017
――支配領域を獲得しました。
ふはははっ、勝負にならぬわ! 大人しく我が軍門に降るがよいわ! ひれ伏せいっ!
植物系モンスターにとっては天敵とも言えるヤギタイプのモンスターと言えども、俺の亜空間戦法の前には無力に等しい。サクッと隔離して終わりだ。なんというお手軽さ。これさえあれば、例えドラゴンが出てきても余裕で対処できる。正に無敵! 正に敵なし!
ポイっとヤギタイプの前
今も、領域支配者から転落したというのに、全く気にした様子もなく下草を食んでいる。分からん、ヤギ分からん。
まぁいい、これでこの岩山地帯も俺の支配下だ。この盆地の全土が俺の支配下だ。
ふはははっ、とうとう俺がこの盆地の支配者だ! 初代統一盆地王座だ! ベルトを重ね巻くぜ! このまま三階級制覇だ! 崇めよ我を、讃えよ我を! 我が驍勇にふるえよテンキー! ゲームのし過ぎで外れかけてます!
……。
おい、草食ってないで俺を見ろよヤギ。ちょっと目を離したら増えてるし。どこから連れてきた、そのヤギ共。スライムもニュルニュル纏わりつくな。気持ちいいけど。
貴様らには支配者に対する畏れというか、畏敬の念みたいなものは無いのか? 無いの、あ、そう。所詮畜生と単細胞(?)生物か。しょうがない、そういうのはネコ耳たちに期待するか。
――条件を満たしました。魔王樹は固有名『ボン=チキング』を獲得しました。
ちょっと待てぇえいぃっ!! なんだその名前は! なぜそこで区切る!?
盆地の王で『盆地キング』ならまだいい。なんで盆地が英語じゃないのかは疑問だけど、それはこの際気にしないでおこう。そうじゃなくて、なんで『ボン』で切るんだよ! おかげでファミリーネーム(?)が残念なことになってるじゃないか! 『チキング』ってなんだよ、現在進行形のチキン野郎かよ! それ、絶対魔王の名前じゃねぇよ!
――魔王樹は固有名『ボン=チキング』を獲得しました。
うるせぇ!! 繰り返すんじゃねぇ! 嫌がらせか? パワハラか? やるっていうのか!? よし、出るとこ出ようじゃないか! 俺は最後まで戦うよ! どこに出るのか知らないけども!
くそう、この間のおねだりの報復か? 天の声さんは意外と心が狭い。覚えてろよ、俺も心の狭さじゃ負けないぜ!
まぁ、それはそれとして、これで俺も立派なネームドモンスターってわけだ。ドロップ品を狙う冒険者に追われる立場になったってことだな。まぁ、冒険者なんていないけれども。この盆地に居るのは、農業に勤しむ素朴なネコ耳たちだけだ。
あるいは中ボスかラスボス、勇者に狙われる立場になったってことだな。ってか、どこに居るのよ勇者! 来るなら早く、惑星が消滅する前に! 世界を救わせてあげるから!
で、我が親愛なる領民のネコ耳たちだけど、南に向かったっていう一団が見つかった。
かなりヤバい、餓死寸前だ。もう水たまりにしか見えない池の畔でガリガリになってる。
痩せたネコって、どうしてこんなに悲惨な感じがするんだろう? 犬よりもネコの方が可哀そう度が高い気がするのは俺だけ?
しょうがない、手を貸してやるか。
湿地のネコ耳たちの備蓄から芋と麦をひとつずつ拝借してと。亜空間経由で南のネコ耳たちの近くまで転送したら、分身の根で掘り返した土に埋める。
あとは魔力と湿地の土、水を送って超・成長促進! ついでに光魔法も使ってみるか。おっ、いい感じ! けど、さすがに一日では育ち切らないな。麦は明日にでも収穫できそうだけど。育ち切ったらまた植えて、さらに増やすと。
なんか、俺ひとりで農地開墾できそうだな。牧草を眷属化できれば、丘陵地帯を一瞬で牧草地に出来そうだ。試してみるか。ヤギが増えたらネコ耳たちも喜ぶかもな。牛サイズだけど。
「こ、これは!?」
「いつの間にこんな畑が? しかも、こんなに立派な芋と麦が!」
「見ろ、この木の根元! 水が溢れてるぞ! もしかして、伝承にある命の樹じゃないか!?」
「本当だ……ありがたや、精霊はまだ我らを見放してはおられなかった……これでこの冬を越せる、生き延びられる!」
「「「ありがたや、ありがたや」」」
ここでも『命の樹』か。やっぱネコ耳たちの伝承にあるっぽいな。困ったときに救いの手を差し伸べてくれる救世主、精霊の化身ってか? 俺、魔王だけどな。
これでこのネコ耳たちも生き延びられるだろう。そして俺の魔力供給源になってくれるはずだ。
産めよ育てよ地に満ちよ! そしてこの魔王ボンちゃんを崇め奉るのだ! ネコ耳たちの神に、俺はなる!
◇
「ふぎゃあっ、ふぎゃあっ」
とか思ってたら、翌朝、
えっ? どういうこと?
――ワーキャット(メス・〇歳)を眷属にしました。
……マジで?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます