063

 というわけでやって来ましたオークの集落。


「ブヒィーッ!」

「ギィギィッ!」

「フゴッ!」


 いきなり熱烈歓迎ですね。みなさん棍棒を片手に大興奮です。歯を剥いて威嚇してます。

 うーん、かつての仲間だって分からないものかね?

 分からないか。ひと回り大きくなった上に、俺の分身たちと同じようにスーツ&眼鏡だもんな。風呂にも入ってるから、臭いも石鹸の優しい香りだし。豚紳士だ。

 えっ? 豚頭にどうやって眼鏡を掛けてるのかって? 紐ですが。耳から紐で吊るしているだけですが何か? ファンタジーな不思議パワーで何とかしようとして挫折しましたが何か!?

 もう眼鏡無しでもいいかなとも思ったんだけどさぁ、やっぱ紳士の本体は眼鏡だからな。身体なんて飾りですよ。偉い人にはそれがわからんのです。


「里帰りだというのにご挨拶だな。ほら、土産だ。喰え」


 亜空間から塩漬け肉と魚、カニ、アノマロカリス、芋を出して投げ渡す。あ、アノマロカリスとカニはまだ生きてるな。まぁ、すぐに喰うから関係ないか。挟まれないでね。


「フゴッ!」

「フゴーッ!」

「プギィーッ!」


 うーん、やっぱり何を言ってるのか分からん。多分『それはオレのだ!』『アタシにも頂戴!』的な事を言っているんだとは思うんだけど。飢えてるなぁ。

 ゼブはかなり流ちょうに話せるんだよな。それも〇林清ばりの超男前ボイスで。だから、オークが喋れないわけじゃない。ネコ耳たちも、独自言語だけど喋ってるし。

 けど、やっぱりこいつらの言ってる事が分からない。言語ですらない鳴き声ってことなんだろうなぁ。

 やっぱオツムの出来か? 豚頭だから脳みそも豚並みだったり? でも二足歩行してるから両手が使えるわけで、だったら脳は相応に発達してるはずだよなぁ……分からん! もうファンタジーだからってことにしておくか! うん、そうしよう! 分からない事を考え続けてると禿げるかもしれないしな!


「ブグルアァーッ!」


 お? なんかデッカイ声で叫んで……鳴いてる奴がいるな。食料に群がってた奴等の動きが止まった。ビビってる感じ?

 ああ、この集落のボスか。他のオークよりひと回り大きいやつ。肉付きもちょっとだけいい。他の奴等から上前を撥ねてるからな。今回もそうしようって感じか。お前の物は俺の物、ジャイアニズム万歳ってわけだ。

 でも残念ながら領域支配者エリアボスじゃないんだよな。既にこのエリアのボスは俺に倒されてるから。


「ブガァッ!」


 ん? 俺に威嚇してる? もっと出せって言ってるのかな? けど、こっちが言いなりになると主従関係がなぁ。俺がエサを与えているのであって、エサを貢いでるんじゃないことは理解させないと。調教というか、躾の基本だ。だから無視!


「ブグルゥーッ!」


 むっ、襲い掛かって来やがった! 気の短い奴め、そんな棍棒で殴られたら痛いだろうが! 殴られないけど!

 ていっ! 避けて足払いからのサッカーボールキック! 悪い棍棒は青空へゴールだ! そして更に!


 ドゴォオンッ!


「グビィッ!?」


 俯せに倒れているボスのボディを蹴り上げる!

 ゼブの身体って、柔軟性も高いんだよな。ほぼ垂直まで足が上がる。ボスの身体も打ち上がる。流石ゴリマッチョ、パワーが段違いですわ。


「ブヒィーッ、ブヒィーッ」


 落ちてきたボスが腹を押さえてのたうち回ってる。内臓破裂はしていないだろう。無駄に多い脂肪で衝撃は吸収されているはず。

 しかぁし! 躾はまだこれからだ! 覚悟はいいか!?

 ボスの背中を踏み付け、俯せの状態に姿勢を固定する。そして!


 スパアァンッ!


「ブヒィッ!?」


 ボスのケツをスパンキング! 腰蓑で半分隠れてるけど、汚いのだけは分かるケツを平手打ち! 後でアルコール消毒するから気にしない!


 スパアァンッ、スパアァンッ!


「ブヒィッ、ブヒィッ!?」


 スパンキング、スパンキング! もう豚の尻を叩くのに何の抵抗も無いぜ! 俺の手は既に尻まみれさぁ! ハハハハハ……ちくしょう、ちくしょーっ!


 バチィンッ、ベチィンッ、パンッ、ペチペチペチ……


「プギィーーーッ!?」


 僕はっ! 君がッ泣くまでスパンキングをやめないッ! 僕のッ涙が涸れるまでスパンキングをやめないッ!

 せめてこれがメスの尻なら! なんでオスのケツばっかり!

 あァァァんまりだァァアァ!



「ぷぴぃ、ぷぴぃ~っ」


 フー、スッとしたぜ。叩き過ぎで手は痛くなったけどな。

 ボスにさっきまでみたいな凶暴さはもう残ってない。ウルウルしたつぶらな瞳で俺に許しを請う、真っ赤なお尻のブタさんがそこに居るだけだ。

 これは虐待ではない、あくまで調教だ! 俺に豚の尻を叩く趣味はない、だからこれは調教だったのだ! 調教だと言ったら調教なのだ、俺にそんな趣味はない!

 見ろ、他のオークたちも俺の姿に恐れ慄いているじゃないか。オスもメスも尻を押さえて後ずさっている。尻に恐怖を擦り込むことに成功したってわけだな。計算通り!


 ――ハイランドオークを眷属にしました。


 ほら、天の声さんもそう言ってる!

 これで今日からゼブオークおまえたちのボスだ!

 黙って俺についてこい、そのうち何とかなるだろう! バイ〇和一代無責任男!


 よし、これにて調教完了!

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