013

 さて、次は貰った『時空間魔法』とやらがどんな性能なのか調べないとだな。攻撃魔法なのか補助魔法なのか、あるいはどっちの性能もあるのか。

 使い方は……うむ、分かるな、なんとなく。では早速……うわっ、これはちょっと怖い、何この真っ黒な穴! ブラックホールってこんな感じかなぁ?

 とりあえず、そこら辺の石をひとつ拾ってポイっと……ふむ、落ちる音は聞こえないな。取り出せるかな? あ、出てきた。特に変化してる感じは無いな。熱くも冷たくもない。『アイテムボックス』とか『インベントリ』みたいな感じか?

 それじゃ次は光魔法で赤外線ビーム! 石を温めてと。あ、冬場もこれで暖房できるんじゃね? 遠赤外線で芯までポカポカ。いいじゃんいいじゃん、お炬燵こたでヌクヌクじゃん! なんだよ、やればできるじゃないか光魔法。正直、ちょっと舐めてました。ごめんなさい。

 こんなに便利なら極めてみようかな? もしかしたら惑星消滅回避の手段に出来るかもしれないし。でも放射線はなしで。ガンマ線浴びて緑の巨人になったら困るし。あ、今でも緑の巨木だった。ははは。

 それじゃ温めた石を……って、熱っ! あちちちっ! ポイっだ! あー、熱かった。豆の石焼ができるところだった。塩か醤油があれば美味そうだよな。

 これでしばらく待ってみて、温度が下がってないようなら時間経過無しの高級アイテムボックス、下がってたら一般アイテムボックスってところかな。別にどっちでもいいんだけど。

 さて、待ってる間に次の実験だ。ある意味、最も重要な実験。

 えーっと……おっ、丁度いいところに俺の宿敵、バッタが。蔓で縛り上げてっと。くくく、泣け、喚け、命乞いをしろ! 今宵の生贄は貴様だ! まだ昼だけど。

 って、全然鳴かねぇな。バッタって鳴かないんだっけか? せっかく魔王らしく(?)演出したんだから、ちょっとは付き合えよ。やっぱお前とはノリが合わねぇな。音楽性の違いでユニットは解散です。

 それはそれとして、ポイっと。あれ、普通に入ったな? 生き物も入るのか。ありがちな『生き物NG』のアイテムボックスじゃないんだな。

 こいつもしばらく入れておくか。長時間生きていられるようなら、このブラックホールをいざって時の避難場所にできるだろう。

 ……中の様子、だよな。やっぱ確かめておくべきなんだろうなー。でもなー、ちょっとなー、やっぱ怖いよなー。


 ピーン! 閃きました!

 眷属のネコ麦ちゃんカモン! よしよし、ネコ耳持参の食料の中に居るね。

 それじゃこっそり小さな入り口を開けてと。風魔法で転がして……よし、入った! あ、普通に分身でも使えたな。実験する手間が省けた。

 それじゃそのネコ麦ちゃんに体外思考と疑似知覚で意識を移動!

 真っ暗だな。地面も空もない。上も下もなくて、無重力空間にいるみたいだ。いや、無重力体験なんてしたことないけども、きっとこんな感じなんだろうなーって。

 何にも見えない……こともない。バッタが浮いてる。さっき放り込んだやつか。なんか必死に後肢で宙を蹴ってる。全然動いてないけど。なんかウケるwww。

 よく見りゃ先に放り込んだ石ころも浮いてる。ふむ、光源も無いのになんで見えるんだろう? 分からんけど、まぁ、そういうものだと思っておこう。

 バッタが元気にヒョコヒョコしてるってことは、空気はあるんだな。あと、時間経過はアリのタイプらしい。並列思考で確認したから間違いない。

 ふむ。そうか、時間経過アリの一般型か。まぁ、それはそれでいいんだ。生き物が生きたまま入るのは有難い。


 次は容量だな。よし、南の分身おれ! 周囲の土地を限界まで切り取るのだ! 

 って、すげぇな! 元湿地がごっそりなくなった! 半径二キロくらいか? めっちゃ綺麗なクレーターっていうか、円筒形の穴が出来た。底もかなり深い。あ、底から水が沸いてる。岩盤も抉り取ったか。超でっかい井戸だな、これは。

 この栄養たっぷりの土を死蔵しておくのはもったいないな。本体近くに出して盛り土しておこう。俺のご飯だ。

 あ、バッタも一緒に出てきた。まぁいいか。協力ありがとな。また会う時まで元気でいろよ! けど、次に会った時は殺し合いだけどな。弱肉強食。厳しいようだけど、それが自然界の掟なのよね。

 ってことは、温めた石ころとネコ麦もどっかに出てるんだろうな。ネコ麦は分かるけど、石ころはどこにあるか分からん! まぁ、時間経過アリなのはもう分かったからいいか。

 ……おお! いま何気なくやったけど、中身は本体でも分身でも取り出せるんだな! 生き物も入るし、これ、上手く使えばワープとか出来るんじゃね?

 あ、でも既にそこには分身か本体が移動してる必要があるのか。戻ってくるのは早くなるけど、未踏地に向かうのには使えないな。うーむ、微妙に残念。


 けど、これはいろいろ使えるかもしれないな。

 例えば、岩盤を抉れるなら、山を掘ってトンネルを作ることも出来そうだ。どうやって山を越えようか悩んでたんだよな。豆の木じゃ森林限界を越えられなさそうだし。

 あ、でもトンネルの崩落は怖いな。突然崩れて押しつぶされたりしたら……ワープで逃げればいいのか。意外に怖くなかった。

 なんだよ、使えるじゃん、時空魔法! これは極めるしかないな! 光魔法と時空魔法、これはアリ、アリアリです! あっ、アリがこんなところに巣を! 時空魔法で巣ごと抉って井戸にポイだ! やっぱり便利だな、時空魔法!


 ふう。いやぁ、有意義な時間でした。久しぶりに熱中したな。〇列車で運行ダイヤを設定してた時以来の熱中ぶりだったかもしれない。

 って、いつの間にか風が止んでる。束の間の平穏が戻ってきたか。やれやれ。

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