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 経緯としてはさ、カクカクシカジカのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助ってことなのよ。わかった?


「長助さんはどうでもいいですの。どうして貴方はそこまで巫山戯られるのか、大いに疑問ですの。それにしても……むむむ……それが本当なら一大事ですの。一体何が起きるんですの……?」


 本当ならって、思考が読めるくせにまだ俺を疑っているのかよ。その読心技能スキルは宝の持ち腐れだな。

 腐ったモチからは抗生物質が抽出できるらしいから、まだモチのほうが役に立つと言えよう。青カビ最強。

 ロリ先輩も、抗生物質くらい作れないとカビ以下になっちゃうぞ? マウント取られるぞ? カビ生えちゃうぞ?


「考え事してるんだから、ちょっと黙ってて欲しいですの! まったく、なんで読もうとしていないのに思考が流れ込んでくるんですの? 貴方、何か変な技能スキルでも持ってるんじゃないですの?」


 変な技能ねぇ? いっぱい有り過ぎて、もう自分でも把握しきれてないんだよなぁ。相乗効果とか考えだしたら、何が何に影響してるのかサッパリわからん。なかったことにしたい技能とかもあるし。調教とか調教とか調教とか!


「……その技能はアタシに使わないでほしいですの。……う〜ん、駄目ですの。ちょっと判断しかねるですの。材料が足りないですの」


 長生きしてるロリ先輩でも分からないかぁ。無駄に生きてきた証拠だな。長く生きてればいいってわけじゃない典型例だ。チッ、この役立たずめ!


「酷い言い草ですの! くっ、コイツに闇魔法が効けば廃人にしてやるところですのに!」


 まぁ、最初から領域支配者エリアボスには期待してなかったけどな。支配領域を広げられたらそれで良かったし。

 なので、俺はロリ先輩が無能でも気にしないよ? うんうん、しょうがないよね。これからは真っ当に生きたらいいんじゃないかと思うよ?


「むきぃ〜っ! 屈辱ですの! 千年生きてきて、ここまで酷い侮辱をされたのは初めてですの! あの猛獣大魔王でさえ退けたアタシが、こんな苗木に侮辱されたですの!」


 ほう、猛獣大魔王とな? そういや俺の心の友と同年代を生きてたんだったな。どんな奴だったの、マイフレンドは?


「心の友? 大魔王同士で何か繋がりでもあるんですの?」


 いや、俺が一方的に仲間と思ってるだけ。きっと天国で奴もそう思ってくれてるよ?

 ……見ているか、友よ……。


「貴方、本当に頭は大丈夫ですの? でもまぁ、あの猛獣大魔王と友達になりたいって言うのであれば、その頭のおかしさも納得ですの」


 うん? そんなに変だったのか、猛獣大魔王? ただのケモナーじゃなかった? やっぱ真性のケモナー?


「ケモナー? ああ、獣に情欲を抱く性癖のことですの? んー、ある意味、間違ってはいないですの」


 ほう、やっぱりか。ケモナーはLGBTQより理解されていないマイノリティだからな。さぞかし風当たりは強かったことだろう。強すぎて迫害が災害になっちゃうレベルだったりな。

 ああ、だから激甚災害個体に指定されて大魔王になったのか。納得。


「迫害……そう言われたらそうかもしれないですの。でも、それはある面では仕方がないことだったんですの。彼は……赤ん坊の時に森に捨てられて、オークに拾われて育てられたんですの」


 なぬっ!? オークって、あの悪食で同族すら喰っちゃう、あのオークか!? よく喰われなかったな!


「……オークが同族喰いをするようになったのは、猛獣大魔王が倒されてからなんですの。それまでは、森の隠者と呼ばれるくらい大人しくて温厚な種族だったんですの」


 マジか! いや、確かに仔豚ちゃんは可愛くて素直だし、大人も意外に従順だなとは思ってたけど、そうか、あれが本来のオークなのか。俺が調教しちゃったからじゃなかったんだな。


「既に調教の過去があるんですの!? アタシには絶対に使わないでほしいですの! ……猛獣大魔王は、元は北の国の人族の王子だったらしいんですの。それが政争に負けて森に捨てられて、それをオークが拾って育てたらしいんですの。成長した彼は周囲と自分の違いに疑問を持つようになって育ての親に問い詰めて……唯一の手がかりである産着を持って、人の社会へ旅立ったそうなんですの。そこで言葉を覚えて旅をして自分の出自を知り……最終的に森へ戻ってオークとして生きることに決めたようなんですの。けど、戻った森は人に焼かれて、同胞のオークは狩られて食われ……人の非道さを目の当たりにした彼は人への復讐を誓って、森を焼いた人たちを殺して喰らい、そして猛獣大魔王になって、人類絶滅に向かって走り出したんですの。これが、彼の頭の中を読んだアタシの知る全てですの」


 ……うおぉおぉんっ!

 マジかよ! 何というバッドストーリー! 俺が考えてた百倍以上、悲壮な話だった!

 なんだよ、真性のケモナーだから認められなかったんだろうって! そんな浅い話じゃなかった! ガッツリ貴種流離復讐譚だった! これで小説が一本書けちゃいそうじゃん!

 しかも、最後は教国に滅ぼされたんだろ? バッドエンドじゃん! 全く救いが無ぇ!


 あっ、猛獣大魔王が生まれた北の国って、もしかして教国の元になった国か!?

 だとしたら、教国が大魔王絶対殺すマンなのって、自分たちの過去の過ちを隠すためだったり? 猛獣大魔王の国を砂漠になるまで執拗に破壊したのも、一切の証拠を残さないため?

 何という非道! 何という無情!


 よし、教国は滅ぼそう! そして、大魔王の名において真実を公表し、猛獣大魔王の名誉を回復させるのだ! 待っててくれ、心の友よ! お前の無念は俺が晴らす!


 そしてありがとう、ロリ先輩! いい情報が聞けました! 友との絆が深まりました!


「ふふん、恐れ入ったかですの! もっとアタシを褒めていいですの!」


 いやぁ、さっきは馬鹿にしてごめんね。やっぱ長く生きてるのは凄いね、生き字引だね! あっさり手のひら返しちゃうよ! 手がないから葉っぱだけど。ひらひら。


「むふふふ! やっぱりアタシは凄いんですの! 狂乱魔王は健在ですの! 知識は力なんですの!」


 うむ。ふんぞり返っても、やはりロリの胸はロリだな。凹凸がクリスと変わらん。

 でも、そうだな。その知識は何かの役に立ちそうな気がする。

 俺じゃ使いこなせなくても、あののじゃロリ賢者であれば……もしかしたら惑星崩壊の原因を突き止められるかも?


 ロリとロリでロリロリか。小女子こおなご好きのスズキさんが喜びそうだな。

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