第228話 森の妖精の村
焼き肉の良い匂いが鼻をくすぐる。
ルップルップのお腹がきゅううぐるるると鳴った。
「お母さん、アレなに?」
「しっ、見るんじゃありません」
町の喧騒が耳に響く。
俺は目を開いた。
「!」
「ここは?」
周りを見渡すと、そこは地上、森の妖精のババン村の商店街のど真ん中、例の公衆トイレの前である。
俺の両肩にはセシリーナとリサがもたれかかり、俺の背に抱きつくようにリィルとミズハがいる。
そして俺の前で俺の股間に顔を埋めてうつ伏せになっているのがルップルップである。こいつ、なんちゅう格好なのだ!
「おい! 起きろ! ルップルップ! 妙な格好で寝てるな! 誤解されるだろ!」
俺はルップルップの肩を揺らす。
良い匂いがしているので、もぐもぐとルップルップが口を動かしている。
「馬鹿、そこでそれはヤバいんだ、早く目を覚ませ!」
俺がさらに肩を揺らしていると。
「ほほう、ルップルップにそんなプレイをさせて……」
俺の右肩でセシリーナの目がぎらんと光った。
「うわあ、クズです。寝ているのを良い事に、この男!」
リィルが指差す。
ミズハとリサも目覚めた。
「ご、誤解だ! 別に俺がこうしたわけじゃない!」
「ふわああ……ここはどこです?」
ルップルップが涎を流して目覚めた。
俺の股間にはルップルップが舐めた後がくっきりと。
「へ、変態です。こんな場所で堂々と」
リィルがリサを庇って逃げる。
どうしてこうなるのだ。周囲の人々の目がとても痛い。
「うおおお! 誤解だあ! 俺は先に行く!」
俺はわざとらしく叫んで駆けだした。
「あっ、カイン!」
「逃げましたよ! あの男! 捕まえましょう」
5人はカインの後を追って長老屋敷に向かった。
ーーーーーーーーーー
「よくわかりました。今後あの洞窟への入口は封印し、この記録は大事に残しましょう」
長老の長クレアはミズハが提出した冒険記録を受け取って言った。クレアの前にはリィルが回収してきた宝の半分が置かれている。
「それにしても大変な冒険でしたね。よくやってくれました」
隣の男が言った。
「地下に神殿はあったが、リサの呪いを解くような場所は無かったよ」
俺は出された饅頭を手に取った。隣ではリサとルップルップがその食べる数を競っている。
「その事ですが、この先の山奥にある帝国に封印されていた神殿の街で事件があったようですね。何でもアプデェロア神が降臨されたとかで大騒ぎになり、帝国が施した封印も解けてしまったとのことで、参拝に行く人が急に増えたようです」
「んぐ、なんと! ではそこに行けばリサの呪いも解けるかもしれないな! んぐ」
俺は口一杯の饅頭を何とか飲み込んだ。
「封印が消えたことで、その街に通じる街道も姿を現しました。地図を用意させましょう」
長老クレアがそう言って壁際に控えている若い女の子を見ると、少女はいそいそと紙を持ってきた。
「これがその街へ行くためのの地図です。皆さんの足でしたら3日もあれば到着できるでしょうか」
「ありがたい」
「これでようやくリサの呪いを解けるわね」
「みんな、悪いがもうしばらく俺に付き合ってくれ」
「そうだな。そこならば、カインとの愛人眷属紋を無効にできるかもしれないしな」
ミズハが言うとリィルも前のめりになった。
「私もです。私も解除してもらうんです。そのために無理してお金を貯めたんですよ」
なるほど、眷属紋の解除にはかなりの額の金がかかるという。リィルが目の色を変えて宝探しに邁進していたのはそのためか。ミズハは元々大幹部だから金持ちなのだろう。
「では、今日は宿で休んで明日出発することにします。お世話になりました。長老クレア様」
俺はそう言って長老屋敷を後にした。
森の妖精族の村の宿屋は2人部屋が3つだった。
もちろん俺とセシリーナが同室である。そして溜まりに溜まっていた俺とセシリーナは久々に明け方まで存分にベッドを軋ませ続けたのだった。
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