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「でな、儂は言ってやったんじゃよ。『それでは世界で二番目じゃ』とな」

「それは痛快ですの。そこまでズバッと言われたら、相手は立つ瀬がないですの」

「エグジー、そのさくらんぼ食べないなら貰えない? 好物なの」

「ああ、どうぞ」

「ありがとう! レロレロレロレロ……」


 あー、平和だなぁ。

 三回目のロリ会談なんだけど……なんだこれ? 緊迫感の欠片もないんだけど?


 いや、ロリ先輩アマニータのじゃロリ賢者エリザベスが仲良くなるのはいいんだよ。美味しいお茶とお菓子を摘みながら他愛もない話に花を咲かせるロリふたり。それはいいんだ。尊い。

 話に混ざれない女勇者ナオミがお菓子を貪るのもいい。食べすぎて太らないようにな?

 今日はマイフレンドのオオカミワンコたちが周囲を警戒してるから、ユニコーンアホうまが近づいてこれないのもいい。ありがとうワンコたち! 大好きだ!


 けど、肝心の惑星崩壊の回避についての話はまったく進展していない。

 いや、前回のロリ会談ではあーでもないこーでもないと話し合ってたんだけど、どの説も確証を持てないってことで手詰まりになってしまった。

 それでこの第三回では、一度全部忘れて別の可能性を探ろうって話になったわけだ。

 その結果がこの単なるお茶会。忘れすぎじゃね?

 まぁ、いいんだけどさ。ロリ間の親睦が深まるなら。尊い。


 ちなみに、今日のお菓子はプリンアラモード。ヤギ乳のミルクティーでどうぞ。

 皇国侵略をスタートさせて何が良かったって、玉子が手に入るようになったことだよな。おかげで食生活レベルがかなり向上した。

 プリンはキキのお気に入りだから、かなりの回数を作った甲斐もあって、クオリティはなかなかのものだと自負している。コツは裏ごしと、少し寝かせてから加熱すること、予熱を利用することだ。

 でもって、今日はシャリムのところにマンゴーっぽいのとアメリカンチェリーっぽいのが持ち込まれたから、それらとヤギ生クリームを使ってプリンアラモードを作ってみた。見た目も味も自信作だ。ちょっと黄色が強いけど、美味しいからいいのだ。


『アタシだけ食べられないですの。不公平ですの』


 と、ロリ先輩は不満タラタラだったけど。しょうがないよね、正体は怪人キノコ女だもん。枯れ木でも舐めてろ。

 そう言う俺はマメ男だけど。アレ? 大魔王なのに俺のほうが弱そう?


 ロリが戯れているのは目の保養なんだけど、惑星崩壊は刻一刻と近づいてるんだよなぁ。

 まぁ、焦ればいい案が出てくるってわけじゃない。ここは見守るしかないか。目に優しい空間で癒やされよう。


「でな? その時のひとりが言うんじゃよ。『別に倒してしまっても構わんのだろう?』とな」

「あらあら、典型的な当て馬のセリフですの。アタシなら恥ずかしくて六回は死んでるところですの」

「ねぇエグジー、これ美味しかったわね。おかわりって貰えないかしら?」

「わかっタ。少し待っていロ」

「わっ、びっくりした!? 貴女も相変わらず気配が無いわね」

「メイドだからナ」


 メイド姿のロキシーも加わって、場の華やかさは天井知らずだ。

 このお茶会に世界の命運がかかっているとは、天の声さんでも気がつくまい。

 当事者の俺でも信じられない。


 仕方がない。

 もうひとつの方を進めるか。ロリ✕ロリじゃなくてロリ✕ゴリの方。ちょっと犯罪臭い?


「むっ! ナオミ、団長からの連絡だ。……はい、はい……ええ……えっ!? それは……はい、わかりました。伝えます」


 ザ・小芝居! 片耳に手を当てて顔を逸らし、通信しているフリをする! 決して『上司に面倒くさい仕事を振られるのが嫌で、取引先との連絡を装って執務室を出ていく営業マン』の真似ではない! どこへ行くスズキ、戻ってこい!


「どうしたのじゃエグジー! ハリー様はなんと!?」

「ああ。中央大山塊に向かった団員が、山の西側中腹に大隧道トンネルを見つけたそうだ。どう見ても人工的に作られたものらしい。風が通っているから、おそらくどこかに通じているだろうって」

「っ! それって!?」


 さっきまで和やかだったお茶会の空気が、一気に緊迫した雰囲気に変わる。

 いや、ロリ先輩だけが白けた目で俺を見ている。よせよ、クセになっちゃうだろう?


「わからねぇ。わからねぇけど、多分、大魔王だろうな」

「そう……やっぱりそう、よね」

「うむ、ほぼ間違いないじゃろうな」

「まだ確証が無いから、危険だけど中に入って調べるそうだ。無理はしないと思うんだけど……」

「そうね、アタシたちは無事を祈るしかないわ」

「ああ、吉報を待とう」


 まぁ、危険はないんだけどなー。

 西側のトンネルは、今は鉄柵を立てて人や動物が入れないようにしてある。出口も入口も。

 だから、中にいるのは小動物だけだ。コウモリとか虫とかな。

 ネズミもいるけど、ドブネズミみたいな大きいやつじゃなくて、カヤネズミみたいな小さいやつだけ。砂漠の方から来たらしい。

 けどこのネズミ、後ろ足二本で立って、カンガルーみたいに跳ねて移動するんだよな。実はウサギだったり? げっ歯類の仲間ではある?

 だとしたら危険だな! 俺の天敵だ! 喰われる前にやるしかない! 大脱走だ! いや、逃げるのかよ! 逃げるよ!

 まぁ、実際には探索なんてしてないから問題ない。誰も喰われない。逃げない。


 ちなみに、南の入口はガンモの、東の入口はガンモの眷属の巣になっている。番犬ならぬ番鳥のおかげでセキュリティは高い。ウサギもシカもやってこない。素晴らしい!

 北の入口は、雪を使った天然の冷凍冷蔵庫として利用している。今度アイスクリームを作ろうと思っている。ホットケーキに添えたら絶対美味い。


「ふむ、こちらは特に進展は無いし、その探索の結果次第では、そろそろ本腰を入れて大魔王に会いに行く時期かもしれんのじゃ」

「そうね。できることから片付けていきましょう」

「だな」


 大魔王側こちらもおもてなしの準備をはじめないとな。食事のメニューはどうしよう? おやつは?


「ほラ、食ヱ」

「わっ!? あ、ありがとう。あら、最初のとはちょっと違うのね」


 とりあえず、ロキシーがプリンアラモードのおかわりをナオミの前に出す。

 今度はマンゴーっぽいフルーツじゃなくて、りんご味のクラッシュゼリーが添えられている。飽きがこないように、少し変化させてみた。


「なんじゃその美味そうなのは! 儂にもおかわりじゃ!」


 そうだな。遠征が始まったら、しばらく食べられないだろうしな。今のうちにいっぱいお食べー。

 あー、平和だなぁ。

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