099
ふう。これでクリスたちの集落は完成かな。森の中の小さなリゾート地って感じ?
小さいけど石造りで丈夫な家を四軒、泉を囲むように建ててみた。泉の中央には俺の分身が生えてる小島。うん、お洒落〜。
っていうか、水が湧き出してるのは俺の分身からだから、正確には泉じゃなくて池か? 湧き水じゃないもんな。いや、俺が源泉だから、やっぱり泉?
河童が棲んでれば沼なんだっけ? 河童は
けど、沼童だとヌルヌルしてそうでなんか嫌だな。ちょっと泥臭そうだし。やっぱ河童でいいです。流れてろ。
四軒の内訳は、鍛冶聖のギーの工房兼住居、槍聖アローズとライアンの男性寮、
この公館だけ、ちょっと離れたところに建っている。ヤギ牧場併設だからな。乳搾りのためにはしょうがない。美味しいミルクのためなら、多少の牧場臭くらいは我慢だ。我慢出来ないときは風魔法で散らす。
公館の入り口横の壁に真実の口があるのもしょうがない。作っちゃったんだからしょうがない。御用の方はその口に手を入れてお待ちください。たまに甘噛みします。唾液付きで。
次はネコ耳たちの集落だな。
元湿地の大穴は、水が溜まっていい感じの池に……いや、こっちは底から湧いてるから正しく泉だな。ややこしい。まぁ、その泉の周りに建てればいいか。
こっちは風よけになる森がないから、ちょっと低めの家にしないとな。この盆地、異常に風の強い日があるから。ネコが飛ぶくらいの強風。
まぁ、屋根まで石造りにして、風よけの石垣も作っておけば飛ばされないだろう。ちょっと沖縄っぽい?
となると、石材が足りないな。また錬金術で作るか。そこらへんの丘をひとつふたつ削れば足りるだろ。
鉱物が採れたら嬉しいけど、石だけでもいい。まだまだ金属のストックはある。ないのは石。
何処にでもありそうな物(石)が足りないっていうのは、なんか哲学的な感じがするな。無知の知的な? 鞭の恥だと哲学じゃなくて性癖の話になっちゃいそう。
とりあえずは石材だ。木材はまだある。渇水で森が枯れちゃって、半分くらいは生き残ったけど、半分は立ち枯れちゃったからなぁ。まとまった雨は、もう三年以上降ってない。俺の水生成だけじゃフォローしきれなかったよ。
枯れちゃったものはしょうがない。お前たちの遺志(木材)は俺が有効活用してやるから安心しろ。
しかしまぁ、これだけトンカントンカンビシャンビシャンしてるっていうのに、なんで一向に石工技能は生えな……生えてる……生えてるじゃん!
いや『草生える』じゃなくて、石工
え? アナウンス無かったよな? 天の声さん、仕事サボった? 駄目だよ、バレる手抜きは。
……ああ、非通知設定か! 通知しなくなる設定したな、そう言えば!
アレって自分にも通知されなくなるの? なんて融通の利かないシステムだ! アップデートを要求する!
どうやらシステムの穴に落ちてたみたいだな。最適化先生はちゃんと自分のお仕事をこなしていたようだ。さすがです先生、これで印刷が間に合います! 夏の有明合わせの薄い本の印刷が! 冬でも可!
ともかく、これで家を作るのに必要なのは材料だけになった。もうあの大工たちは解放してやろう。
街が復興途中なのに、領主命令で駆り出しちゃったからな。忙しいのに悪かった。
まぁ、その忙しさの原因を作ったのも俺なんだけどな!
あまりにも街が臭かったから、グレートタイ◯ーンで家とか壁とかその他諸々を吹き飛ばしちゃった。てへ。
もしネコの集落を作り終えてもゴッツの街が復興しきってなかったら、その時は俺もお手伝いをしよう。罪滅ぼしだ。
領主館であの豚領主親子の相手をするよりは建設的だろうしな。大工だけに。
それでも、あの領主館に戻らざるを得ない悲しさよ。今日は歩いて帰ろう。嫌なことは少しでも先送りしたい。ロキシーちゃんはブルーですよ。
ネコ耳たちは俺の庇護下に入ることを決めたけど、何故か眷属にはなっていない。ガンモの眷属は俺の眷属にもなってるし、オークは一族ごと眷属になってるのにな。
けど、ヤギたちも俺の眷属にはなってないから、きっと何か条件があるんだろう。
まぁ、別にいいんだけどな。それぐらい気まぐれな方がネコっぽい気がするし。
これがイヌならモヤモヤするんだろうけどな。『お前ら、俺をリーダーとして認めてないのか!?』って。
その時は、俺を認めるまでモフり倒す確信があるね! 君がッ、デレるまで、モフるのをやめないッ! って感じで。
ネコにそれをやると嫌がられそうなんだよなぁ。爪を立てられたりして、余計に認めてもらえなくなりそう。だからネコ耳たちには強制しない。まぁ、モフるのはそのうちにな。
……何処かにイヌいないかなぁ。癒しが欲しい。
とはいえ、住処はちゃんと作ってやらないとな。イヌは人に、ネコは家に着くって言うくらい、ネコにとって家は大事らしいから。
できたらキャットタワーも作ってやりたいんだけど、風がなぁ。背の高い家は強風で飛ばされそうなんだよな。
んー、いっそ、泉の穴の側面に穴を掘って住居にするか? 穴の中なら風で飛ばされる心配は無いだろうし。
けど、あの泉の水がどのくらいまで溜まるか、まだ分からないんだよな。雨が降って床下浸水どころか集落沈没、なんていうのは笑えない。ネコは濡れるの嫌いだしな。家が沈んだらそれどころじゃないか。
ああ、丘の上に建てて半地下にすればいいのか。それなら高さを稼げるな。排水に気をつければ雨で水没ってこともないだろう。
うん、そうしよう。ネコの気持ちに寄り添うボンちゃんです。
でも、最近のキキにはちょっと手を焼いてる。二本足で走り回るようになってから、活動範囲が縦にも横にも広がったからな。
気がついたら表にいて、育成中の分身の葉っぱを毟ってるし。
どうやら本人的には葉に付いた虫を取ってるつもりらしいんだけど、幼児に捕まる間抜けな虫がそうそういるはずもなく、結果的に葉っぱだけを毟ることになっている。痛いのでやめてください。
虫が獲れたら獲れたで、すぐ口に入れるし。そんなもの食べちゃいけません!
けど、集落のネコ耳たちもよく虫を食ってるし、もしかしたら種族的な嗜好なのかも? バッタはエビみたいな味がするって言うし、不味いものじゃないのかもしれないけど……うーん。
集落の子ネコたちは取り合いまでしてるしなぁ。まぁ、貴重な動物性タンパクだからな。成長のためには仕方がないのかもしれない。
チーズができたら差し入れてやろう。脂質とタンパク質たっぷりだ。あまりの美味しさに、取り合いになること必至だな!
「なんとか言いなさいよ、この泥棒ネコ!」
そうそう、リアルに泥棒ネコのキャットファイト……って、はい?
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