086
う……むぅ……はっ!? どうなった!? 俺、どのくらい寝てた!?
――只今の時刻は四月十二日、午前五時二十二分、本惑星消滅まで、あと四年五か月です。
えっと? 意識が失くなったのは何日だっけ? ああ、十一日だったな。ってことは、半日ちょっとしか経ってないのか。意外に早く目が覚めたな。もう俺も歳かね? ゲートボール始めるか? ルール知らんけど。
寝てる間に何か異常は……深刻そうなのは無いな。
分身の数は変わってない。誰かに殺られたりはしてない。けど、東の森林を探索中の分身の葉は鹿に齧られてる。うぬぅ、鹿、許すまじ!!
深刻そうじゃない異常はあちこちで起きてるな。はてさて、どれから手を付けていけばいいのやら。
んー、悩んでもしょうがない、適当に片付けていくか。
それじゃ、先ずはパパイヤとマーリンのところからだな。
◇
「あー、おはようクリス。君はここで何をしてるのかな?」
「あっ! おはよう、パパイヤさん。見ての通り、添い寝だよ!」
おおう、なんて屈託のない笑顔だ。自分の行動に一片の疑念も持ってないな。
まぁ、美少女と同じ毛布に
ん? 肩と鎖骨?
「なぁクリス、お前、もしかして裸か?」
「うん、そうだよ! 最近、寝るときは裸なんだ!」
うっはっ! 裸の美少女と朝チュンとか、それなんてエロゲ!?
いやいや、落ち着け俺! だからクリスは男だってばよ! 裸の美少年と朝チュンとか、それなんてBLゲー!?
「マーリンさんが用意してくれた毛布が柔らかくて気持ちいいからさ、裸で寝ると気持ちいいんだよね」
あー、俺の形状変化で作った毛布な。キキのために柔らかい毛布が欲しくて作った、綿毛布っぽいフワフワのやつ。
赤ちゃんの柔肌にも安心だから、そりゃ気持ちいいだろう。裸になりたいっていうのも分からなくはない。人前で裸にならないならそれでいい。人前で裸になるのはただの変態だからな。つまり俺だ。
「まぁ、とりあえず服を着てくれ。聞きたいこともあるしな」
「うん! じゃあ、服取ってくるね。隣の部屋に脱いできたんだ」
おうふ、何故毛布を胸から下に巻きつけるんだ? それは女性巻きだろう! 無駄に女子力……美少女力が高くて困る。
うん? 隣の部屋?
ってことは、来るときは隣の部屋から全裸だったってことか?
露出狂かよ! いや、同じ建物の中だから裸族か? セーフ?
いかん、クリスの変態化が進んでいるかもしれん。このままでは取り返しのつかない事に……なってもいいかも? 男の娘だしな。
まぁ、
◇
「それで、どうやら俺は半日くらい寝てたらしいけど、その間に何かあったか?」
「うん、パパイヤさんとマーリンさんが急に倒れちゃったから、皆びっくりしてたよ。街の明かりも消えちゃったし、大魔王様に何かあったのかもしれないって、アローズさんが深刻そうな顔してた。僕もちょっと驚いたかな? でも心配はしなかったよ? パパイヤさんたちが強いのは知ってるから」
謎の信頼感だな。ちょっとこそばゆい。
ふむ、この地下都市の明かりは俺の光魔法で照らしてるからな。俺が寝てしまったから同時に消えてしまったんだろう。
今はもう明かりが戻ってる。本体の盆地と同じ、早朝の白い陽の光が街を照らしてる。部屋の中に差し込む光がますます朝チュンっぽい。まぁ、鳥がいないから『チュン』は無いんだけど。
クリスのTシャツショートパンツ姿もよく見える。この季節だと、その格好は寒くない?
まぁ、この地下都市は気温が常に一定だから、平気だとは思うんだけど。
一年中、暑くもなく寒くもなく、雨も振らないし乾燥してもいない。引きこもるには最適だな。あとはネットとPCがあれば完璧。俺も引きこもりてぇ!
「そうか。けど、明かりが消えたなら大変だったんじゃないか?」
「まぁ、ちょっとはね? でも、ギーさんの火魔法があったから、そんなに大変でもなかったよ? 夕御飯が焼いたお芋と干し肉だけだったから、それがちょっと不満だったくらい?」
あー、それはすまんかったな。いつもは
まぁ、笑いながら話してるのを見る限り、それほど深刻な騒ぎにはならなかったっぽい。なら良し!
「ラナさんは倒れたマーリンさんに縋り付いて泣いてたよ。もう大号泣。今もつきっきりなんじゃないかな? 好かれてるね、マーリンさん」
うん、正解。
別の部屋に寝かされてるマーリンの傍で寝落ちしてる。クリスみたいに添い寝するんじゃなくて、ベッドの上に肩から上だけ置いてる。……裸で添い寝でもよかったのに。
いや、意識のないときに嬉し恥ずかしイベントがあっても意味がない。嬉し恥ずかしをリアルタイムで嬉し恥ずかしするからいいのだ! だからこれでいいのだ!
実はもうマーリンも目が覚めてるんだけど、空気を読んでまだ寝たフリしてる。美女の寝顔を見て喜んでるわけじゃないよ?
好かれてる……んだよなぁ?
『変態』技能のおかげでほぼ人化できたから、その好意に応えるのはやぶさかでない。むしろオールウェイズウェルカム。むふふ……ぐふふふ。
俺が日本人だからか、この世界の女の子はみんな美女美少女に見えるんだよな。まぁ、一部に『おや?』って人もいるけど。
誠実さがない? ヲタクにそんなものがあるか!
ゲームじゃ推しを攻略したら全キャラ攻略するだろう? その後目指すのはハーレムエンドだ! 欲しいものは全部手に入れる! ヲタクの辞書に節操という文字はないのだ!
「あっ、何か緩い顔してる。いやらしいこと考えてたんでしょう? もう、しょうがないなぁ」
おっと、クリスは勘がいいな。けど、ヤキモチを焼いてはいないっぽい。懐が深いな。
うーん、クリスは攻略対象か? 対象かもなぁ。見た目は美少女だし。
まぁ、誰の相手をするにしても、攻略は惑星崩壊の危機を回避できてからだ。
ギャルゲーパートはメインストーリーをクリアしてから、じっくりねっとりとな。むふふ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます