021
なんて言うか、これってアレだよな、肝試し。
真っ暗な街の中を自分の光源だけを頼りに進むっていうシチュエーションがもう、ね。しかも何処から何が飛び出してくるか分からないという、まんまお化け屋敷ですよ。出てくるのがクリーチャーだけとも限らないし。
そして決定的に違う点は、その何かに襲われたら死ぬかもしれないってことだな。このスリル、大阪の某テーマパークとは比べ物にならないね。行ったことないけど。
「キシャアァッ!」
言ってるソバからコレだよ。メン食らっちゃうね。おっ、我ながら
クリーチャーをポイっと亜空間に放り込んで、ジュッと酸で溶かしたら残骸を樹脂で固めて掘った穴の深くへポイっと。もうルーチンが完璧に出来上がっちゃったな。作業だ、作業。
素早くて気持ち悪いだけのクリーチャーなぞ恐るるに足らず。俺を倒したければ、弾数無制限のロケットランチャーを持ってこい! ってなもんだ。
ふうん。街並みは古代ローマっぽい? 行ったこと無いけど。
芸術性は結構高いんじゃないかな? 仄かな明かりに浮かび上がってるからそう見えるだけ? まぁ、ライティングも芸術の技術のひとつだ。うん、俺が芸術的なんだな。いやぁ、才能が溢れすぎてて参っちゃうね!
壁や柱に傷が多いな。クリーチャーがあの爪で引っ掻いたんだろう。ネコが障子や柱を登るみたいなものか。そう思えば少しは可愛く……可愛く……ないな。やっぱ気持ち悪いわ。ポイッ、ジュッ、ポイッと。
窓は木のスライド式か。結構古そうな建物だけど、木が残ってるってことは、想像してるより古くないのかも? いや、木は千年以上
テーブルの上には食器が置かれたままだな。陶器製か。何年分かは知らないけど、皿の上もテーブルの上も、ついでに椅子の上も埃だらけだ。その上に、妙に爪の長い足跡がある。皿の上にまで足跡がある。これもあのクリーチャーだな。お行儀の悪い奴等だ。ポイッ、以下略。
さて。外周から駆逐ローラー作戦をスタートして、残すは街の中心付近だけだ。
もうそろそろボスが出てきてもいいんじゃないかと思うんだけど……やっぱあそこだよなぁ。
いや、多分そうじゃないかとは、ひと目みたときから思ってたのよ。だって、あそこだけ街が全壊してるんだもん。半径二百メートルくらいで、綺麗な円形に更地なんだもん。そのど真ん中にあるんだもん。絶対アレだよ。
言うなれば、孵る前の〇神兵みたいな? 血管の走った肉々しい巨大ドーム。いや、ドーム球場よりは小さいか。せいぜいドーム球場四分の一個分? そんな感じ。けど、それでもやっぱデカい。デカい肉塊。不味そう。
さすがに巨〇兵が孵ることはないと思うけど、あの中に未成熟のクリーチャーがギッシリ詰まってる可能性はある。うわっ、想像したらサブイボが! ……と思ったのに、いつもの硬い樹皮のままだった。今日も疑似知覚は無駄に高度な仕事をしているらしい。
まぁ、何が詰まってるにせよ、亜空間コンボを決めれば関係ない。溶かして固めてポイだ。
おっと、やっぱボスの周りには取り巻きがいるな。他の個体より手足が大きくて長い。差し詰め、兵隊アリってところか。それが見える範囲だけで三十匹くらいいる。
まぁ、何匹居ても問題ない。分身で囲んで逃げ場を無くし、亜空間にポイだ。
あー、近付くとディテールが分かるな。やっぱマザーだ、コレ。胴体の肉塊に、冗談みたいな小ささの上半身がくっついてる。いや、クリーチャーとしては今まで見た中で一番デカい上半身なんだけど、肉塊がデカすぎて小さく見えるだけか。
肉塊は腹なんだな。今もポコポコと三匹ほどクリーチャーを産んだ。ちょっとグロい。そしてすぐに俺が亜空間へ捨てた。生き物を捨てるなんて、俺にペットを飼う資格はない! いやペットじゃねぇし!
「ギシャアァアァッ!」
おおう、吠えてる吠えてる。子供を消されて怒ってるな。クリーチャーでも母は母か。
うん? よく考えると、俺ってかなり非道じゃね? 突然やって来て、平和に(?)暮らしてたクリーチャーたちを虐殺してるんだもんな。あー、なんか自己嫌悪。
でもさ、先に襲ってきたのはクリーチャーだったわけで、俺は自己防衛しただけなんだよね。襲ってくるから仕方なく対処してるだけ。うん、俺は悪くない。恨むなら自分たちの凶暴性を恨め。
それに俺、魔王だしな。非道で当然。
こんな凶悪な生物を野放しにもできないし。魔王は世界の平和を守らなければならないのだよ。許せとは言わん、恨みながら逝け。
というわけで、このマザーも亜空間に収納して……あれ、収納できない? なんで? まだ亜空間の容量には余裕があるんだけど? 動かないときは、コンセントが差さっていることを確認してから再度お試しください? コンセントどこ? ねぇよ。
「ギエェエェッ!」
はぁ? 亜空間の穴? 俺じゃないぞ? うわっ、穴からクリーチャーがワラワラと!
っ! これ、マザーのスキルか!
まさか! 『同じタイプ』……同じタイプのスタ〇ド……!?
こいつも時空間魔法持ってる!? だから吸い込めなかった!?
「キシャアァッ!」×多数
ええい、雑魚五月蠅い! 出てきた端からこっちの亜空間に収納だ! 数で押せると思うなよ! 戦争は数じゃないんだよ、兄貴!
子供はスキルを持ってないんだな。俺の分身や眷属とはちょっと違うっぽい。むっ? もしかして、娘やヤギママも亜空間魔法とか毒生成を使えたりする? これは要検証だな。
おっと、今はそれよりマザー退治だ。亜空間が通用しないなら、直接攻撃するのみ! 単体のマザーに対して、こちらは百体近い分身からの飽和攻撃だ。防ぎきれるかな? 戦争は数だよ、兄貴!
ジュワアァアァ……。
「ギエェアァアァッ!?」
くくく。毒の飽和攻撃は防ぎきれなかったみたいだな。あー、マザーの居たところがすり鉢状に溶けちゃったな。まだ白い、一部黄色い煙が上がってる。メッチャ臭い。これアレだ、大分の地獄めぐり。アレの匂いだ。
残骸は周囲の土ごと亜空間に……入ったな。よし、マザー討伐完了だ。あとは取りこぼしを念入りに探索して……
――領域支配者を討伐しました。支配領域を獲得しました。
おっ、天の声さん、お久しぶり。元気してた? 相変わらず事務連絡オンリーだね。実は録音?
――指定災害個体の討伐を確認しました。リッパートード=クイーンの災害個体指定は解除されました。
――ボン=チキングは激甚災害個体に指定されました。
ワッツッ!?
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