056
「へぇ、おっちゃんは鍛冶師なんだ?」
「……ああ」
ほほう。ハズレかと思ってたら意外に使えるじゃないか、オッサン。たしかギーとかいう名前だったか?
「じゃ、
「……ああ」
「包丁とか鍋とかも?」
「……ああ」
よっしゃ! 鍛冶が出来るなら、作ってもらいたいものがいっぱいある。包丁にフライパン、寸胴におろしがね。フォークにスプーンにおたまにフライ返し!
鍬や
ああ、
「……武器は作らなくていいのか? 皇国と戦うんだろう?」
「あー、武器ねぇ……どうだろう?」
ぶっちゃけ、俺の戦い方って武器が必要ないんだよな。光魔法と時空間魔法、毒生成で大抵の相手には勝てる。剣や槍を使って肉弾戦する必要がないんだよな。いよいよとなったら亜空間に逃げ込めばいいんだしさ。
まぁ、
武器も皇国軍から鹵獲したやつがあるしな。あー、でも百人分くらいしかないのか。分身全部に持たせるには九千人分くらい足りない。いや、全然足りないじゃん! ちょっとずつ作ってもらっておくか?
けど、それより今は調理器具だ。今ある調理器具は皇国軍からの鹵獲品だけど、種類が少ないんだよなぁ。鍋、おたま、包丁、以上! だもんな。鍋も超デカい中華鍋みたいなやつだけだし、もうちょっと使いやすい小鍋が欲しい。
この村で使われてた鍋も中華鍋っぽいやつだけだったから、この国自体がそういう文化なのかもな。行平鍋とか寸胴とかはないっぽい。
そのあたりの、今無いものを作ってもらいたい。
材料はあるんだ。鉄とか銅とか、錬金術で抽出したやつが。なんなら、アルミとかステンレスも提供できるよ?
けど、錬金術だと全部インゴットっていうか立方体にしかならないんだよな。多少のサイズ変更は出来るんだけど、細かい形の変更が出来ない。気の利かない
「ギーさんはね、皇都で一番の鍛冶屋さんだったんだって。でも、貴族が飾っておくだけの剣とか槍とかを作るのが嫌になってこの村に引っ越してきたらしいよ?」
「……昔の話だ」
「へー、そうなんだ」
本当かね? いや、よくいるじゃん、『わしも昔はワルでのう、ブイブイ言わしたもんじゃったわい』とかいうお爺ちゃん。実はそうでもなかったりするアレ。ソレの鍛冶屋版じゃねぇの? 話半分に聞いておこう。
まぁ、嘘でも本当でも、俺が欲しい鍋やらフライパンやらを作ってくれるならそれでいい。ブイブイカンカン作ってくれ。
ブイブイってなんだ?
「それで、持って行くものはその金づちとヤットコ? と金床だけでいいの?」
「……ああ。火魔法があるから炉と
「なにぃっ!?」
「な、なんだ!?」
火魔法だと!? そんな良いもの持ってんのか、このおっちゃんは!
「火魔法持ってるって、じゃあおっちゃんは名持ちなのか!?」
「い、いや、鍛冶師なら俺くらいの使い手はゴロゴロいる。名持ちになれるほどの達人じゃない」
「あ、そうなんだ? 達人じゃないと名持ちになれないの?」
「……そうだな。上級の火炎魔法を使えるくらいにならないと名持ちにはなれないと聞いた」
ほほう。そういえば、アローズは槍聖術を持ってたな。アレは槍術の上級版ってことだよな。
ライアンは何も持ってなかったらしいけど、名持ちになったら剣術と盾術を覚えてた。あの剣術か盾術が上級になったら、正式な名持ちになれるかもしれん。よし、鍛えるか! ビシバシな!
ビシバシって体罰臭のする擬音だな。前世だと問題になったかもしれん。でもこの世界では平気。にやり。
そしておっちゃん、あんた最高だよ!
「おめでとう。おっちゃんは大魔王様の御眼鏡に
「は?」
命名、ギー!
「っ!」
ビクンッ!
ふふふ、聞こえたかい? 天の声が。
おめでとう。只の眷属から名持ち眷属に昇格だ。普通のおっちゃんからイケてるおっちゃんへ。これからもブイブイ言わせてくれ。ブイブイ。
さて、それじゃ早速ステータスチェックだ。お前の本気を見せてみろ!
――――
名前:ギー
種族:ヒューム(オス)
年齢:三十五歳
HP:★★★
MP:★★
腕力:★★★★
体力:★★★
知能:★★
敏捷:★
技巧:★★★★★★
技能:『槌術』『鍛冶聖術』『火魔法』(『成長促進』)(『毒耐性』)(『言語理解』)(『病気耐性』)
称号:『鍛冶聖』
眷属:
特記:『ボン=チキングの眷属』
――――
マジか!? 本気出し過ぎじゃね!?
何よその『鍛冶聖』って称号! ちゃんと名持ちじゃん! 鍛冶も鍛冶聖術だし! 話が違う!
あっ、そうか! 名持ちにしたから、強制的にランクアップさせられたのか!
無理やり名持ちにしたから、元々持ってた技能がランクアップして本物の名持ちになる条件を満たしたと。ソレに称号がついてきたんだな?
どうせなら火魔法と槌術もランクアップしてくれてたら良かったのに。そこまで大盤振る舞いじゃないあたり、この世界のセコさが垣間見えるな。
ステータスは、いかにも職人だな。技巧が異常に
俺も名持ちになったからあのステータスだったのかね? まぁ、検証する必要は無いか。その方法が無いし、もう過ぎたことだしな。俺は
「神言だったっけ? 聞こえたかい? これであんたも俺たちの正式な仲間だね」
「あ、ああ。……俺が名持ちに……信じられん」
おっちゃん、手のひらを見てるけど、何か書いてある?
「信じようと信じまいと、それが現実だよ。これからその力、大魔王様のために役立ててくれ。ま、とりあえずは農機具と調理器具かな」
「……ああ……ああ! 作るとも! いや、作らせてくれ! 何だって作って見せる!」
「お、おう。頼もしいな」
顔を近づけるなよ! むさいオッサンの顔をアップで見せるな!
そんなに嬉しかったのかね? まぁ、やる気が出たようで何よりだ。さっきまではイヤイヤって感じだったもんな。
「ねぇ、ギーさんってそんなに凄い名持ちになったの?
「ん? ああ、鍛冶聖って称号が付いてるから、多分世界屈指の鍛冶師になったんじゃない?」
「えーっ、ずるい! 僕も何か称号が欲しかったな!」
プーッと頬っぺたを膨らませた見た目は普通に元気な美少女なんだけど、でも男なんだよなぁ、
「まぁまぁ、クリスも頑張ればそのうち称号が付くさ」
「そう? そうだね! よし、僕も頑張るよ!」
「おう、ほどほどにな」
魅了と闇魔法を頑張られたら、きっと大変な事になる。それこそ『傾国』なんて称号が付きかねん。『魔女っ子』くらいで勘弁してくれ。そのための協力ならしよう。喜んでしよう!
おっと、お姉さんとお嬢さんも来たな。
それじゃ、お引越しだ。秘密の地下都市へ四名様ゴアンナーイ!
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