事があってね。どうやらロシーナが帝国から独立を考えているみたいのだよ。」


「その様な事になっているのか?」


「説明するとここ3か月前にカズマ君が助けたエリーゼ様の件だけど、「漆黒の爪」に依頼したのが教会の司祭と領主様が仕組んだらしいのよ。そこでエリーゼ様から極秘に調査したらロシーナを独立しようと思っているらしい。」

と説明する。一応帝国の状況も併せて説明したのだった。


今帝国は帝国陛下が戴冠して新しい王として息子二人の跡継ぎのどちらに継承する話になっている。そのお陰で王子二人の継承争いが激化しているのだ。

第一王子は帝国から西の地域の貴族から支持を貰って、第二王子は東の地域の貴族から支持を貰っている。ロシーナは中立の立場なのだが、独立して何方かの王子の派閥に入ろうとしていると帝都から報告があったのだ。ローズマリーも調査した結果、領主と教会が組んでいるのがわかり、あとその上に黒幕がいると考えていたのだった。


「そこで相談だけど、ロシーナ地下迷宮の調査をお願いしたいのだけど? もちろんシズクさんと一緒によ。」


「どうして地下迷宮の調査なんだ?」


「それはね。前に地下迷宮の調査の依頼をシズクさんがいたパーティが言ったの知っているでしょう? その顛末もシズクさんから聞いていた思うけど?」


「いや初めて聞いたけど。そうなのかシズクさん?」


「はい。」


「なあんだ。それじゃあ説明するわね。シズクさんがいたパーティ「紫炎の翼」に領主様直接依頼でロシーナ地下迷宮の調査があって確か20階層でシズクさん以外のメンバーが行方不明になってたのよ。その事件があって今地下迷宮は封印されているよ。今回は私の独断で調査を貴方達にお願いしようと思っているのよ。」


ローズマリーが説明している間、カズマはシズクの顔を時々見ながら説明を聞いていた。シズクの顔が沈んだ顔になっているのがわかった。

そこでカズマはローズマリーに


「地下迷宮は俺一人で行く。」


「どうしてカズマさん一人で行くの?」


「シズクさんだと多分足で纏になると思ったからだ。」

カズマ冷静に考えて言ったのだ。


何か嫌な予感がする。シズクさんを巻き込みたくないからな....。


「私も行きます。」

とシズクは答えたがローズマリーは


「やっぱ。シズクさんには無理だと思うよ。今回はカズマさんにお願いするわ。シズクさんには他にお願いがあるのよ。」


「シズクさんにお願いとはどういう内容かな?」


「シズクさんには私と迷宮の入り口に待って欲しいのよ。他の誰かが入らない様にするためにね。」


「つまり。他の誰かが迷宮に入ろうとしているってことか?」


「その通りなのよ。あそこには何か重要な事が隠されている見たいなので。」


「領主と司教の関連の事か?」


「そう思っていた方が間違いないわ。」


「分かった。シズクさんはそれでいいよね?」


「はい......。分かりました....。」


「明日に地下迷宮に潜るよ。朝早くでいいのか?」


「朝、ギルドに来て欲しい。そこで私と護衛の冒険者と一緒に行ってもらうわよ。」

とギルドでの相談は終わってギルド内で昼食を食べてから2人はギルドを出て領主宅に向った。

領主宅は貴族区画の中央にあり貴族区画には誰かの紹介状が必要になる為、支店長は領主様宛の紹介状をもらって貴族区画にいる衛兵に渡して中に入った。

領主宅に着くと


「大きいなあ。」


「大きいですね。」


2人は大きい屋敷を見ていると護衛騎士がやって来て


「ここは領主様のお屋敷であるぞ。用件がなければ帰りたまえ。」


「俺達はその領主様から招待されて来たカズマと言います。隣の女性は俺のパートナーで」


「シズクと言います。」

カズマは支店長の招待状を護衛騎士に見せた。


「確認した。入っていいぞ。領主様に粗相をしないようにしてくれよ。」


「分かりました。」

2人は屋敷に入っていくと、一人の老人が立っていた。


「カズマ様ですね。私はローレンス家の執事でハイゼンと申します。カズマ様のお隣の方は?」

と執事のハイゼンと話していると見かけた事がある二人がやって来た。

近衛騎士団長のアンジェリカと領主の娘エリーゼだった

「ハイゼン殿。どうしましたか? 貴方はカズマさん。」


「これは、アンジェリカさんとエリーゼ様。お久しぶりです.

 実は領主様からエリーゼ様の件でお礼を言いたいと言われまして。」


「そうだったのですか? 折角お礼を言おうと思って待っていたのです。それではハイゼンご案内をお願い出来ますか?」


「分かりました。お嬢様。」


「ありがとうございます。エリーゼ様。」

ハイゼンを先頭にカズマとシズク、あとアンジェリカとエリーゼ嬢と一緒に領主の部屋に着き、


「お父様。エリーゼです。冒険者カズマさんが来ました。」


「うむ。入っていいぞ。」


「わかりました。」

カズマ達は領主の部屋に入るのだった。


ロシーナ領主ヘルマン=ローレンス伯爵が席に座っていた。

50代の少しニヒルな男はカズマ達を見て


「カズマと言ったな。娘のエリーゼを助けてくれてありがとう。私がヘルマン=ローレンスだ。」


「俺はカズマと言います。隣は相方のシズクと言います。」


「シズクです。お久しぶりです領主様。」


「あのパーティの生き残りの女性か?」

ヘルマンはシズクを見て何故かにやりと笑った。


「カズマは今冒険者なのだな?」


「はい。」


「エリーゼを助けたお礼をしたいのだが?」


「それならば、一つ聞きたい事があります。」


「言ってみるがいい。」


「孤児院は領主様の管理をしていると思いますが?」


「私が教会経由にて孤児院の援助金を出しているのだが?」

とヘルマンがそういうとシズクが

「先週、教会から通達が出まして孤児院の援助を打ち切られました。」


「なんだと?」

驚くヘルマン。


「私から教会に確認してみるぞ。援助金を出すように言ってみる。」


「ありがとうございます。」


「この後夕ご飯でもどうかな?」


「明日、朝早くからギルドの依頼があるので失礼させていただきたい。」


「そんなあ。カズマさん。残念です...。」

とエリーゼが少し悲しい顔をしていた。


「エリーゼ様。次にお会いする時はご馳走をしただきますので。」


「絶対ですよ。」


「わかりました。」

と二人は領主宅を後にする。

その時、アンジェリカがカズマに小声に言ったのだった。

....領主様と教会には注意してね。シズクさんを狙っているかも知れないから....。


自宅に着くと二人は交互にお風呂に入って夕ご飯を食べて明日の内容確認をしてから各々の部屋に入って寝るのだった。





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