014

 秋ですよ!

 種蒔きまではあと一週間くらいかな? 転生して早二年と半年、いよいよ俺もひいおじいちゃんだ。

 早いな! 超DQN家族でも二年でひ孫は生まれねぇよ! 早すぎだろ!

 まぁ、全部俺の分身だから、子供や孫、ひ孫って感じじゃなくて『ちょっと背が伸びた』って程度の感覚なんだけどな。


 一足早くネコ耳たちは収穫の季節だ。今年もお供えが運ばれてきた。

 うん、豊作だね。お供えが去年の倍くらいある。長さ的に。それ、全部俺の眷属の『ジャガイモ』と『ネコ麦』……だよね?

 いや、マジでデカいな! なんでジャガイモが大人の頭くらいあるのよ? 新種のカボチャか? アイダホでもそんなの掘れねぇだろ! もうジャガイモじゃねぇよ!

 ネコ麦なんて、粒が大豆大じゃん! よく茎が折れなかったな? っていうか、茎も太いな! 丈も長ぇ! トウモロコシかよ!

 いつの間にか、ネコ耳たちの畑が謎の巨大生物園になってる!? まさか放射能!?

 そうか、成長促進か! 俺のスキルが眷属にも影響したんだな。原因が分かれば一安心だ。大きくなった分、大味になってても俺の知ったことじゃない。

 まぁ、ネコ耳たちは大喜びだから良しとしておこう。『命の樹様のご加護だ!』とか言ってる。いや、間違っちゃいないけどさ。

 そのアオリで、俺の眷属じゃないマロ芋やイナゴ麦はほとんど育ってないっぽい。栄養を盗られちゃったんだな。NTR(根盗られ)だ。後でザマァされないように気を付けよう。芋と麦によるザマァか、想像もできないな。


 おっ? 今年は葉物野菜も一緒にお供えされてるな。クレソンっぽいの。ネコなのに野菜も食うんだ?

 いや、ネコも草は食うか。ネコ草っていうの? あのレモングラスみたいな奴。お腹の調子を整えるんだっけ? 知らんけど。俺、ネコじゃないし。


 ――ハエトリカラシナモドキを眷属にしました。


 そしてやっぱり眷属にしちゃうんだ? まぁ、そんな予感はしてたけどね。

 クレソンっぽいなぁと思ったけど、名前を聞く限りではやっぱり食虫植物らしい。ハエトリだもんな。この湿地に生えてる草の中から、ネコ耳たちが食えるのを探し出したって事かな? 逞しいなぁ。

 けど、クレソンって繁殖力がパない・・・草じゃなかったっけ? そんな草に俺の成長促進が更に加わったら……いや、考えるのはやめておこう。増えたら食えばいいだけだ、ネコ耳たちが。その時は頑張って食え! 草食になろうかという勢いで!



 はぁ。

 それはそれとして、惑星消滅まで五年を切ってしまった。どうするかなぁ。

 未だに原因が分からないから、何にも対策が打てないんだよなぁ。今あるスキルを鍛えるくらいしか出来ることが無い。


 大体、なんで俺がこんなに悩まなきゃならないわけ?

 普通、こういうのって大国の首脳とか正義の味方が対処するもんじゃないの? それこそ勇者とかさぁ。

 俺、豆の木だよ? そりゃ、種族的には魔王ってなってるけどさ、それってむしろ世界の敵だよね? 崩壊させる側だよね?


 なんか腹が立ってきた! そうだよ、なんで俺だけが苦労しなきゃなんないのさ! 本当に苦労しなきゃいけないのは俺じゃないだろう!

 勇者だ、勇者が全部悪い! 惑星消滅の危機だっていうのに、一番頑張るべき勇者は一体何処で何をしているんだ!

 他所様のお宅であぶない水着やらコインやら漁ってる場合じゃねぇよ! 宿屋でお姫様とお楽しみしてるんじゃねぇ! 真面目に働け! 羨ましい!


 よし、決めた、勇者を探そう! そして問題を全て押し付けるのだ! 俺はのんびりと暮らすのだ!


 そうと決めたら行動だ。まずはこの盆地の外を目指す。周囲をぐるりと取り囲む山脈の向こう側へと足(根)を伸ばそう。

 そして都市を探す。大きな街なら人と情報が集まる。そこで勇者の情報を集めて探し出す。見つけたらまるっと丸投げだ。

 勇者が見つからなかったら、その都市なり国なりの責任者を探す。そいつにやっぱり丸投げだ。

 それで俺はお役御免、元の日向ぼっこ生活に戻れる。うむ、完璧!


 よし、それでは早速勇者探索班の結成だ。

 今年の種は出来るだけ東西南北に集中して飛ばそう。そして春になったら発芽させて、山脈の麓を目指す。

 麓に到着したら、時空魔法で山にトンネルを掘る。山の向こう側まで貫通させる。どれくらいの長さになるかは分からないけど、時空魔法なら一瞬で掘れる。ワンシーズンあれば楽勝だろう。

 山の向こうに抜けたら、まずは大きな川か海を目指そう。大きな街は、大抵海岸や河岸にできるものだからな。

 そして人知れず街に入り込み、勇者か権力者を探し出す。

 問題は、喋れない俺がどうやって危機を伝えるかだけど……まぁ、何とかなるだろう。その時になれば、都合のいいスキルが生えてくるさ、きっと。ね、天の声さん?


……。


 いつも通りの塩対応ありがとうございます。最近、ちょっと気持ちよくなりつつある自分がいる。


 問題は、盆地の外に全く人がいなかった場合だ。

 その時は俺がなんとかするしかない。この素朴なネコ耳たちに、宇宙レベルの問題を解決する手があるとは思えない。

 そのためには、やっぱり魔法とスキルを鍛えるしかない。

 惑星消滅だもんなー。やっぱ、宇宙からの脅威って線が濃厚だよなー。光魔法と時空魔法でなんとかなるだろうか? ならなくても、なんとかしなきゃいけないんだよなぁ。

 最悪、今持ってるスキルや魔法を上手く使えば、亜空間内に一時的な避難所を作り出せるかもしれない。地面を亜空間に取り込んで、水と光は魔法とスキルでって感じで。

 そこに避難すれば、最悪、惑星が崩壊しても生き延びる事だけは出来るかもしれない。

 あとは、どこまでその居住空間を広げられるかだな。魔法やスキルに頼った方法だから、魔素が無くなればお終いだ。魔素は生き物から供給されるから、出来るだけ沢山の生き物も一緒に避難させなければならない。そのためには、より広い土地が必要だ。

 時空魔法を鍛えれば、亜空間も広がるらしい。だから、時空魔法を鍛えるのは決定だ。トンネル掘りしてれば、勝手に鍛えられるかも?


 よし、基本方針は固まった! 魔法とスキルを鍛えつつ、盆地の外を目指す! そして勇者を探し出して問題を押し付ける!!


 そう、勇者を探す魔王の旅が今、始まったのだ!

 行け、魔王! 世界を救うために!!


 あれ? なんか逆じゃね?

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