081
よしっ! よしよしよぉしっ!
居たよ居ましたよ、タイラントなレックスさん!
それも、最近の学説で言われてたみたいな毛の生えてるやつじゃなくて、全身ツルツルのエステ要らず仕様!
実はレックスさんは走れなかったなんて説もあるみたいだけど、こいつはちゃんと走ってる。頭から尻尾の先まで十メートル近いのに結構速い。大迫力だ。
ぶっちゃけ、某公園映画とほぼ同じだな。やっぱ肉食恐竜の王様はこうじゃなきゃ。
あの映画と違うとすれば、身体の模様かな?
あの映画だとブラウン系のライオンカラーだった気がする。こいつもブラウン系だけど、グレー系の砂っぽい模様が入ってる。砂漠仕様だな。けど、喉元は赤い。
ラプトルもそうだったけど、このサバンナの恐竜たちはおしゃれさんだな。
まぁ、迷彩や縞模様で周囲の風景に溶け込むっていうのは、狩りをする側にも狙われる側にもメリットがあるはず。無意味な柄じゃなければ全然アリなんじゃないかな? 大阪のオバチャンみたいな紫のヒョウ柄とかはどうかと思うけど。飴ちゃん食べる?
さてと。
レックスさんが居るのはいいとして、どいつが大顎魔王だ?
いや、群れだからさぁ、どれが
あの映画でレックスは一匹だけだった記憶があって、ここでも一匹だけだと勝手に思い込んでた。
けど、普通に考えたらそんなはずないんだよな。ミミズや細菌みたいに単体繁殖ができるならともかく、繁殖するならオスメス一匹ずつは必要なはず。クマノミなんかは性転換するけど、それでも二匹居ないと繁殖できないしな。
で、この群れは一、二……七匹か。
この中のどれかが魔王なのか?
いや、他にも群れがいるかもしれないよな。一匹見つけたら三十匹は居ると思えっていうし。それはGか。
仮にGレベルで三十倍いるとすると、今回見つけたのが七匹だから、全部で二百十匹居ることになる? 多いな!
いや、種族として二百匹は少なすぎるか。千匹くらいいても普通に絶滅危惧種だ。もっといると思ったほうがいいな。うへぇ。
これは困った。この走竜の狩場は結構広いし、魔王を見つけるのは手間取るかもしれん。何か効率的に探す方法を考えないとな。
やれやれだぜ。
◇
――ティグリス・ラプトル(オス・三歳)を眷属にしました。
ハッハッハッハッ!
こんな広いエリアをチンタラ歩いて探していられるか! 俺は風になるぜ! ハイヨー、シルバー! いや、シルバーじゃなくてライオン色のラプトルだけどな!
調教
騎乗用ってことなら馬竜も捨てがたかったんだけど、あいつら草食なんだよなぁ。危うく齧られるところだった。
あいつらは敵。うさぎ、バッタ、鹿に続く四番目の敵対的種族に認定だ。今に見てろ!
その点、ラプトルは肉食だからな。俺が齧られる心配はない。素晴らしい!
めっちゃ簡単に懐いたしな、こいつ。鹿肉喰わせて背中を撫でてやっただけで即オチだ。ナデポチョロインかよ。いや、こいつオスだったな。えっと、男の場合はチョロ夫? チョロ松? まぁ、チョロかったんだよ!
きっと腹が減ってたんだろうな。群れから
良かったな、お前、俺の眷属になれて。命を拾ったぞ?
種族名はティグリス・ラプトルなのか。それじゃユーフラテスとかもいるのかね? ナイルとか黄河とか文明大河シリーズで。
ああ、もしかして、ティグリスってタイガーのこと? 大河だけに? 虎柄ラプトルだもんな。なるほど。
うーん、裸馬ならぬ裸恐竜だから、ちょっと乗りづらいな。いずれ鞍とか手綱とか作るか。
街で買ってもいいな。馬用をちょっと改造すれば使えるだろ。その場合は馬具ならぬ竜具になるのか? なんとなくカッコいいな!
今は体術と形状変化で何とかしよう。根っこを絡めて、ラプトルの背中からパパイヤが生えてる感じで。
うーん、我が事ながらクリーチャー感がすげぇ。これなんてラヴクラフト?
いっそ、あのレックスたちも手懐けるか?
いや、あの図体だとかなり食費が掛かりそうだよな。うちのエンゲル係数がバカ上がりしそう。このぐらいのサイズが丁度いいか。
まぁ、収入がほとんど無いからエンゲル係数なんて出せないんだけどね! 基本、自給自足と狩猟採集だし。畑と森の恵みで生きてます。
田舎って言うな! 都会より美味いもの食ってるぞ! 鮮度抜群の無農薬だ、ロハスだぞ!
とにかく、レックスはないな。もっと大人しくて小型の恐竜ならアリ。つまり家畜だな。
馬竜じゃないやつはいないのかね? 鹿竜とか兎竜とか。いや、草食系はだめだな。俺が喰われる。
誰だ、草食系を大人しいだなんて言い出したやつは! メッチャ凶暴じゃねぇか!
けど、眷属に出来ても連れて帰るのは無理だろうなぁ。盆地の冬は寒いし、爬虫類だし。
このラプトルも、可哀想だけどこのサバンナでしか育てられないよなぁ。
よく見ると可愛い顔してるんだけどな。
大きく開いた口から除くギザギザの歯とか、ギョロリと大きくてよく動く目とか。見慣れると愛嬌がある。
身体の割に小さい前足やスベスベの鱗の手触りも可愛い要素だな。『手、ちっちゃーい、お肌スベスベ―』ってやつだな。まぁ、爪は凶悪に尖ってるけど。
意外と鳴き声も可愛いしな。まさか小鳥みたいに『ピピピ』って鳴くとは思わなかった。最初に聞いたときは、ビックリして小鳥を探しちゃったよ。
こいつの鳴き声って分かったときには、鳥が恐竜の仲間だって説を思い出したね。あれは正しかったのかと実感。
ジュラ紀の春も、あちこちで合唱してたのかもな。ちょっとホッコリ。
もう春を過ぎつつあるから、このサバンナでそういうサエズリを聞けるのは来年以降だな。惜しい、タイミングを逃してしまったか。
やっぱ、このサバンナは俺の支配領域に加えるべきだな。王国や皇国よりも先に手に入れて、この恐竜王国を保護しなければ。そして地名を『タンバ』にするのだ! 『トヤマ』でも可! 山、無いけど!
先に
よし、そうと決まれば一刻も早く大顎魔王を見つけなければ!
首ならぬ、その顎を洗って待ってろ! 顎狩りだ!
――騎乗を獲得しました。
おあつらえ向きに
行こうぜ相棒、スピードの向こう側へ!
「ピピピッ!」
◇
「うー、きゃあーっ!」
「楽しいかい、キキ?」
サバンナではジョッキーでハンターでも、盆地では馬でパパ。それが大魔王。
いいのさ! 娘の笑顔が見られるなら、紳士は馬になることも厭わないのさ!
さあ行くよキキ、五冠王だ! GI制覇だ!
パパ、世界一の馬紳士になるからな!
ウイニングライブでパパの歌声に酔いしれなさい!
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