055

 こいつ、動くぞ!

 素晴らしい、本物の動く肉体だ! 生の身体、生きている体!


 ってか、臭っ!

 こいつもか! こいつも風呂に入ってないのか!

 八歳って出てたな。つまり八年間風呂に入ってないってことかよ。ヤギママより酷いじゃん! 異世界不潔すぎ!

 なんかあちこち痒いし、兎に角風呂だ! 俺は風呂に入るぞ!



 ふう、さっぱりした。まさか石鹸を丸々一個使う事になるとはな。こころなしか、少し細くなったようにも思えるし。どれだけ汚れをため込んでたんだ、この身体。

 うん? どうしたキキ? 見知らぬ人、じゃない、オークが珍しいか?

 珍しいよな。初めて見るんだもんな。

 大丈夫、怖くないよ。中身は君のパパだから。羊の皮を纏った狼は危険だけど、オークの皮を被った豆は……意味不明だな。俺ってなんなの? とりあえず、あそこの皮は被ってないな。大人じゃ~ん?

 おや、ヤギママがいない? さっきまで居たのにな。あ、外で草喰ってる。家の中にもあるのに。

 警戒してる? まぁ、初めて見るオークだろうしな。知らない生き物が近付いてきたら警戒して当然……って、オレは全然警戒されてなかったな。豆だから? エサとして見られてた? うぬう。


 ぐうぅぅ……。


 むっ、考え事してたら腹が減ったな。というか、乗り移ったときから腹ペコだったんだけど。

 この身体、腹が出てるけど太ってるわけじゃないっぽい。あばらが浮いてるし、栄養失調かもしれん。

 そりゃそうか。あの荒れ地で採取生活だもんな。太れるほどの食い物があるわきゃない。

 とりあえず飯を食おう。俺の眷属なら病気耐性と成長促進があるはずだから、食えば元気になれるはず。ってか、マジ腹が減って倒れそう。


 美味い! 美味すぎる!

 って、埼玉ローカルCMじゃないけど、新鮮な鱒の塩焼きも焼いてバターを乗せただけのジャガイモも美味い! 鹿肉のステーキニンニク味なんて、赤ワインを樽で飲みたくなるくらい美味い! けどワインはないんだ! 作らないとな!

 今までも疑似知覚のおかげで味覚はあったけど、こんなに美味くは感じなかったぞ? なんでだ? 空腹は最高のスパイス? それともこれが疑似と本物の感覚の違い?

 ま、どうでもいいか! 美味しい事はいい事だ。美味しいは正義! 正義執行だ! 正義しまくるぜ!

 うん? キキも食べたいのか? えーっと、鱒なら大丈夫かな? 小骨も皮も取ってと。美味しいか? そうかそうか。


 ふう、食った食った。

 いやぁ、ヒトに擬態した身体じゃ味見くらいしかできなかったからな。久しぶりの満腹感だよ。ありがとう、オークくん。食べるって大事だな。


 ふむ。

 よし! それじゃ、この身体にも名前をつけてやろう!

 俺が自由に動かせる生身の身体だしな。言わばハリーたちと同列だ。名前があってもおかしくない。

 それに、こいつが名持ちになれば技能スキル習得を俺自身で実験できる。多分、オークしか覚えられないスキルとかがあると思うんだよな。それを豆が使えたら強いかもしれないし。具体的にどんなのかは分かんないけど、やってみる価値はある。

 まぁ、オークの技能って言ったらアレしかないけどな。夜に役立つアレ。ぐふふ。


 えーっと、それじゃどうするかな……乗って動かす……生き物……初號機とか? いや、この肌は紫じゃないしペールオレンジだし。あ、紫は拘束具の色か。あいつも中身はペールオレンジだったな。けど、暴走されるのはなぁ。もう誰も止められないわ。

 それじゃゾイ〇か? ブタ型って居たかなぁ? 記憶にないなぁ。ゴリラはいたけど、オークとゴリラは違うよなぁ。

 単純に豚キャラから貰ってくるか。ブー〇ンとかおだて〇タとか。カッコいい系だとポル〇かな。格好いいとはこういう事さ。どういう事さ?


 よし、命名『ゼブ』!


 暴食の悪魔ベルゼブブから貰ってみた。ベルだと女の子っぽいからな。オークブタって暴食のイメージがあるし、厨二的でいいんじゃなかろうかと自画自賛。


 ――固有名『ゼブ』を獲得しました。――


 おっ、名持ちになったメッセージが! そうか、俺が意識を乗っ取ってるから俺に聞こえたのか。

 眷属欄にも追加されてるな、よしよし。

 では早速ステータスをチェックだ。要チェックや!


――――

名前:ゼブ

種族:ハイランドオーク(オス)

年齢:八歳

HP:★★★★

MP:

腕力:★★★★★

体力:★★★★

知能:

敏捷:★★

技巧:★

技能:『悪食』『絶倫』(『成長促進』)(『毒耐性』)(『言語理解』)

称号:

眷属:

特記:『ボン=チキングの眷属』

――――


 おおう、なんという極振りステータス!

 お前脳筋過ぎるだろ! 乳児キキより頭悪いってどういうことだよ! それ脳じゃねぇよ、全部筋肉だよ!

 ステータス的には完全に前衛だな。腕っぷしはかなりのもんだ。身体もデカいし、盾を持たせて壁役タンクにしてもいい。

 敏捷も、星ふたつなら悪くない。動けるデブ……はパパイヤと被るな。こいつはマッチョ系に育ててみるか。素早いマッチョ。スピードマッチョ。

 その他のステータスは残念すぎるけど、俺が操るから問題ないか。知能も技巧もなんとかなる。

 あれ? もしかして、こいつって凄く強くない? 俺が操れば剣も盾も槍も使えるし、多分魔法も使える。試しに光魔法……ほら、ピカピカ。風呂上がりで全裸だから放送倫理に配慮してみました的な? 四つある乳首も光らせてみました。

 これ、完全に槍聖アローズを超えてるな。ライアンなんか雑魚だ。すげぇな、ハイランドオーク。

 あの集落っていうか巣、制圧するか。戦力として魅力的過ぎる。


 そして、予想を裏切らない技能たちも魅力的すぎる。もう既に持っていたとはな。

 これは早急にくっコロさんを見つけ出さねば。やはり定番の女騎士さんか、それとも聖女さまか。

 そして疑似知覚で……ふふふ……ぐふふふ……うへへへへ。

 おっと、一部巨大化してしまったぜ。でも光ってるから大丈夫! BDでは消せますよ!?

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