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「タイチョー、南に砂煙! よろしく頼んます!」

「おう、任せろ!」


 馬から降り、隊から離れてエグジーだけ駆けていく。

 南、南……アレか。あいも変わらずカラフルなカボチャパンツのサボテン戦隊カクタスマンがこっちへ走ってきている。カボチャなのかサボテンなのかハッキリしろ!

 数は五体。ということは、まだ番組が始まってから一クールくらいかな? 二クール目に入ると、新メンバー加入で人数が増えていくパターンが多いからな。

 そういえば、こいつらは移動用のビークルを持ってないんだな。合体して巨大ロボになるやつ。

 持ってるならぶん取って俺のものにしてやるのに。サービス精神の足りない奴らだ。

 そんなことじゃ少子化の波の押し寄せる玩具業界で生き残っていけないぞ! アピールが足らん!


 それはそれとして……うん、いつも通りだな。赤が一番後方で、それ以外が突っ込んできている。

 ちょっとは工夫しろよと思わないではないけど、こいつら、一応植物だからな。そんなに急な進化や変化はできないんだろう。

 むしろ、これほど動けるようになるまでよく進化したもんだと褒めてやりたい。役割分担もできてるしな。

 いや、進化じゃないのか?

 魔法がある世界だからな。発生した時点でこういう生態だったという可能性もある。ファンタジーは侮れない。


 なんて考えながらも、いつも通りの円軌道でサボテン共を誘導してひとまとめにする。うむ、いい感じの団子になった。


「グッバイ、ヒーローズ!」


 いや魔物モンスターだけど。

 いつものスネ毛槍を投擲! 蒼いエフェクトを曳いた槍が赤サボテンの胸を貫く!

 ……胸? サボテンの胸ってなんだろう? あの針は胸毛? 胸へスネ毛を移植?

 おっといかん! くだらないことを考えてないで、すぐに退避しなければ! 爆発に巻き込まれてしまう!


 ドカァーンッ!


 よし! いつも通り、赤サボテンの爆発に巻き込まれて他のサボテンも誘爆した! カラフルな五色の煙幕が綺麗にあがる。


 ああ、いつも俺が全部始末しちゃうから、学習した個体がいても生き残れないのか。だから戦法に進歩がないんだな。納得。


「タイチョー、お疲れさんです。相変わらず見事なお手並みっすね!」

「おう、ありがとよ!」


 隊に戻った俺に隊員がねぎらいの声を掛けてくる。こいつらは平民だから、言葉遣いがかなり適当だ。

 まぁ、俺としてもそのほうが気楽でいい。貴族相手の堅苦しい会話は肩が凝る。


 それにしても、俺が隊長ねぇ。ガラじゃねぇよなぁ。

 まぁ、友好使節団を派遣するためには中継地が必要で、その建築のための物資や人員の輸送に護衛が必要というのは分かる。ここ、サボテンが湧くからな

 女勇者ナオミはその使節団の主役で準備に忙しいし、のじゃロリ賢者エリザベスロリ先輩アマニータと親睦を深めるのに忙しい。尊い。

 手が空いていてサボテン戦に長けているのが俺だけだからって理由なら、まぁ、仕方がないのかもしれない。

 中継地建設が終わったら、この護衛隊はそのまま使節団の護衛隊になるらしい。

 『使節団なのに平民ばっかでいいのか?』と思ったら、高貴なお貴族様はそんな危険な仕事はしないんだそうだ。いいゴミ分(ご身分)ですね!


 まぁ、こういう時間も悪くない。

 最近は各方面の進捗が、無いわけじゃないけど早くもない。なんだかちょっと停滞気味だ。

 いや、それぞれの分身はそれぞれで忙しく働いているんだけど、早急な対応が必要な展開にはなっていない。


 のじゃロリ賢者とロリ先輩による惑星崩壊の原因探しは停滞しているし、皇国侵攻もまだ進捗らしい進捗はない。

 皇王の三男であるお嬢様の頭の中は相変わらず


『殺殺殺殺殺殺殺殺殺……』


だし。

 いや、極稀に


『殺殺殺殺殺猫♡殺殺殺……』


になってることがある。もうちょっとで懐柔できそう。

 ……猫を殺♡って意味じゃねぇよな? 大丈夫だよな?


 もっと可愛いアピールをすれば、頭の中を猫一色にすることができるはず。猫一色になった時点で、もはやそいつは猫様の奴隷! 眷属も同然! もらったな!


 ブタ領主ボーアのところと脱ぎ魔シャリムのところは、順調に農業や漁業、商工業を発展させている。

 ゆくゆくはこのふたつの領地を中心とした、大きな経済圏が出来上がるかもしれない。

 不本意ながら、例の宗教も着々と勢力を拡大している。教義が緩いからなぁ。

 宗教と経済、両面からの支配……でも、その宗教の御本尊であるロキシーは全く関与していない。なんで? 偶像アイドルだから?


「タイチョー、南東にまた砂煙!」

「あいよ!」


 また来たか。さっきの爆煙でおびき寄せちゃったかな?


 大陸東部の探索にも目新しいものはないし、それどころか領域支配者エリアボスにも遭遇していない。ただ散歩しているだけになっている。

 走竜の狩り場にいた大顎魔王みたいに、俺から逃げてるのかもしれない。どうにか捕捉する方法を考えないと。

 またローラー作戦でいくか? 面倒だけど、それが確実だよな。


 まぁ、焦っても仕方がない。物事というものは、進まないときはどうやっても進まないものだ。

 焦るより、何が起こっても大丈夫なように準備をしておくほうがいい。建設的だ。


 ということで、中継基地建築だ。

 俺も【大工】技能スキルは持ってるから、護衛だけじゃなくて建築にも参加したほうがいいかもしれん。早く建築できれば、その分早くこの件は終わる。

 けど実のところ、この使節団の件は急ぐ必要がないんだよなぁ。


 王国『仲良くしましょう』

 俺『いいよ』


 で終わる案件だし。重要度も高くないし。

 いや、王国にとっては重要なことなのかもしれないけどさ。


 ドッカァーンッ!!


 今度は七色だ。銀と紫が混じってる。もう三クール目も終盤かな?


 目下のところ、俺にとって急ぎの案件は惑星崩壊の原因究明と……教国への対応かな。


 教国は明確に敵だ。俺か奴らか、どちらかが滅びる未来しかない、生存競争上のライバルだ。共存は不可能。

 まだ教国に大きな動きはないけど、着実にこちらへの侵攻の準備を進めている。


 ふむ。別に、向こうから攻めてくるのを待ってやる必要はないか。敵対関係にあるのは間違いないんだし。

 今は、手が空いているわけじゃないけど忙しくはないし、丁度いい頃合いかもしれん。


 よし、攻めるか! 我が心の友、猛獣大魔王の弔い合戦だ!


「タイチョー、また南から! 今度は砂煙がデカいです!」


 あーもう、次から次へと! ちょっとゆっくり考えさせろ、このサボテン共!

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