033

 ガンモって災害指定個体だったのか。確かに、このサイズで空を飛び回るモンスターなんて、災害以外の何物でもないよな。

 もしかして、魔王っていうのは災害指定個体の別名なのかね? 蛙マザーにも魔王の称号があったんだろうか?

 それで、俺は激甚災害指定個体だから大魔王ってことなのかな? その割には、指定されてから大魔王になるまでにタイムラグがあった気もするな。やっぱ女児パンツが原因か。確かにあれは危険だ。パパの尊厳がもりもり失われていく気がする。

 いや、作るのは本体で、パパ役はハリーだから大丈夫、問題ない! よし、気にせず作ろう。次は縞々パンティだ、白とブルーのストライプだ! ヨコシマだ、俺が!!


 おっ、俺の技能スキルに『千里眼』が追加されてる? これ、ガンモの技能だよな。

 そうか、これが眷属化のメリットか!

 眷属にすると、そいつの持ってた技能が使えるようになるんだな? ヤギママとキキはスキルが無かっただけか。まぁ、ヤギと赤ちゃんだからな。

 しかし、これはいい! 災害指定個体を退治して奪うのもアリだけど、眷属にすれば無駄な殺生をしなくて済むもんな。ガンモ、お前いい選択をしたよ。俺にとってもお前にとっても。ペットポジの残念な鳥だなんて思ってごめんな。

 む? そういえばスキルにカッコが付いてないな。ってことは、こいつが死んだり眷属じゃなくなってもこのスキルは無くならないのか?

 うーん、実験は出来ないよなぁ。眷属化を解除する方法なんて知らないし、家畜ならいざ知らず、名前を付けたペットを殺すのは絶対に嫌だ。寿命で死ぬまで面倒を見るのが飼い主の務め。それは譲れない。譲らない。

 よし、ステータスについては概ね理解した。けど結局、自分の強さについてはよく分からんのだよなぁ。

 自分や眷属の強さを比較できても、戦ってないからそれがどのくらいの強さなのかが分からない。戦った後で『仲間にしてほしそうに見ている』ってパターンじゃなかったし。

 骨亀やスライムの強さが見れたら良かったんだけど……やっぱ『鑑定』技能が欲しいよな。眷属以外のステータスが見られる技能。

 ステータスが見れたら、強い相手なら避けて通れるし、ヤバそうな相手なら隠れてやり過ごす事もできるかもしれない。弱い奴は蹂躙だけどな。

 三下大魔王とは俺のことだ! 長いものには巻き付くのがポリシーだ! 豆なので!

 まぁいいか。どうせこれからも色んなモンスターに遭遇するだろうし、戦ったり仲間にしたりで自分の強さが分かるだろう。

 強ければ良し、弱ければ強くなれば良し。それだけだ。

 そして勇者に会って、世界の危機を伝えるのだ! 押し付けねばならぬのだ!

 大魔王の旅は終わらない、勇者と出会うその日まで!!



 ♪砂の嵐に~守られた~♪ って、歌ってる場合じゃねぇよ!

 砂嵐ヤバい! チョーヤバい、マジヤバい!

 痛い、周り見えない、飛ばされる! これ、俺の知ってる嵐じゃない!

 とりあえず地面に伏せて、根を砂に潜り込ませて耐える! 今は耐えるしかない!

 言葉だけは知ってたけど、砂嵐ってこんなにヤバいものだったんだな。うわ~、上の方で雷が鳴ってるよ。頭上げたら落ちてきそう。

 アイタッ!? くそ、でっかい石も飛んでやがる。俺だから平気だけど、人なら今ので致命傷喰らってるぞ! なんてヤバい場所なんだ、砂漠ってやつはよ。

 こんなところに住んでるサボテン共の気が知れないな。歩けるんだから、もっと住みやすいところに引っ越せばいいのに。引っ越せない理由でもあるのか?

 例えば……裏山にご先祖様が残した遺産が埋まってるとか! それは燃えるな! 掘り出すまで引っ越せないな!!

