087
「それで、何があったの?」
「んー、悪いことじゃないよ? 大魔王様がまたお強くなられたんだけど、その影響が俺たちにも出たってだけさ。新しい力を体に馴染ませるために、眠りが必要だったっぽい。俺たち幹部もそれに引っ張られたのさ」
「えっ、凄い! それじゃパパイヤさん、強くなったんだ!?」
「まぁな」
正確には『俺たちも大魔王だから』なんだけどな。
まぁ、強くなったことは間違いない。並列思考でステータスを確認してみたら、割りとエゲツないことになってたし。
――――
名前:ボン=チキング
種族:魔王樹(成木)
年齢:三歳
HP:★★★★★★★★★★
MP:★★★★★★★★
腕力:★★★★★
体力:★★★★★★★★★★
知能:★★★★★
敏捷:★★★★
技巧:★★★★★
技能:『最適化』『体外思考』『疑似知覚』『成長促進』『毒生成』『毒耐性』『水生成』『風魔法』『体内時計』『形状変化』『言語理解』『光魔法』『並列思考』『眷属化』『時空間魔法』『魔素変換』『千里眼』『錬金術』『調理』『隠密』『聞き耳』『剣術』『盾術』『槍聖術』『体術』『気配察知』『話術』『病気耐性』『魅了』『闇魔法』『悪食』『絶倫』『槌術』『鍛冶聖術』『火魔法』『調教』『釣り』『騎乗』『変態』『直感』
称号:『大魔王』『変質者』『調教師』
眷属:『ジャガイモ』『ネコ麦』『盆地クレソン』『▼キキ』『▼ヤギママ』『▼ガンモ』『▼ライアン』『▼アローズ』『▼ギー』『ヒューム(メス・二十歳)』『ヒューム(メス・十六歳)』『▼クリス』『▼ゼブ』『ヒューム(オス・四十三歳)』『ハイランドオーク』『日本米魔王種』『ティグリス・ラプトル(オス・三歳)』『ヒューム(オス・二十一歳)』
特記:『激甚災害指定個体』
――――
もう、見辛いのなんの! ダメだよ、こんな文字の羅列は!
仕事でも先輩に散々言われたよ、『プレゼン資料は幼稚園児でも分かるように書け』ってね。文章は書くな、絵と単語だけで書け、資料は別に用意して時間のある時に見てもらえって。
俺の年齢見たか? 幼稚園にすら入れない三歳児なんだぜ? 僕しゃんしゃい! プレゼン資料よりも分かりやすく書いてよ!
もしくは絵入りで。『絶倫』と『変態』をイラスト化してくれ! できるもんならやってみろ!
まぁ、それだけ強くなったってことなんだけどな。
しかし『絶倫』、お前にはこれから活躍してもらうからな! 絶対だからな! 使いまくってやるからな! 酷使したいんですさせてくださいお願いします!
ステータスは軒並み上がったよなぁ。一番低い敏捷ですら、ガンモと同じ星四つだ。相当速いよコレ。素早い木ってなんなの?
一番高い体力に至っては、もうどのくらいの強さなのか比較すらできない。多分、究極破壊魔法の一、二発くらいは耐えられる? かも? 『絶倫』もあるから夜は敵なし? うひょーっ!
まだ強いライバルも出てきてないのにこのインフレ具合。少年漫画の王道じゃねぇよなぁ。邪道も甚だしい。
いや、そもそも『変質者』がある時点で少年向けじゃなかった。青年向けか? 俺的には成人向けになりたいんだけどな。なりたいんだけどな!
