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森の中をワンコ(狼)たちとお散歩なう。いや、狩りだからお散歩じゃないか。
いやぁ、すっかり仲良くなってしまったな。俺たちが食わない内臓をおすそ分けしてただけなんだけどな。もうペットと飼い主を越えた仲と言っても過言ではない。かも。
苗木サイズだから、背中に乗っても大きな負担はないっぽい。騎乗
ワンコの背中に乗るのはイヌ好きの夢らしいけど、俺は異世界でその夢を叶えてしまった。全世界七十億人のイヌ好きのみんな、ごめんな! 羨ましかろう、フハハハ!
って、既に俺は恐竜という、夢でも乗れないような生き物にも乗ってるんだけどな。
すげぇ、異世界には夢がてんこ盛りだぜ! みんなもおいでよ異世界の森に! そしてウサギに齧られろ!
けど、俺が森にいるのはワンコに乗るのが目的じゃないんだよ、ここの
囁きの森だったっけ? サボテン砂漠の北に広がってるこの森。
人の手が入ってない……というより入れられないエリアだから、きっと魔物の領域支配者がいるはず。
けど見つからない。もうエリア内をほぼ一周したぞ? いったい何処にいるんだ?
もしかしたら、走竜の狩り場のときの大顎魔王みたいに避けられているのかも。
アイツには【直感】って技能があったから、俺の接近を感じて逃げ回ってた。そう、俺は直感でわかるくらい危険な男。俺に惚れると火傷するぜ? ただし低温火傷。こたつ入りすぎ。
ここの領域支配者にも同じ技能があるなら、同じように逃げ回ってる可能性は高い。
あのときは人海戦術ならぬ樹海戦術のローラー作戦で対処したんだよな。いわゆる虱潰しってやつ。
まぁ、ボスはシラミじゃなくてダニだったんだけど。潰しちゃダメなやつ。
ここでもそれをするしかないか? 面倒臭ぇ。
けどなぁ。
あのときは合同討伐軍の出鼻をくじくって目的があったから急ぐ必要があったけど、ここはそんなに急ぐ必要はないんだよな。侵攻ルートから外されてるエリアだし、そもそも合同討伐軍は解散したし。
だから、今回の目的は、純粋に領域確保による自己強化のためだ。俺が強くなるため、それだけ。
おっと、俺の天敵、鹿発見! ワンコたちも気づいたな。運良く風下だ。よし、狩りの時間だ!
まぁ、ボス探しはのんびりやらせてもらおう。惑星崩壊はのじゃロリ賢者に押し付けたし、皇国攻略も順調に進行中。キキの子育てにも大きな問題はない。今はまだ焦る段階じゃない、はず。
身振り手振りでワンコたちに指示を出す。手じゃなくて枝だけど。
鹿狩りは俺の十八番だけど、俺が全部やっちゃうとワンコたちの出番がない。俺に頼りっきりになって狩り方を忘れちゃったら、いざってときに困るからな。できる限りワンコたちだけで狩ってもらう。
さぁ、野生を解き放つのだ、ワンコたち!
◇
うむ、
いや、大漁なんだけどさ。鹿の山ができちゃったよ。
こいつら、逃げればいいものを、俺を見ると向かってくるんだよな。よだれを撒き散らしながら。
俺って、そんなに美味そう? 仲間呼んでまで喰いたくなるくらい? 天敵の狼に襲われてるのを忘れるくらい?
鹿どもめ、勝てないとわかっていても
いいだろう、全て返り討ちにしてくれるわ! 人との前に、鹿との全面戦争だ! かかってこいやぁ!
という冗談はさておき、ひょっとして俺って、鹿にとっては中毒性のあるヤバい植物なんじゃなかろうか? 臭いとか見た目だけで気がおかしくなっちゃうような。
うーん、ある意味、大魔王の面目躍如? けど、自然界に与える影響は大きそうだな。なるべく森には入らないほうがいいかもしれん。入るけど。
おっと、ごめんごめん、待たせちゃった? ワンコたちが切なそうな顔をしている。
眷属化も名付けもしてないけど、なぜか俺がリーダーだもんな。リーダーが最初に食べるのが狼たちの流儀らしいから、俺が食べないと皆も食べられないんだった。ちょっと待ってね。
待機してた苗木チームを亜空間から召喚! 素早く風魔法で気圧をいじって血抜きしたら、
おうおう、そんなに慌てるなよ。まだ骨も肉も出てくるからさ。美味いか? そうかそうか。
剥いだ皮は俺の取り分にさせてもらって、豚領主のところに送って革職人に加工させる。ラプトル用の鞍を作らせないといけないからな。革の鎧なんかも欲しいし、鹿革のライダースジャケットも作りたい。ワンコ用の鞍も必要かも?
