012

 ちょちょちょ、ちょっと待って? 惑星消滅ってどういうこと? しかも五年後? せっかく短命な草から長寿な木に進化したっていうのに、あとたった五年? なんで? 理由を教えてよ、天の声さん!!


 ……


 くそぅ、またいつものだんまりだよ! 肝心な時に必要な情報をくれないんだよな、天の声さんは! 黙秘は裁判で不利になることがありますよ!

 まぁ待て、先ずは落ち着こう。ビー・クール、ステイ・クールだ。ビー・クール……ステイ・クール……悪魔の毒々ハイ〇クール……よし、いつも通り。


 仕方がない、天の声さんをあてにするのはヤメだ。自分でなんとかしよう。するしかない。

 何はともあれ、先ずは原因究明だよな。何が惑星を消滅させるのか、その原因を究明しなければ話が進まない。

 原因が分かったら、次は対策だ。回避できるようならそれに向けて全力で対応、回避できないなら避難先を探して移住だな。

 けど、いくら魔法があるって言っても、惑星からの避難なんて出来るのか? いや、それは最後の選択肢だ。とりあえず順番に片付けて行こう。


 さて、『いったい何がこの惑星を消滅させるのか』だけど……分からん! 漠然とし過ぎて絞り込むことさえできん!

 多分、キーワードは『惑星』なんだよな。『世界』でも『大陸』でもなくて『惑星』。ってか、やっぱり惑星だったんだな。足の下にでっかい亀と象は居ないらしい。

 SFで惑星が消滅する話ってどんなのがあったかな? 太陽が赤色巨星化して飲み込まれるとか、巨大隕石の衝突とか、あとはフ〇ーザ様が攻撃してくるとかかな? 惑星破壊ミサイルなんてのもあったかもしれない。

 ふむ、こうしてみると宇宙からの脅威が多いか?

 宇宙かぁ。でも宇宙はなー、一介の豆の木にはちょっと荷が重いかなー?

 ジャックと豆の木でも、精々雲の上だったもんな。成層圏突き抜けて静止衛星軌道まで成長するのは難しい気がするなぁ。それ、もう豆の木じゃなくて軌道エレベーターだよ。上へ参りまーす。

 魔法とスキルがあればそこまで成長できるのかもしれないけど、五年では難しい気がするなぁ。だって三万六千キロだよ? それもう植物のサイズじゃないよ。


 五年って期限が決まってるのもヒントかもな。人為的、あるいは生物的な何かじゃなくて、自然現象として惑星消滅が起こってしまう的な。生き物の気まぐれが介在しない何か。

 うーん、SFだとやっぱ隕石なパターンだよなぁ。ディープ〇ンパクトな感じ。太陽の赤色巨星化は、五年なんていう短いスパンじゃ起こらないだろうしな。知らんけど。

 あー、でもここ、ファンタジーな世界だった。魔法的な何かってことも考えられるのか。

 例えば、魔王が世界の崩壊を目論んで究極破壊魔法を使ったとか、邪神召喚を行ったとか。それが発動するのが五年後だったり?

 いや、無いな。俺、そんな事しないもん。日向ぼっこしてれば幸せな平和主義の魔王樹二歳だからな。

 もしかして、俺以外にも魔王が居る? ……無いとは言えないか。たった三年足らずで魔王になった草が居るんだから、もっと前に生まれたもっと強力な魔王が居てもおかしくない。そいつが邪神召喚なり究極破壊魔法なりをしていたら……。


 あー、もう! 何にも分かんねぇよ! 候補が多すぎて絞れねぇよ! 他にヒントは無いのか、ヒントは!


 もう、何が起きても大丈夫なように避難の準備をするのが最善な気がしてきた。何が起こるのか分からないんだから、対策の立てようがないもんな。『原因究明しないと話が進まない』と言った? それは嘘だ。

 さて、何処へ避難するのが一番安全だろうか? 月……は論外だな。惑星が破壊されたら、衛星だって無事では済まないだろう。同じ理由で近隣の惑星も不可。

 そもそも宇宙に行く手段がないしな。行けたとしても、宇宙で生きていける気がしない。『人は大地から離れて生きてはいけない』なんて言った人がいたけど、豆の木はもっと生きていけない。

 やはりここは、ファンタジー&SFの定番、『亜空間』でしょう! 空間魔法でも可! いっそ異世界に惑星ごと転移しちゃうのもアリ?

 というわけで、天の声さん、スキルをギブ・ミーや、ギブ・ミーしてんか! プリーズ!


 ……。


 プリーズ!


 ……。


 プリーズ!!


 ……。

 ――時空間魔法を獲得しました。


 よっしゃあっ!! 初めて要求が通ったぜ! 勝った、初勝利だ!

 これは人類にとっては小さな一歩かもしれないが、豆の木にとっては大きな一歩だ! ビッグフットだ! モンスターからUMAにクラスチェンジだ!?


 ふう、俺としたことが、興奮して取り乱しちまったぜ。落ち着け、ステイ・ホームだ。あれ、なんか違う気がする? まぁいいか。

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