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よーっし! 地下都市のリフォーム完了!
いやぁ、長かった。クリスたちの家とか仔豚ちゃんたちの家とかネコ耳たちの家とか、あちこち兼務しながらの増改築だったからな。
皇国の偵察にも人手……樹手を割いてるし、四千以上の分身がいてもいっぱいいっぱいだったよ。
でもこれで、ようやく他に手が回せる。やれやれだぜ。
しかし……ふふふ……フハハハ! なんだコレ! ちょっと遊び過ぎだろう俺!
まず家!
元々あった古い家は修繕して、それなりに趣きのある町並みに戻した。一部崩れてたりしたのも修繕した。直したところもエイジング加工して、そこだけ浮いて見えないようにするこだわりよう。
ついでに、鉄骨を仕込んで耐震補強もした。見えないところにも手を抜かないジャパンクオリティ! これでいつ南海トラフ大地震が起きても大丈夫。多分。
そのうえで、街の各所に人形を置いた。等身大だけど、ひと目で人間じゃないとわかる石のマネキン。
そいつらが、実に人間らしい動きのまま固まっている。
ある男性の人形は酒場のドアを開けた姿勢で固まり、その酒場の中ではウェイトレスの尻を撫でた状態で男の人形が固まり、尻を撫でられたウェイトレスの人形が驚いた格好で固まっている。
ある家のベッドルームでは、夫婦の行っている夜のプロレスの最中に起きてきた子供が乱入したところが人形で再現されている。お父さんの慌てぶりにはちょっとこだわった。【石工】技能大活躍。
この街のコンセプトは夜! 何気ない街の夜のひとコマを人形で再現してみました! 要は実物大ジオラマです!
無人の街っていうのも、それはそれで雰囲気はあるんだけどさ。俺としては、なんていうの? 不安感? みたいなのを表現したかったんだよね。何かが起きた、あるいは起きそうっていうね。
マジの造形のリアルな人形でも良かったんだけどさ、石化された人と勘違いされたら困るじゃん? お前がやったのかーってなるかもだし。だからマネキンにした。
そもそも、ヤッてる最中のお父さんやお母さんのナニをリアルに再現するのはマズいだろ? そういうことだよ。
そして、今回のリフォームの核となるのがこの宮殿!
場所は
全体的な雰囲気は、尖塔のあるヨーロッパ風のお城にしてみた。シ◯デレラ城っぽいアレ。サイズはアレよりデカいけどな。ちゃんと人が住める大きさにしたから。
色は、アレとは真逆の黒。外壁には御影石っぽいの、床材には黒大理石っぽいのを【錬金術】で作って貼り付けた。やっぱ魔王の城は黒くないとね。
これも表面はエイジング加工して古城っぽくしてあるけど、中身はかなりちゃんとした鉄筋コンクリート造りだ。見えないところにも以下略。
そして、ここにも人形たちが。
城内各所には立ち番や警邏中の衛兵、寝ず番の侍女や下男たち、厨房には仕込み中の料理人たち。そして地下の牢獄には罪人たちも再現してみた。
やっぱ、凝るならとことん凝らないと。壁に向かって体育座りしている奴なんて、実にリアルだろう?
建物や人形には凝ったけど、内装にも凝ってみた。
最初はビリビリに破れた布(っぽい俺の皮)なんかを飾ってみたんだけど、『いや待て、今も大魔王が使っているという設定なら、荒れたままというのはおかしくないか?』ということで、豪華な刺繍の施された垂れ幕(っぽい俺の皮)とかを飾ってある。
もちろん大広間にはレッドカーペット(っぽい俺の皮)も敷いてある。
そして、そのレッドカーペットの先にあるのは……巨大な玉座。
ここだけはエイジング加工をせずに、黒くてツヤツヤなままの石材を使っている。玉座を飾り立てる布や彫金も磨き込まれてキラキラだ。
その豪奢な玉座に腰掛けるのは、艷やかな赤銅色の肌の巨人。身長八メートルはある。
筋骨隆々のその巨体に纏うのは、黒に金糸の刺繍が入ったトーガ(っぽい俺の皮)と編み上げのサンダル、黄金の茨の冠。
玉座の肘置きに左の肘を置き、その拳の上に、気だるげに顎を乗せている。
実際、表情も気だるげだ。口はへの字に閉じられ、
そう、これが大魔王ボン=チキング……
なんつって!