枝肉にしたら、今日食べる分だけ再びワンコたちへ。だいたい一頭分くらいかな? 残りは北の山に作った氷室で冷蔵保存だ。明日のご飯だな。
余った分はクリスたちのご飯に……いや、無いか。ガンモの支配領域だった森でも日々狩ってるし、氷室の肉は貯まる一方だしな。ハムでも作って長期保存を考えるべきかも。
それはそうと、ワンコはかわええのう。
お食事のあとは、俺の【水生成】で身体をキレイキレイして、【風魔法】と【光魔法】の合わせ技のドライヤーからの、【形状変化】で作ったブラシで毛並みツヤツヤコンボだ。
フフフ、この十割コンボの前では何人たりとも立ち上がること叶わず。無防備にヘソ天でダウンする運命だ。今ならお腹撫で放題だぜ、ヒャッホーッ!
うーん、ニャンコもかわいいけど、やっぱりワンコもかわいい。仲間だけに見せるこの無防備さがなんとも言えん。
ええんか? おっちゃん遠慮せぇへんで? 撫でまくるで? ぐふふふ。
「ウフフ、かわいいですの。お腹がポンポコリンですの」
だよねぇ。今日は大漁だったからねぇ。肉の在庫はまだまだあるし、明日もポンポコリン確定かな?
「それは素晴らしいですの! 明日もまた撫でられるですの!」
まぁ、頭や背中ならいつでも撫でられるけどな。それはそれで楽しい。
ところで赤毛おかっぱミニフレアスカートのお嬢さん、おたくどちらさん? どこから出てきたの?
「あらあら、これは失礼しましたですの。アタシはこの森の領域支配者、【狂乱魔王】のアマニータと申しますの。はじめまして【大魔王】ボン=チキングさん、ですの」
っ! 尋ね人が向こうからやってきた!?
ってか、魔王!? マジか!
この森に魔王がいるなんて情報はなかったぞ? 少なくとも、のじゃロリ賢者は何も言ってなかった。
いや、賢者でも知らない魔王がいるってことはあり得るけど、王国からそれほど離れてないこの森に魔王がいることを知らないなんて、あり得るか?
「ああ、そのことならしょうがないですの。だって、アタシが魔王になったのはずっとずっと昔の話ですの。王国の人はまだ誰も生まれてないでしょうから、知ってる人がいないのも当然ですの」
マジか! こんなロリっとした見た目と口調で、中身が実はバb……
「それ以上言ったら殺すですの」
うおぅっ!? 殺気が、この世界に転生して以降、最恐の殺気が!
ってか、今更だけど思考が読まれてる!? エスパーか、テレパスか!
「? エスパーやテレパスが何か分からないですの。でも、考えを読んでいるのは間違いないですの」
まずい、俺の思考が読まれている! アレやコレや、えっ、そんなことまで!?
「フフフ、全部お見通しですの。アタシにカクシゴトはできないですの」
くっ、なんてヤバい相手だ。前世のPCのあの隠しフォルダのことまで筒抜けだなんて!
脱衣真拳を習得したと思ったら、今度はこちらが心を丸裸にされるとは!
『脱がしていいのは脱がされる覚悟のあるやつだけだ』とはよく言ったものだ。世界は俺を脱がさずにはいられないということか!
「いや、別に脱がすつもりは無いですの?」
いいだろう、世界が、宇宙がそれを望むというのなら、必要だと言うのなら、それを受け入れよう! 俺には全てを脱ぐ覚悟がある!
だがしかし! 俺のプライバシーを、裸身を欲するというのなら! その代償は高く付くと知れ!
「だから、裸身は別に欲しくないですの。聞いてますですの?」
脱衣真拳、その極意を今こそ見せるとき! 最後の一枚を脱ぎ放ち、究極奥義の封印を解き放つのだ!
「ちょっ、まっ、待つですの! 何をするか分からないけど、それはちょっと待つですの!」
残念だったな、覚悟を決めた変態は誰にも止められない! そう自分ですらも! もう誰も◯ヴァを止められないわ! 暴走モード突入!
「
うむ、最初から何も着てないから、葉っぱが一枚飛んでいっただけだった。でも枝の分かれ目が無駄に光っている。そこが俺の秘所なの?
演出はそれだけだが、だがしかし! その効果は
なんかこう、気持ちよくなるのだ! 開放的になっちゃうのだ! 全開放しちゃうのだ、開けちゃいけない扉を!
この状態をエクストリームフォームと名付けた。単なる全裸と言ってはいけない。豆の木はいつも全裸だから、気分の問題でしかないとか言ってはいけない!
そして、このエクストリームフォームから繰り出されるのが究極奥義だ。イクぞ!
「や、やめっ!」
「脱衣真拳究極奥義……妄想転生」
『ああ、ハーレムとかチートとか、ラノベでよくあるやつですね』とか言ってはいけない!
イケないのだ!
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