 まぁ、普通に考えれば、とっくに掘り出されて換金されてるわけですが。世の中ってそんなもんだよ。埋蔵金なんて無いんだよ。現実に浪漫なんて無いんだよ……。

 あとは、そうだなぁ……代々の神職で、封印されている化け物が復活しないように土地を守ってるとか! それも燃えるな!

 封印が剣か槍か、岡山か東京かが問題だ! 剣で岡山希望! 俺の水生成で鬼の姉ちゃんを戻してあげるんだ! そして倉敷で高校を爆破したあとイチャイチャするんだ! なんて不謹慎な!

 おっと、妄想してる間に砂嵐は去ったらしい。やれやれだ。

 うん? 何アレ? あんな岩山、さっきまであったか? 砂嵐が運んできた……ってことは無いよな。いくらんでもそんな……。


 はい、理解しました!


 アレがサボテン共が引っ越ししない理由! そして、この砂漠の領域支配者ですね! 分かります!

 でっかいサボテン!! ただひたすらデカい! 牛久の大仏くらいあるんじゃね? 俺の本体でも樹高三十メートルくらいしかないのに。

 まぁ、俺の場合、キキとヤギママの居住スペース確保のために、幹回りを太く変形させてるだけなんだけどさ。こ〇だちゃんと木のおうちみたいなもんだ。『小枝師匠と木のお家』だと『パラダイス』だったかもしれない。それはそれでアリだな。

 とりあえずこのサボテンだ。ジャンボサボテン。

 いやこれ、どうやって退治すんの? いや、退治しなくても眷属にすればいいんだろうけど、このサボテンと意思の疎通が出来る気がしねぇ。手懐けられる気がしねぇ。

 ってか、足元に例のサボテン戦隊が大集合してるんですけど? なんだよお前ら、映画版か? 大決戦なのか!? 全員でポーズ決めてるんじゃねぇよ! ちょっとカッコいいかもって思っちゃっただろ!

 色も、金とか銀とかはまだしも、レインボーとかストライプまで居るじゃねぇか! 氾濫しすぎだよ! ピンクの水玉は山岳王だよ!


 だがしかし、大集合したのが貴様らの敗因だ! 喰らえ、必殺のエグジー☆グングニール! 単なる槍投げ!


 ドカァーンッ! ズドドドドオォーン!!


 ふっ。

 赤を一匹倒すだけで、近くの奴が大爆発に巻き込まれて倒される。そして、大体五匹に一匹居る赤がまた誘爆して周りのサボテンをなぎ倒す。労せずして戦隊は全滅だ。

 ふははっ、見たかこの頭脳プレー! 同じ植物型でも、多肉植物とは違うのだよ、多肉植物とは!

 結局、レインボーやストライプ、金銀の特技は分からなかったな。まぁ、どうでもいいか。


 オオォオォオォー……。


 うおっ、ジャンボサボテンが吠えた! 怒ったか? そりゃ怒るか。仲間を全滅させられたんだもんな。

 さて勝つのは簡単、問題はどう倒すかだ。

 眷属にはできないだろう。問答無用で襲い掛かってくるモンスターの親玉だもんな。倒すしかない。

 けど、倒して大丈夫なのか? 雑魚サボテンを倒したら爆発することを考えると、こいつも倒したら爆発するかもしれないんだよな。

 この巨体で爆発なんて、考えるだけで恐ろしい。クレーターが出来る程度ならまだしも、下手をすれば気候変動が起きて氷河期が来るほどの被害が出るかもしれない。もう寒いのは嫌だ! 暑いのもイヤだけど!


 という事で、ほい、亜空間。


 ――領域支配権を獲得しました。


 うん、勝つのは簡単なんだ。

 問題はこの後なんだよな。

 例え亜空間と言えども、こいつを爆発させたら深刻な影響が出るかもしれない。はっきり言って俺の最大の戦闘技能だから、使えなくなったら拙い。下手な事はできない。

 仕方がない、しばらく放り込んでおくか。適当に光と水をやっておけば、死んで爆発することも無いだろう。いい考えを思いつくまで処分は保留だ。

 問題の先送り、それは日本の伝統。マメなのも、な。ニヤリ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る