まぁ、強すぎて困ることはあるまい。いずれ惑星規模の危機に立ち向かわなきゃならないと思えば、これでもまだ足りないかもしれないしな。
「うーん、僕もそろそろお役に立ちたいなぁ。このままじゃ捨てられちゃいそう」
「そんなことはないさ。大魔王様はクリスの頑張りをちゃんと見ておられるから」
「そう? パパイヤさんがそう言うなら大丈夫かな? でも僕、もっともーっと頑張るよ!」
「おう、頑張りすぎない程度でな!」
魅了と闇魔法持ちのクリスが頑張り過ぎると、とてもヤバいことになりそうだからな。適当に力を抜いて頑張ってくれ。
頑張りすぎて、あんなブタ共を量産された日には……おおう、サブイボ出そう。あっ、本当に出てる。コレが『変態』技能の実力か。やりおるわ。
◇
さて、それじゃ名残惜しいけど、マーリンも起こすか。つっても、並列思考でパパイヤとほぼ同時だけどな。
起こすか? 起こすべきだろうな。夜通し看ててくれたんだろうけど、こんな
いや、病気耐性があるから、それはないか。それじゃ、お腹冷やすかも? うん、それは有り得そうだな。脱水症状を起こして、その立派なお胸様が
よくよく見れば、シーツに濡れ染みが残ってる。よだれ……じゃないな、涙の跡っぽい。
心配かけちゃったなぁ。ちゃんと起こして説明しないと。
「ラナ、ラナ。そんなところで寝ていると、お腹を冷やしますよ」
「うぅ〜ん、お腹は減ってますぅ……はっ!?」
お腹減ってるのか。それじゃ、ハリーに何か作らせておこう。昨日は各眷属とも、夕食抜きになっちゃったからな。どいつもこいつも腹は空かせているはず。
まぁ、ヤギママとキキだけは、それぞれ草とおっぱいを飲んで寝たみたいだから、特に問題なかったっぽいけどな。
乳児と家畜なのに、この生活力の高さ。これがファンタジーの普通なのか? それとも大魔王の眷属だからか? 分からんなぁ。ヤギとネコ、分からん。
「おはようございます、ラナ」
「マーリン様! お目覚めになられたんですね!」
「はい。ご心配をおかけしたようで。看病していただいたようですね。ありがとうございます」
まずはお礼だ。こういうことは後回しにすると拗れるからな。そのときすぐに言っておかないと。
「も、もう大丈夫なんですか!? どこか痛いところは!?」
「いえ、病気ではありませんでしたので、どこにも悪いところはありませんよ」
「本当に?」
「ええ。むしろ以前より調子がいいくらいです」
「う……うぅ〜、よかったぁ……」
おおっとぉ!? 泣かれてしまった! なんだか、マーリンはラナを泣かせてばかりだな。女泣かせってこういうことだっけ? なんか違う気がするんだけど?
まぁ、また例によってスーツの胸で涙を受け止めているわけですが。このスーツはハンカチでもあるらしい。ただし利用者は美女美少女に限る。役得役得。
しばらくお姉さんの背中を撫でて落ち着かせる。本当に撫でたいのはお尻とかお胸様とかだけど、それをするのは今じゃないってことくらいは、俺にも分かっている。我慢我慢。今はまだその時ではない。
「……っ! すいません、私ったら、また!」
「いえいえ、むしろ泣かせてしまった私の不徳の致すところです。申し訳ありません」
「いえ、私が!」
「いえいえ、私が」
「……」
「……」
「……うふふっ」
「はははっ、やっと笑顔になりましたね。やはり女性は笑顔が一番です」
「もう、マーリン様ったら! うふふっ」
何やらラブコメのようなやりとりをしてしまったな。まさか自分にこんなシーンを演じる機会が回って来るとは。コメディとバイオレンス専門かと思ってたよ。
できればこのままアダルト十八禁路線に……いやいや、焦るな俺。初主演なんだから、ちゃんと台本を読み込んで完璧に演じなければ! モテモテ俳優になるのだ! 自分の全てを出し切るのだ!
えっ、出すってナニを? いやらしい!
「さぁ、それでは朝食にしましょう。昨夜は大したものを食べられなかったでしょう? 今朝はいつもより多少豪勢な食事をお出ししますよ」
「まぁ! 流石です、マーリン様!」
「そういうわけですから、皆にも伝えてもらえますか、マナ?」
扉の隙間から覗いていたマナに語りかけると、ガタガタバタバタと駆けていく音が聞こえた。ずっと覗いてたっぽい。
……あの子、もしかしてストーカーの気があるのか? 将来が心配だ。
変質者の俺に心配されるなんて、ものすごく将来が心配だ。
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