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 モッシャモッシャ


 いいか、引き分け、引き分けだからな! 今回はこのくらいにしておいてやる!

 その葉っぱは敢えて喰わせてやったんだからな! わざとだからな!


「負け犬の遠吠えが、とても見苦しいですの」


 負けてねぇし! 今回は、ほら、アレだよアレ!


「ぷぴっ! おうまさん、またね!」


 そう、仔豚ちゃん! 仔豚ちゃんの奪還を優先したからだし! 手加減してやっただけだからな!

 喰うもの喰ったんだから、さっさと森へ帰れこの奇蹄目! もう来るな!

 仔豚ちゃんも、もうあの子と仲良くしちゃいけません! 馬が感染うつるわよ! 足の指が一本になっちゃうんだから!


 ブヒヒヒンッ


 キィーっ! 勝ち誇りやがってこの馬畜生め! 覚えてろ、いつかサクラ鍋にしてやるからな! 月のない夜は気をつけろよ! 森は足元がデコボコして躓きやすいからな!


「小者感がとんでもないですの。とても大魔王とは思えないですの」


 放っとけ! 本人も気にしてるんだからえぐるなよ!


 ふうっ。ともあれ、ひとまず危機は去った。森の平和は守られたのだ。

 だが、いつ第二、第三の奴が現れるか分からない。一時の勝利に油断することなく、次の災厄に備えるのだ。森に真の平和が訪れるその日まで、戦え大魔王、負けるな大魔王! 世界の平和は君の双肩にかかっている!


「勝利してないですの。負けてるですの」


 ロリ先輩、負けてないから! 俺はまだ負けてない! 大魔王の戦いはこれからだ!

 ……とりあえず柵を作るか。馬が飛び越えられないくらい高いやつ。



 王国のほうはこれでいいか。惑星崩壊の謎はロリ先輩とのじゃロリ賢者に任せよう。


 ということで、そろそろ本格的に皇国の攻略を始めよう。

 全面戦争……は、一番簡単なんだけど、地下組織とかが延々と反抗を繰り返したり、後々面倒なことになるのが目に見えてるからパス。

 やっぱり秘密裏に、じわじわ領域支配権を削り取るのが穏便だな。そんで、最終的には俺の傀儡を現皇王とすげ替える。ついでに官僚たちも。

 表面的には単なる世代交代だから、大きな混乱は起こらないはず。一般市民は、大魔王おれの支配下に入ったことにも気が付かないだろう。平和裏に侵略は完了する。

 うむ、完璧な計画だ! さすが俺、サスオレ!


 というわけで、この線で詳細を詰めていこうかな。

 まず、この計画で最重要なのは、新しい皇王だ。俺の命令を遵守する眷属、操り人形。

 混乱なく皇位継承をさせるなら、今の皇王の血筋じゃないとまずい。傍流だと血統主義者からの反対が多くなりそうだし。

 能力は低くていい。どうせ傀儡だし、なんなら子供でもいいくらいだ。子供なら、まだ変な性癖も持ってないだろうしな。


 そう、それ大事!

 皇都の貴族ってやつは、どいつもこいつも拗らせた性癖のやつばかりだからな! マザコン? シスコン? かわいいもんよ! ロリコン? ショタコン? 普通じゃん! ってくらい。

 もうね、皇都に忍び込ませた苗木ちゃんとお種さんのSAN値は既にマイナスよ? なんなの皇都貴族あいつら? シャリム(露出狂)や豚領主(ドM)が可愛く見えるレベルよ? ファッションモンスター姉弟なんてまだまだヒヨッコだったわ。

 俺様が皇国を支配した暁には全員排除確定。手前ぇらに明日を生きる資格はねぇ!

 普通の性癖なやつは貴重だ、保護しなければ!


