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「この石、めちゃめちゃ硬いな。何処産だ?」

「緑の石か……この近くじゃ見ねぇな。王国のほうじゃねぇか?」

ひびも筋も全然ねぇ。こいつは高級品だぜ。壁に使うのがもったいねぇな」


 大工さんたちが石の出処を詮索してる。残念、王国じゃなくて盆地産です。というか、俺の錬金術の出汁がらです。

 山にトンネルを掘ったときに出た岩や土から、『錬金術』で資源を抽出した残り滓。それをさらに錬金術で固めた人工石材だ。盆地産コンクリートと言えなくもない?

 だから、実は高級品どころか産廃なんだよねー。処分に困ってたから、今回の家作りに使っちゃおうかなって。リサイクルリサイクル。


「ロキシーちゃん、こいつで家を作るのはいいけどよ、この辺りじゃ濃い色の壁だと暑くて大変だぜ? 白い石材はねぇのかい?」

「ロキシーちゃん言うナ! ロキシー様と呼ベ! 白い石材カ? むぅ、ちょっと待テ!」


 大工の棟梁め、俺が小さい女の子の見た目をしているからって、子供扱いしやがって! こう見えても、まだ満四歳の幼児だぞ! もっと幼女扱いしろ! 


 石材の色か。うーん、錬金術で石に含まれてる成分を分離すればいけるか? いや、いっそ石の成分、白い石は花崗岩だっけか? それだけを抽出してしまえばいいか。

 それじゃ、一度出してある石材を全部亜空間に仕舞ってと。


「うおっ!? 何回見ても慣れねぇな、その穴。気味が悪いぜ」

「気にするナ、そのうち慣れル!」

「そういうもんかねぇ?」


 棟梁は無視して、出してあった石材と、ついでに盆地の在庫も全部放り込む。

 そのまま亜空間の中で錬金術発動! 花崗岩を錬成!

 うん、いいじゃないかな。なんかそれっぽい石になった。ツヤツヤでコンサートホールの床に使われてそう。めっちゃでかいけど。一辺百メートルくらいの立方体。


 オオオオオオ……


 おっと、ジャンボサボテンが威嚇してる。自分よりデカいやつにムカつくのは男のさがだよな。サボテンにオスメスがあるのか知らんけど。

 おっと、爆発されたら敵わん。早く終わらせよう。

 あとはもう一回錬成して、レンガ大のブロックに小分けすればいいかな。

 表面がツルツルだと組み辛いか? けど、そんな細かい指定はできないんだよな、錬金術だと。大雑把なサイズ変更くらいしかできない。

 建築系の技能スキルを覚えたら出来るようになるのかね? だったらいいなぁ。


 などと考えながらも、立方体に分割線が走ってブロック分け完了! 光ったり風が巻いたりはしなかったけど、こういう地味なのもいいよな。音も無くスッと切れ目が入るだけ。なかなかに俺のヲタク心をくすぐってくれる。

 やっぱ『並列思考』は優秀だな。なんでも片手間だ。今なら、多重連星の軌道計算をしながら右手で◯、左手で△を描けそうだ。

 嘘です、◯と△は描けるけど、多重連星の軌道計算は式が分かりません! 二桁の掛け算くらいで勘弁して。


「待たせたナ! これを使うがいイ!」


 ズズンッ!


「うおっ!?」


 亜空間から作ったブロックを取り出して山積みにしてやった。地震みたいに揺れたから、大工たちも棟梁も揃って腰が引けてる。くくくっ、ビビらせてやったぜ!


「おお、こいつはスゲェ! ちょいと表面がなめらか過ぎるが、いい石材じゃねぇか。これだけあれば十軒くらいは建てられそうだ。ありがとよ、ロキシーちゃん!」

「ロキシーちゃん言うナ! 頭を撫でるナ!」


 むぅ、だから子供扱いするなと! 淑女は髪のセットにも気を使うんだぞ!


 さて、これで材料のほうはいいだろう。あとは建築の手伝いをして、技能が生えるのを待つだけだ。十軒も建てれば生えてくるだろう、多分。

 建築系技能さえ獲得できれば、俺だけで街づくりができるようになる。リアルシ◯・シティができちゃうぜ! ◯列車は電車がないから無理。馬車……ヤギ車ならなんとか?

 さぁ、頑張って家を建てるぞ!


「よし、それじゃ始めるぞ野郎ども! ロキシーちゃんは危ねぇからちょっと離れてな。ビスケット食うか?」

「子供扱いするナ! でもビスケットは食べル!」



 むぅ、なかなかに前衛的……というか、なんでこれで自立してるんだ?


「うー、だぁー……」


 キキが真剣な顔で積み木を組み上げている。

 さもありなん、少しでもバランスが崩れれば、ここまで積み上げた全てが崩壊しそうだもんな。

 一番下は三角形の積み木一個だけ。その上に絶妙なバランスでパルテノン神殿みたいな構造物が積み上がっている。いや、マジでどうやって作ったのコレ? 重力どこ行った?

 キキが最後の一個、半円柱型の積み木を柱と柱の間にそっと置く。もうそれしか残ってないからな。というか、一番上じゃなくてその隙間なんだ? 子供の考えることは分からんなぁ。


「ばぁ〜」


 キキがやりきった顔で完成物を見つめる。一端のクリエイターの顔だな。

 もしかしたら、俺より先に建築系技能が生えるかもしれん。うちの子は優秀だからな!


「うー……だっ!?」


 む? キキが組み上がった積み木の一点を見て眉間をしかめた?


「だぁっ!」


 ガラガラガシャーンッ!


 と思ったら蹴り飛ばして崩壊させた!? なんてアグレッシブな!

 どうやら、何か気に入らない点があったらしい。だからって全部壊すか? そこだけ直せばいいじゃん? お前はどこぞの陶芸家か!

 まぁ、何か妥協できないこだわりがあったのかもな。クリエイターあるあるだろう。知らんけど。

 どうやら、キキには建築系じゃなくて芸術系の技能が生えそうだな。

 それもいいか。子供の未来は無限大で芸術は爆発だ! でも爆発系スキルは危ないので生えなくていいです!

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