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 ――話術を獲得しました。


 やっぱ生えたか。まぁ、これからも人材――人じゃないかも――を引きぬいて戦力の拡充と相手の弱体化を図るんだから、あって困る技能スキルじゃない。むしろ必須。

 けど俺、ヲタクなんだけどなぁ。話の上手いヲタクってどうよ? それ本当にヲタクか? まぁ、大魔王なヲタクは俺が初めてだろうしな。某ありふれた錬金術師さんは魔王止まりだったし。大魔王な俺の方が上だな!

 まぁ、それは置いといて。

 その話術で誑かされたカサバル兄さん改めアローズのステータスは……っと。


――――

名前:アローズ

種族:ヒューム(オス)

年齢:二十九歳

HP:★★★

MP:★

腕力:★★★

体力:★★★

知能:★★

敏捷:★★

技巧:★★★

技能:『剣術』『槍聖術』『体術』『気配察知』(『成長促進』)(『毒耐性』)(『言語理解』)

称号:槍聖

眷属:

特記:『ボン=チキングの眷属』

――――


 んー、そこそこ? ライアンの上位互換って感じか。ヤギママとどっこいどっこいかな? 名持ちだからって、突出した何かがあるわけじゃないんだな。

 ってか、あれだけ衰弱してるのにHPは三ツ星なんだな。ステータスに表示されるのは十全の状態ってことか。実際の健康状態は目視で確認するしかないと。ステータス画面の落とし穴だな。

 これはキキやヤギママ、ガンモが病気になっても気づけないかもしれないってことか。気を付けないと。オッサンふたりは知らん。いい大人なんだから、体調管理くらい自分でやれ。

 槍術が槍聖術になってるのは『さすが名持ち』って感じだな。なんか特別感っていうの? 『そこいらの有象無象とは違うぜ!』みたいな感じがする。けど俺も使えるようになったから、その特別感は薄れちゃったかも。ごめんねー。

 体術と気配察知はいい技能だな。むしろ、これこそが槍聖の強さの秘密なんじゃないかという気すらする。

 特に気配察知。これは『むむむ……そこだ!』をリアルに出来るスキルだよな。ヲタク心をくすぐられる! 地味に嬉しい!

 まぁ、槍聖が本当に強いのかどうかは知らないんだけどな。だって戦ってないし。戦わずして勝つ、これぞ最強なり!

 けど、名持ちの槍聖でコレか……勇者も似たようなステータスだとしたら、あんまり期待できないかもなぁ。だって、ヤギママレベルじゃ干し草喰って反芻するくらいしか出来ないし。惑星消滅なんて大災厄、対応できるとは思えない。

 最悪、やっぱり自分で対処することも考えておくべきなんだろうなぁ……体内時計のアナウンスが聞こえた時から嫌な予感がしてたんだよ。なんて言うか、こう、忖度っていうの?

 『こういう予定になってる事は知らせてたんだから、何も指示しなくてもお前が対処するんだよ! しておけよ!』っていう、ブラックな上司による暗黙の命令って感じ。『知るかよ、お前がやれ!』と言いたい。でも言えない。

 けど結局、自分も当事者だから拒否できないんだよなぁ。うぬぅ。

 それでまた『何が原因か』っていう事が分からなくて手詰まりになっちゃう。まったく、どうすればいいんだか。


 んん? 盆地の外に国があるってことは、街があって人が居るってことだよな?

 たくさん居るなら、もしかしたら惑星消滅について知ってる人がひとりくらい居るかも? 俺みたいに体内時計を持ってる奴とかな。

 あっ、そういえばライアンがどっかに『賢者』が居るって言ってたな! そいつだ! 賢者っていうくらいだし、そいつなら何か知ってるに違いない! 知らなくても、俺が教えれば原因について調べてくれるだろう。いや、調べさせる!

 よし、今後の方針が決まったぞ!


 一、賢者を探して惑星消滅の原因を聞き出す。知らなければ教えて調べさせる。

 二、勇者を探して惑星消滅の危機を伝える。対処させる。

 三、戦力を整えて迫り来る討伐軍を返り討ちにする。いい人材が居たら引きぬく。

 四、パンツタイプのオムツを開発する。


 特に四番な。キキが掴まり立ちを始めたから、そろそろ履かせ易いパンツタイプに替える事を考えないと。またしても異世界からの挑戦状だ。尻尾穴とオムツの戦いはまだ終わらない。

 パンツタイプに替えたら、トイレトレーニングも始めないとな。そしてトイレトレーニングを始めたら……いよいよ女児パンツの出番だ。

 くっくっくっ、もうすぐだ。その日は近い。

 待っていろ、大魔王の本気を異世界に見せてやるぜ!



 いかんな。

 これはいかん、駄目だ、勿体ない。

 パパイヤが専業漁師になっちゃってる。朝から晩まで漁ばかりしてる。ノリで胴長着せたけど、やたら似合ってる。似合っちゃってる。

 いや、助かってるよ? 異世界鱒はキキの離乳食に大活躍だし。一夜干しをネコ耳たちにコッソリお裾分けしたら、メッチャビックリしつつも喜んでたし。芋虫の干物が魚の干物に化けたら、そりゃビックリするわな。カブトムシになってたら納得したかな?

 エビやカニも、ガンモとふたり増えた野郎共の食事に使えるからとても助かってる。

 ってか、軍から奪った糧食は干し肉と麦粉ばっかりなんだもんよ。栄養偏るっつうの。異世界軍隊は遅れてるな。

 アノマロカリスも食わせてみたけど、エビの食感にカニの味で、普通に美味かったらしい。つまらん。


 いや、それよりパパイヤだ。数少ない人サイズの分身に漁師をさせておくのは勿体ない。ダンスを踊らせないと。違う、人里探しだ。

 ライアンによると、パパイヤが向かってた東方面はずっと森が続いてて、人は住んでいないらしい。


「人が住んでるのは、中央大山塊ここからみて南東のラスタ皇国、西のエルダイン王国、北西の神聖ルーマス教国が大きなところだな。小さい国や国に属してない村や町は、それこそ無数にあって俺にも分からん。大陸の東は魔物の巣窟で、人は住んでない。少なくとも俺は知らん」


 だそうだ。

 というわけで、向かわせるなら南東、西、北西だ。西にはエグジーを向かわせてるから、残りは北西と南東だな。

 元々北西に向かわせてたマーリンを野郎どものお世話係専任にして、パパイヤを代わりに向かわせるか。残るアーサーが南東だな。こっちはガンモに運ばせればすぐだろう。

 重要なのは西。こっちには勇者と賢者が居るらしい。俺の負担を軽くするためにも、何としても辿り着かねば! 頼むぞエグジー、ゴーゴーウエストだ! ニンニキニン!

 南東のラスタ皇国が俺の敵なのは確定してる。こっちには宣戦布告と報復攻撃もしないとな。大魔王を敵に回すということの愚かしさを、世間に知らしめる人身御供になってもらう。

 さて、どうしてくれよう?

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