 それじゃ早速、候補者選定から始めるか。

 現皇王には四人の妻と三人の妾の間に十一人の子供がいて、うち、皇位継承権のある男子は五人。どの皇子も皇都の離宮に住んでるらしい。後宮じゃないんだな。

 っていうか、後宮っていうのは皇王のハーレムだから、たとえ息子でも男は住めないらしい。乳離れしたら離宮へ移されるんだとか。俺は苗木ちゃんを送り込んでるけどな。うひっ。

 後宮に入れるのは皇王と妻、妾、娘、あとはその世話をする女官だけ。皇王以外は女ばっかり。ハーレムかよ! ハーレムだな。紛うことなきハーレムだ。いいな!


 一応他にも、現皇王の兄弟で皇位継承権を持っているやつらもいるけど、そいつらはもう大人だからな。拗らせた性癖持ちばっかりだろうから、候補には入れられない。排除候補には入れる。


 離宮は皇都の外れにあって、結構広い。ちょっとした街くらいの広さがある。盆地の地下都市くらい?

 壁が高いなぁ。ゴッツの街の壁より高い。

 けど、これくらいなら余裕。救国のオレンジも真っ青なこの俺様の身体能力をもってすれば、乗り越えられない壁など存在しない! 無理だったら壊して壁なんか存在しなかったことにするからな! 最初から存在しないのだ!

 その中に皇子たちはそれぞれの屋敷を建てて、バラバラに住んでいるらしい。全員ライバルだもんな。一緒に住んでたら諍いが絶えないだろうし、当然の措置だ。


『弟よ、ここにこんなに埃が残ってるじゃないか!』

『す、すみません兄上! すぐにやり直します!』

『まったく、掃除も満足にできないのか。これだから下賤な妾の子は』


 なんてな。ああ、これは姑の嫁いびりか。普通、皇子は掃除しないよな。大魔王はするけど。

 皇子のうち、一番年上はもう三十歳近く。二番目も二十歳を過ぎていて、三番目が十四歳。四番目が十歳で、最年少は四歳らしい。

 年上のふたりはアウトだな。拗らせてそう。

 三番目はチルドレンエイジか。厨二病罹患期、多感なお年頃だな。教育次第ではギリギリいけるか? ちょっと保留にしておこう。

 傀儡にするなら四番目以下かな。まだ子供なら、多少歪んでいても矯正できるはず。真っ当な道へ戻れるはずだ。

 まぁ、そんな道、知らないんですけどね。グー◯ルマップで調べたら表示される? ナビ◯イムのほう?


 けど、四番目と五番目の子はお妾さんの子らしいんだよな。ちょっと血統が弱い。

 あれだな、きっと若いピチピチの身体につい手が出ちゃったんだな。それでデキちゃったと。オッサン、ちょっとは自重しろ。気持ちは分かるが。

 血統が弱いってことは派閥の力も弱いってことで、このふたりを推したら絶対血統主義者共に反発されるよな。

 それで、すでにオッサンな皇王の兄弟が引っ張り出されてきて、皇国は継承争いの内乱に突入だ。泥沼。うん、実に明確に未来が予知できた。

 その後の支配が難しくなるから、内戦は勘弁してもらいたい。

 ということで、お子様ふたりはなし。選択肢は厨二病君だけってことだ。

 もしかしたら大人ふたりが真っ当な性癖である可能性も微レ存だけど、それは期待しないでおこう。だって皇国だし。そこは信用している。

 というわけで、ターゲットは三番目。こいつを探し出して眷属にしてしまおう。

 なーに、俺には【話術】先生がついている! 恐れるものは何もない! 草食動物以外は!



 夜になりました。はい潜入成功。

 今回は苗木ちゃんとお種さんだけでチャレンジしてみた。人型じゃなくてもなんとかなるもんだな。

 まぁ、これだけ技能スキルを獲得してたら、大抵のことはできて当然か。俺の実力じゃなくて、技能のおかげ。そこは増長しないようにしておこう。謙虚な大魔王ボンちゃんです。


 ふーむ、広いな。

 ターゲットが何処に住んでるかまでは調べきれなかったし、地道に探すしかないな。

 というわけで、苗木ちゃんズ召喚! 人海戦術ならぬ樹海戦術で捜索だ!

 この街に潜む厨二病を炙り出せ! その黒歴史を白日の下に晒すのだ!

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