082

 ふむ、大分大きくなったな。豚領主が甲斐甲斐しく世話をしてくれたから、この苗木ちゃんもそろそろ人に化けられそうな大きさにまで育った。

 ……夜は俺がお世話してやってるんだけどな。忘却したい。けど、忘却してもまた次の夜には同じ事を繰り返すだけ……畜生!


 まぁいい、とにかく人化だ。技能スキルの人化じゃなくて、まだ形状変化のなんちゃって人化だけど。

 ボリュームが足りないから、なれるのは子供か小柄な大人だな。


 いや、分かってる。分かってるんだ。

 苗木ちゃんが人化したら、とても危険だってことは。豚領主を打擲する子供だなんて、犯罪臭しかしない。それは分かってる。


 だがしかし! 完全なる人化を会得するには繰り返し訓練するしかないのだ!

 技能が繰り返しの訓練で習得できることは分かってる。調理とか錬金術はそうやって手に入れたからな。

 だったら、人化の技能も繰り返しの訓練で獲得できるはず。努力と根性で勝利できるはずなのだ!

 けど、今は変形の練習を出来る分身がパパイヤと苗木ちゃんしかいない。他は人と一緒だから、下手に変形の練習をすると身バレする恐れがある。

 ハリーだけはヤギママと赤ちゃんキキが相手だから大丈夫かもしれないけど、木に戻るとヤギママに喰われそうなんだよな。割と切実に身の危険を感じる。あの、何を考えているか分からないヤギの目は怖い。


 更に言えば、賢者のじゃロリちゃんも怖い。

 なんだよ、離れたところにいる特定の名持ちの変化を知れる技能スキルって。ストーカーなの? 念写されてるの? ジョース○ー! きさま! 見ているなッ!

 俺自身でゲットした称号や技能が対象っぽいから、多分眷属経由でのゲットなら問題ない。けど、流石に人化は俺じゃないと訓練もできないからなぁ。

 ということで、ゲットしたら賢者ちゃんにバレてしまう可能性大だ。

 人化ゲットがバレたら警戒されるかもしれない。軍の構成員は一斉チェックだなんてこともあり得る。スパイを警戒するのは当然だからな。

 傭兵なんて、一番最初に疑われるに違いない。そしたら、今までの苦労が全部パーだ。新技能ゲットは諸刃の剣だな。


 だがしかし! 俺様はそんなことで諦めない! 早く人間になりたい!


 確証があるわけじゃないけど、亜空間の中なら技能をゲットしても大丈夫なんじゃないかと思ってる。あの中は、俺が入り口を開かない限りこの世界とは繋がってないからな。情報が伝播しないかもしれない。

 本体は亜空間の外にいるっていうところが懸念点だけど、こればかりはやってみなくちゃわからない。天の声の仕様を把握するためにも挑戦する価値はある。お前を丸裸にしてやるぜ、天の声!


 ということで苗木ちゃん、亜空間へゴーッ!

 そして変身だ!


 ♪チャラララ〜ン♪


 光で見えないけど、全裸経由で変身中ー。


 ♪キラーンッ!


 はい、ここで謎の3D回転ー。亜空間だから勝手に回っちゃうんだよねー。


 ♪シャキーン!


 苗木ちゃん美少女バージョン、光・臨! ビシッと決めポーズ! でもまだ微妙に回ってる。


 ふむ、初の女性型だけど、思ったより悪くないな。子供にスリーピースはどうかと思ったけど、造形がいいからよく似合ってるんじゃなかろうか? 七五三っぽくはある。

 これもラナやマナやクリスのおかげだ。じっくりたっぷり見させてもらったからな。参考にさせてもらいました。ありがとう。

 いやいや、あれは治療だ。不可抗力だった。

 あっ、クリスは男だった。でも一番参考になったのは事実なんだよな。複雑。


 そして人化はゲットできなかった模様。残念。

 まぁ、一回で諦めたりはしないけどな。俺は諦めの悪い男。諦めたらそこで試合終了ってバスケの先生も言ってた。でもバスケは時間が来たら試合終了だよ?


  それはそれとして、この身体。

 十歳くらいで、子役時代のダコ○=ファニングに似せてみた。○宙戦争のコタちゃんは可愛かったからな。仕方ない。

 あのときの役名は確か……『レイチェル』だったっけ? じゃ、この分身の名前もレイチェルにするか?

 いや、ハリーたちに合わせて『ロキシー』だな。そこだけは統一しておこう。

 声も今まで通りの○崎愛生声で。そして愛され系キャラになるのだ! うへへ?


 ふむ。おっぱいもちゃんと柔らかいな。ちっちゃいけど、フニフニとした弾力がある。これは癖になりそうな柔らかさだ。


 フニフニ。


 ふむ。


 フニフニフニフニ。


 ふむふむ。


 フニフニフニフニフニフ……


 ――変態を獲得しました。


 ギャーッス!?

 とうとう獲得しちゃったよ! いずれ獲得するんだろうなとは思ってたけど、このタイミングかよ! いや、確かにこのタイミングだろうよ、天の声さんは正しいよ!

 なんてこった、とうとう一線を越えてしまった、踏み越えてしまった! 心当たりがあるだけに反論できない! ぐぬぅ。


 仕方がない、変質者から変態へのジョブチェンジだ。格上げされたと思って受け入れよう。

 ランクアップだ、ネクストステージへ進んだのだ。ソレ、なんのステージだよ、アングラ過ぎるだろ!


 まぁ、ゲットしてしまったものは仕方がない。この情報が伝わったか、あとで賢者ちゃんに確認しておかないとな。

 もし伝わっていたとして、大魔王が変態になったということを賢者ちゃんはどう考えるかな? 脅威と捉えるか、それとも……呆れて討伐を中止してくれたらいいな。してくれないかな? 山奥に変態がいるだけだし、放っておいていいんじゃない? 駄目?


 とりあえず亜空間から出るか。あまり長居してジャンボサボテンを刺激したくない。

 こいつもどうにかしたいなぁ。なんか一回りでかくなってる気もするし、邪魔で仕方がない。


 はい、というわけで、豚領主の屋敷にリターン!


 ガタッ!


 むっ!? 誰かいる!?

 ここは豚領主のコレクションルームだから、それ以外の人が入ってくるとは思わなかった! 豚領主も夜しか来ないし、昼間のこの時間に人が来るとは! ぬかったわ!


「き、君は誰だ!? どこから入ってきた!?」


 それは俺のセリフだ。誰だ、この青年?

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