いやぁ、いいねいいね! 雰囲気あるね! やっぱ大きいのはいいね!
第一世代、俺が最初に飛ばした種の世代が、もうこんなに大きくなってるんだもんな。ちょっと見ない間に大きくなったわねぇ……て、こいつも俺だよ。いつも見てるっつうの。
んー、顔の造形は凝りすぎたかな? 五つの目はやりすぎ?
いや、でも大魔王だからな。他とは違う感じが欲しい。本物の大魔王にはこれじゃない感しかないからな。『ネコ耳キキちゃんと樹のお家(ヤギ付き)』になってるし。大魔王ってそうじゃないだろ。
普通の五つ目じゃなくて、右ふたつ左三つっていう不均衡感が、これまたクリーチャーっぽくていいと思うんだよね。しかも微妙にずれてるというこの不安定感。異形だなぁ。
うむ、この圧倒的異物感! これなら勇者も納得だろう。
さぁ、いつでもおいで! おもてなしの準備はできてるよ! 待ってるから!
◇
「森の主との情報交換は今後も続けるとして、大魔王との交渉も進めねばならんのじゃ」
「そうね。でも、まずは大魔王のところへ行かなければ話にならないわ」
まだまだかなー。俺はもう準備できてるんだけどなー。
そっちが最優先だから、盆地旅行を急がせるわけにもいかない。気長に待つしかないか。
いや、気長に待ってたら惑星が滅んじゃうな。どうしたものやら。
「準備は大切だぜ? 作戦の成否は準備段階で八割決まってるって団長が言ってた」
「うむ、その通りじゃ! さすがはハリー様、よく分かっておられるのじゃ!」
のじゃロリ賢者はハリー絡みだと全肯定だな。もうちょっと疑ってもいいんじゃよ?
「でも、大魔王が中央大山塊のどこにいるかも分からないし、だから日程も組めないわ。一体どれだけの準備をすればいいのか……」
だよねー。俺、居場所を明かしてないもんねー。
でも大丈夫。こんなときの傭兵団設定です。ウソ。思いつきです。
「それなんだけどさ、少し予算と時間を出してくれたらうちの傭兵団で調査するぜ? 今は大きな仕事を抱えてないから、多少なら人手を出せるって団長も言ってたし」
「おお、それはありがたい! やはり持つべきものはハリー様なのじゃ!」
「それは確かにありがたいわね。どこに居るのかが分かれば準備が進められるもの」
無料じゃないところがポイントだな。無料だと、何か裏があるかもしれないと勘ぐられるかもしれないから。
「予算次第だけど、とりあえず二ヶ月もらえたら大魔王の居場所のアタリぐらいはつけられると思う。それでいいか?」
「うむ、その間にこちらは森の主との話し合いを進めるとするのじゃ」
ホントは二ヶ月もいらないんだけどな。今すぐにでも案内できます。目の前まで。
けど、これも不自然に短いと怪しまれるからな。人跡未踏の魔境に入るんだから、それなりの時間を掛けないと。
あれ、二ヶ月じゃ短かったかもしれないな? まぁいいか。
「問題は予算ね。できるだけ多く用意したいけど、大臣たちがなんて言うかよね」
「ふむ、そこは儂が交渉しよう。他ならぬハリー様のためじゃからな! 国家予算くらいは獲ってこねばな!」
「いやいや、それは多すぎだから! 数人分でいいから!」
そのエネルギーはロリ先輩との会談で使ってくれ。
やれやれ、こっちはこれでまた動きがあるだろう。お膳立ても大変だ。
で、どうよロリ先輩? いけそう?
『ええ、大丈夫そうですの。畑も屋敷の庭も定着したみたいですの。問題なく意識を移せそうですの』
ふむ、計画通り。
これでまた一歩、野望に近づいた。
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