044

 昼寝じゃなかった! 病気だった!

 夕方になっても起きてこないから、おかしいなとは思ってたんだよ! まさか、村の全員がダウンしてるとは!

 うわぁ、目から鼻から血が流れ出してるよ。ウィルス性の出血熱か? かなりエグイ。密林の近くだもんなぁ。ヤバいウィルスを持った生き物がいてもおかしくない。それを拾ってきちゃったんだろう。

 既に何人かお亡くなりになってる。ピクリとも動かない。南無。


 いや、ヤバいじゃん!

 俺、毒は平気だけど病気は駄目だよ、死んじゃうよ! 種一個だけだけど、こいつはもう他に移動はさせられないな。拡散させるわけにはいかない。

 いや、待て待て!?

 ここはファンタジー世界だ、俺の常識が通用するとは限らない。分身一体が感染したら、全個体が病気になる可能性もある。だって、俺は分身全部ひっくるめてひとつの俺だからな。

 そうしたら、この盆地どころか、分身が存在する場所全部が汚染されてしまう! 感染爆発パンデミックどころじゃない、感染超爆発ビッグバンデミックだよ!

 まさか、キキやネコ耳たちにも感染してしまう!? それは駄目だ、ダメすぎる!

 もしネコ耳には感染しない病気だとしても、俺が倒れたら水が供給されなくなっていずれ死んでしまう!

 ヤバいよヤバいよ、マジヤバいよ!

 ステータスは……よし、まだ感染していないな! それじゃ、いまのうちに逃げるぜ! あばよ、とっつぁ~ん!


 ――病気耐性を獲得しました。


 ん? おう。

 なんか、逃げる必要はなくなったっぽい。このパターンは久しぶりかも? やっぱ、生きるのに必要な技能スキルは優先で貰えるのかな。もしかして、これが『最適化』の効果か?

 確か、耐性系は常時発動のパッシブスキルだったよな? まだ毒耐性しか持ってないけど。

 だとしたら眷属にも反映されるはず……どれ、キキのステータスは……うん、あるな。ヤギママにもある。よし、これで俺の眷属が病気になる心配はなくなった!


 いやぁ、実は病気が一番心配だったんだよな。キキが病気になったらどうしようって。

 俺は治癒魔法を持ってないし、盆地には医者も居ない。助けられる手段が無い。

 けど、耐性が出来たなら、滅多な事では病気になることはない、はず。スクスク育ってくれるだろう。良かった良かった。


 さて、と。

 このタイミングで病気耐性ゲットってことは、忖度しろってことだよなぁ。惑星消滅と同じで、村人を助けろって意味だと思う。もっとハッキリ言って欲しいよな。日本人以外には通じないよ?

 とりあえず、砂漠迂回中のパパイヤに対応してもらうか。

 アーサーは街の城壁下で侵入のタイミングを計ってるし、マーリンはオッサンふたりの、ハリーは赤ちゃんキキの対応がある。動けるのはパパイヤかエグジーだけ。

 砂漠の先にある王国には勇者と賢者が居るらしいから、そこへ向かうのは優先度が高い。エグジーには頑張ってもらわないといけない。ということで、残る選択肢はパパイヤのみ。

 ヒトの村だからなぁ。折角の似合ってるネコ耳だけど、外さざるを得ないか。勿体ない。あとでカチューシャにして付けてやろう。


「大丈夫ですか? 何がありました?」

「うぐぐ、た、助け……」


 とりあえず、生きてる村人に話しかけてみる。ちょっと筋肉質のオッサン。なんか、最近オッサン率が上がってる気がする。

 はっ!? これが『類は友を呼ぶ』というやつか!? もうオッサンは間に合ってる、呼ばなくていい! 誰も呼んでない、お呼びでない!


 けど、助けるって言ってもなぁ。何をどうすればいいのやら。

 とりあえず、生きてる奴等を集めるか。若木も動員しての人海(?)戦術ならすぐだろう。あの一番デカい家でいいか。


 あー、もう五人しかいなかった。オッサンと坊やと娘さん三人。ちょっとオッサン率が下がったな。とりあえず、全員に特製スポドリを飲ませるか。メッチャ汗掻いてるし。

 ……坊やはもう駄目だな。スポドリを飲む力も無い。虫の息だ。

 あ……よく頑張ったな、おやすみ。


 残りの四人だけでも助けてやらないとな。

 うーん、やっぱソレ・・しかないか。


「アンタたち、生きたいか?」

「「「……」」」


 もう返事をする力も無いらしい。でも続ける。


「オレはアンタたちを助けられる手段を、ひとつだけ持っている。けど、それは後戻りできない道だ。もう今までの暮らしはできないかもしれん。それでも助かりたいか?」

「「「……」」」


 微かに四人の口が動いた気がしたけど、声にはなってない。


「生きたいなら、受け入れろ。俺の配下になれ」

「「「……」」」


 眷属化。

 俺の配下になれば、病気耐性が有効になる。症状が無効または改善される可能性が高い。というか、俺にとれる手段はこれしかない。これに賭けるしかない!


「死にたくないなら、オレに従え!」

「「「……」」」


 もう声が聞こえてないのか? 大声出すのは恫喝みたいでいやなんだけどな。おい、話術、しっかり仕事しろ。お前がやらずに誰がやるんだ! 真造人間は居ないんだぞ! いつやるの、今でしょ!


「生きたいのか、死にたいのか、どっちだ!」

「し、死にたく……な……」

「……い……や……」

「う……ぐぅ……」

「なり……ま……」


 ――ヒューム(オス・三十五歳)を眷属にしました。

 ――ヒューム(メス・二十歳)を眷属にしました。

 ――ヒューム(メス・十六歳)を眷属にしました。

 ――ヒューム(オス・十三歳)を眷属にしました。


 よしっ!

 ……んんっ?

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